17年の国内医療用薬市場 3年連続10兆円超え 前年比1%減、10年以降で初のマイナス成長
公開日時 2018/03/02 03:52
IQVIAは3月1日、2017年(17年1~12月)の国内医療用医薬品市場が薬価ベースで10兆5148億円、前年比1.0%減だったと発表した。暦年での市場のマイナス成長は10年以降、初めてとなる。前年に2960億円を売り上げた経口C型肝炎治療薬ハーボニーが17年に79%減、約2300億円の減収となった影響が大きい。また、薬効領域別では抗腫瘍薬が初めて1兆円を突破。企業別売上ランキングでは、上位20社に、後発品専業メーカーの日医工と沢井製薬がランクインした。
文末の「関連ファイル」に医薬品市場全体、上位10薬効、売上上位10製品などの資料を掲載しました(3月2日のみ無料公開、その後はプレミア会員限定コンテンツになります)。
国内市場が10兆円を超えたのは3年連続だが、マイナス成長となった。市場別にみると、100床以上の病院市場が4兆5092億円(前年比1.4%減)、99床以下の開業医市場が2兆1661億円(0.4%減)、主に調剤薬局で構成される「薬局その他」市場(以下、薬局市場)は3兆8394億円(0.9%減)――で、3市場とも前年を下回った。
病院市場は10年以降、唯一プラス成長を続けてきた。しかし、17年は同市場での処方が多いハーボニーやソバルディなどのC型肝炎治療薬の大幅減収や、17年2月に緊急的に薬価が50%引き下げられたがん免疫療法薬オプジーボの減収などによって、同市場のマイナス成長につながった。
同社は製品売上について、売上上位10製品しか開示しておらず、10位圏外の製品は伸び率のみ明らかにしている。17年に10位圏外となったハーボニーとソバルディについて、前年実績と17年の伸び率をもとに17年売上を計算してみると、ハーボニーは約618億円(16年売上2960億4900万円、17年は前年比79.1%減)となり、前年から約2300億円の減収となる。ハーボニーは12週の投与でほとんどの患者で根治が期待できることから、市場が急速に縮小したと考えられる。ソバルディの17年売上は約446億円(16年売上976億9900万円、17年は前年比54.3%減)で、前年から約530億円の減収となる。
■売上トップ製品は抗がん剤アバスチン 1000億円以上に3製品
売上上位10製品をみてみる。売上1位は抗がん剤アバスチンで、売上1142億円(0.5%増、前年2位)だった。前年1位はハーボニーで、前述の通り、17年は10位圏外となった。
2位は抗潰瘍薬ネキシウムで売上1019億円(1.1%減、前年4位)だった。ネキシウムは16年4月の薬価改定で薬価が9.4%下がったものの、16年は通年で2ケタ成長した。17年は薬価改定の影響が限定的となるが、それでも1%のマイナス成長となったのは、競合薬のタケキャブが前年比86%の大幅増を達成したことが背景にあるとみられる。
今回3位はオプジーボで売上1002億円(6.9%減、前年3位)だった。これら上位3製品が売上1000億円を超えた。
4位以下は、4位が疼痛薬リリカ(売上931億円、7.9%増、前年6位)、5位が抗リウマチ薬レミケード(828億円、1.4%減、前年7位)、6位が抗凝固薬イグザレルト(715億円、11.5%増、前年は圏外)、7位が糖尿病治療薬ジャヌビア(686億円、5.2%減、前年9位)、8位が降圧剤オルメテック第一三共分(666億円、15.5%減、前年8位)、9位が消炎鎮痛貼付剤モーラス久光製薬分(649億円、3.2%減、前年10位)、10位が降圧剤アジルバ(648億円、7.9%増、前年は10位圏外)――で、イグザレルトとアジルバがトップ10入りした。
■抗腫瘍薬市場が初の1兆円超え
薬効領域別での市場規模トップ10を見てみる。市場規模トップは引き続き抗腫瘍薬だが、売上は1兆300億円(7.5%増)だった。薬効領域別での1兆円超えはこれが初となる。薬効内トップ製品のアバスチンの微増のほか、分子標的薬のサイラムザ、タグリッソ、がん免疫療法薬キイトルーダが「大幅に売上を伸ばした」(IQVIA)ことが寄与した。
2位は糖尿病治療薬市場で、売上は5504億円(5.2%増、前年3位)だった。薬効内トップのDPP-4阻害薬ジャヌビアは競合激化により減収となったが、同阻害薬のトラゼンタやテネリア(第一三共分)、同阻害薬とBG系薬との配合薬のエクメット、GLP-1受容体作動薬トルリシティの伸長が市場成長の背景にある。前年2位の全身性抗ウイルス薬市場は、ハーボニーなどの大幅減収で、市場規模は3390億円(44.2%減)と半減し、ランキングは9位に後退した。
3位はレニン‐アンジオテンシン系作用薬で、売上は4613億円(8.9%減、前年4位)だった。降圧剤オルメテックは後発品の登場で減収局面に入ったが、それでも同剤は薬効内トップ売上を維持した。薬効内2位は急成長中の降圧剤アジルバとなった。
4位は抗血栓症薬で、売上は4378億円(2.4%増、前年5位)。イグザレルト、エリキュース、リクシアナといった売上上位製品がそろって2ケタ成長した。
5位は免疫抑制剤で、売上は4343億円(10.8%増、前年6位)。上位10薬効中で唯一2ケタ成長した市場で、ヒュミラ、レブラミド、シンポニー(ヤンセン分)の上位製品の2ケタ成長が主因となる。
■喘息及びCOPD治療薬市場は10位圏外に
6位は制酸剤、鼓腸及び潰瘍治療薬で、売上3775億円(0.3%増、前年8位)。7位は脂質調整剤及び動脈硬化用剤で、売上は3729億円(2.1%減、前年7位)、後発品が参入したクレストールの減収がマイナス成長の理由となる。8位は眼科用剤で、売上は3397億円(3.8%増、前年9位)。加齢黄斑変性症に用いるアイリーアやルセンティスを中心に伸長している。
10位は「その他の中枢神経系用剤」で売上3085億円(1.4%増、前年10位圏外)で、トップ10にランクイン。前年10位の喘息及びCOPD治療薬は圏外となり、キプレス/シングレアの特許切れの影響が背景にあると思われる。
■企業別売上ランキング トップは武田 上位20社に日医工、沢井がランクイン
企業別の売上ランキング上位20社を見てみる。医薬品卸に製品を販売し、その代金を回収する機能を持つ「販売会社」ベースでは、売上トップ3社の順位、顔ぶれは変わらず、1位は武田薬品(7075億円、3.6%増)、2位は第一三共(6688億円、5.7%増)、3位はアステラス製薬(5509億円、7.9%減)――だった。
2ケタ成長したのはMSDのみ。同社の順位は第7位で、売上は3587億円、前年比15.1%増だった。キイトルーダの急成長が主因とみられる。
また、18位に日医工(1669億円、6.8%増)、20位に沢井製薬(1625億円、9.7%増)と後発品専業メーカーがランクインした。11年以降のデータでは初めてとなる。これ以前に遡っても初とみられる。
上位20社のうち、順位を上げた企業は13社(内資系7社、外資系6社)、下げた企業は1社(外資系)、順位が変わらなかった企業は6社(内資系5社、外資系1社)――となる。
なお、販促会社が2社以上の場合、製造販売を持っているなどオリジネーターにより近い企業に売上を計上する「販促会社」ベースでのランキングは、ファイザーのトップは変わらなかった。順位を上げた企業は11社(内資系4社、外資系7社)、下げた企業は2社(同0社、2社)、順位が変わらなかった企業は7社(同4社、3社)――だった。