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24年国内医療用薬市場 11兆5000億円突破で最高額を更新 ワクチン大幅伸長 1000億円超に8製品

公開日時 2025/03/05 04:52
IQVIAは3月4日、2024年の国内医療用医薬品市場が前年比2.0%増の11兆5037億円(薬価ベース、1億円未満切捨て)となり、過去最高額を更新したと発表した。最大市場の抗腫瘍剤市場はオプジーボやイミフィンジの市場拡大再算定の影響などで前年比1.7%増(338億円増)と成長が鈍化。一方で、新型コロナワクチンや子宮頸がんワクチンといった「ワクチン類」が前年比44.1%増、金額で1038億円と大きく伸びたことが、国内市場全体の拡大につながった。国内売上1000億円超のブロックバスター製品は、売上上位からキイトルーダ、リクシアナ、オプジーボ、タケキャブ、デュピクセント、タグリッソ、イミフィンジ、フォシーガ――の計8製品あった。

文末の「関連ファイル」に、24年の市場規模や売上上位10製品の売上データに加え、売上上位製品の四半期ごとの売上推移をまとめた資料を掲載しました(ミクスOnlineの有料会員のみ閲覧できます。無料トライアルはこちら)。

◎4年連続のプラス成長 市場全体で2230億円増、うち47%がワクチン類

国内市場は4年連続のプラス成長となり、24年は額で2230億円伸びた。これまでは抗腫瘍剤市場の伸びが市場全体をけん引していたが、24年はワクチン類の大幅伸長が大きく貢献。市場全体の伸長額2230億円の47%にあたる1038億円はワクチン類による伸びだった。

◎新型コロナワクチン・コミナティ 24年第4四半期に売上656億円

ワクチン類の24年売上は44.1%増の3390億円だった。IQVIAによると、ワクチン類市場の成長ドライバーは、▽24年10月から定期接種となった新型コロナワクチン、▽キャッチアップ接種が実施されている子宮頸がんワクチン、▽新発売の5種混合ワクチン――という。

特に24年5月発売の新型コロナワクチン・コミナティは24年第4四半期(10~12月)だけで656億円を売り上げ、第4四半期の全製品の売上ランキングで1位に立った。コミナティの第3四半期(7~9月)の売上は非開示だが、10月からの定期接種に向け一定の売上があったとみられる。コミナティがワクチン類市場の成長を最もけん引した製品とみられるが、IQVIAの売上データは医薬品卸から医療機関への納入実績であり、実際に使用された数量による売上げではないことに留意が必要だ。

24年に供給不足問題があった子宮頸がんワクチンのシルガード9の24年売上は、前年比で3倍増とした(売上金額は非開示)。

◎抗腫瘍剤市場 成長率1%台にとどまる 前年の未受診患者の治療再開の反動と再算定で

24年の抗腫瘍剤市場は1.7%増の1兆9706億円だった。23年は、同年5月の新型コロナ感染症の5類移行に伴うがん診療の本格回復・未受診患者の治療再開により、抗腫瘍剤市場は前年比10.5%の二桁成長を記録した。24年は、「再開影響が一服した」(IQVIA)ことに加え、市場拡大再算定により、▽オプジーボは24年4月に15%の薬価引下げ、▽イミフィンジは同年2月に25%の薬価引下げ、▽タグリッソは23年6月に10.5%の薬価引下げ――と同市場の主要製品が相次ぎ再算定に見舞われた。これが24年の成長率が1%台にとどまった主な理由となる。

IQVIAは当初、「抗腫瘍剤市場は24年に2兆円台に到達する見込み」と分析していたが、一歩届かなかった。市場拡大再算定の影響が当初の見込み以上に大きく出たといえそうだ。

◎病院市場は成長鈍化 開業医市場はワクチン類などで「成長がやや加速」

100床以上の病院市場、100床未満の開業医市場、主に調剤薬局で構成する「薬局その他」の市場別に売上規模を見てみると、病院市場は前年比2.3%増の5兆4110億円と成長が鈍化し、抗腫瘍剤の自律成長が鈍化した影響を受けた。

開業医市場は3.2%増の2兆1691億円と「成長がやや加速」(IQVIA)。糖尿病治療薬の堅調な成長に加え、ワクチン類、アトピー性皮膚炎の新薬の伸長が寄与した。

薬局その他市場は0.8%増の3兆9237億円と横ばいだった。糖尿病治療薬などの堅調な成長が貢献する一方、新型コロナの検査薬及び治療薬の減少が響いた。

◎キイトルーダ16.2%増収 オプジーボ13.0%減収 薬価改定で明暗分かれる

売上上位5薬効をみると、薬効別売上1位の抗腫瘍剤市場の製品売上は、薬効内1位かつ全製品でも1位となったがん免疫療法薬・キイトルーダが16.2%増の1851億円にまで拡大している。24年4月の薬価改定で新薬創出等加算品として薬価が維持できたことに加え、同年5月の胃がんと胆道がんの適応追加も伸長に貢献し、高成長を記録した。

薬効内2位はがん免疫療法薬・オプジーボだが、売上は13.0%減の1445億円だった。食道がんの適応追加などで伸長していたが、4月改定でバベンチオの共連れにより市場拡大再算定を受けた影響が大きかった。

薬効内3位は抗がん剤・タグリッソで1.1%増の1099億円。23年6月の市場拡大再算定の影響が24年上期にも表れ、1%台の低成長となった。薬効内4位はがん免疫療法薬・イミフィンジで1.1%減の1085億円だった。胆道がんや肝細胞がんの適応追加で成長が加速していたが、24年2月の市場拡大再算定の影響が大きかった。

◎糖尿病治療薬市場 薬効内売上1位フォシーガが22.2%増の1004億円

薬効別売上2位は糖尿病治療薬で6.1%増の7581億円だった。薬効内の売上1位製品はSGLT2阻害薬・フォシーガで22.2%増の1004億円とし、ブロックバスター入りした。特に慢性腎臓病(CKD)の適応で処方が伸びている。同じくSGLT2阻害薬でCKD適応を持つジャディアンスは32.7%増だった(売上非開示)。

◎免疫抑制剤市場 薬効内売上1位デュピクセント、51.4%の大幅増でブロックバスター入り

薬効別売上3位は免疫抑制剤で4.8%増の6401億円だった。特にアトピー性皮膚炎の小児適応や慢性蕁麻疹の適応が成長ドライバーとなっているデュピクセントが大きく伸長。売上は51.4%増の1176億円で、一気にブロックバスター入りを果たした。デュピクセントは4月の薬価改定で新薬創出等加算に小児加算もあり、汎用規格の皮下注300mgペンで5.0%の薬価引上げとなったが、11月には3度目の特例拡大再算定により薬価が約13%引下げられたが、それでも高成長を記録した。デュピクセントは免疫抑制剤市場の売上1位製品。

薬効別売上4位は全身性抗ウイルス剤で7.8%減の4440億円だった。抗インフルエンザ薬などは伸長したが、薬効内の売上1位製品の経口新型コロナ治療薬・ラゲブリオが27.0%減の934億円となるなどした影響が大きかった。

薬効別売上5位は抗血栓薬で1.6%増の4392億円だった。薬効内の売上1位製品は経口抗凝固薬・リクシアナで12.3%増の1477億円を売り上げた。同剤は全製品の売上ランキングでも2位となった。

◎漢方含む「その他の治療を目的とする薬剤」市場が2ケタ成長 薬価引き上げで

売上上位10薬効のうち2ケタ成長したのは7位のワクチン類と、9位の「その他の治療を目的とする薬剤」の2薬効となる。

「その他の治療を目的とする薬剤」は漢方等を含む市場で、12.3%増の3039億円だった。IQVIAによると、この市場成長率のうち10.0%は4月改定における漢方等の薬価引き上げによるものだとしている。

◎1000億円超 前年から1製品増えて計8製品に

24年の売上上位10製品は、1位はキイトルーダ(売上1851億6000万円、前年比16.2%増、前年2位)、2位はリクシアナ(1477億2900万円、12.3%増、3位)、3位はオプジーボ(1445億8200万円、13.0%減、1位)、4位は抗潰瘍薬・タケキャブ(1200億6000万円、3.9%増、5位)、5位はデュピクセント(1176億6500万円、51.4%増、10位圏外)、6位はタグリッソ(1099億2100万円、1.1%増、7位)、7位はイミフィンジ(1085億6000万円、1.1%減、6位)、8位はフォシーガ(1004億3200万円、22.2%増、9位)、9位は加齢黄斑変性症治療薬・アイリーア(939億2300万円、5.8%増、8位)、10位はラゲブリオ(934億7300万円、27.0%減、4位)――だった。

1000億円超製品は前年から1製品増え計8製品となった。今回新たに1000億円超となったのはデュピクセントとフォシーガの2製品。一方、ラゲブリオは今回1000億円を下回り、顔ぶれが入れ替わった。

◎企業売上ランキング(販促会社ベース) 中外製薬が4年連続首位

企業売上ランキングを見てみる。「販促会社ベース」(販促会社が2社以上の場合、製造承認を持っているなどオリジネーターにより近い製薬企業に売上を計上して集計したもの)では、中外製薬が4年連続で1位となり、売上は2.4%減の5330億円だった。バイオシミラーが参入しているアバスチンは31.7%の減収だったが、HER2陽性乳がんおよび大腸がん治療薬フェスゴや加齢黄斑変性治療薬バビースモなどの新薬群の成長で売上ランキング1位を守った。

1位から7位までは前年と変わらず、2位はアストラゼネカ(5141億円、3.3%増)、3位は第一三共(4907億円、4.3%増)、4位はMSD(4759億円、1.9%増)、5位は武田薬品(4289億円、6.9%減)、6位はヤンセンファーマ(3974億円、4.1%減)、7位はノバルティスファーマ(3576億円、5.8%増)――だった。

◎ファイザー、サノフィ、ツムラが2ケタ成長

8位は前年12位のファイザー(3209億円、29.9%増)で、コミナティやプレベナー20といったワクチンや抗がん剤新薬が2ケタ成長に寄与した。売上上位20社のうち2ケタ成長した企業はファイザーのほか、11位のサノフィ(前年16位)、20位のツムラ(前年20位圏外)の計3社あった。サノフィは14.7%増の2591億円で、デュピクセントやRSV感染症予防薬・ベイフォータスなどが貢献した。ツムラは18.6%増の1851億円で、漢方の薬価引き上げ効果が大きかった。

売上上位20社のうち2ケタ減収となったのは16位の小野薬品のみで、10.4%減の2325億円だった。オプジーボの市場拡大再算定による薬価引き下げの影響が大きかった。

なお、IQVIAの市場データは、医薬品卸と医療機関との間で発生する売上データがソースとなっている。公定薬価がつき、通常の流通が開始された時点から同データに反映される。
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