バイエル 抗凝固薬・イグザレルトの患者調査に営業社員が不適切関与
公開日時 2017/04/12 03:50
バイエル薬品は4月10日、抗凝固薬・イグザレルトの患者調査で、営業社員が患者調査に不適切な関与をしていたことを認め、ホームページ上にコメントを掲載した。患者データを転記する目的で、営業社員が約200人カルテを不適切に閲覧していた。調査は、競合品を含めてアドヒアランスを検討する目的で患者に聞き取りを行ったもので、医学誌に論文として掲載された後、パンフレットを通じてプロモーション活動に活用されていた。他剤との比較を目的としてはいないものの、“1日1回”をキーメッセージとする同剤だけに、このデータは医師の処方の決め手の一つとなっていた。厚労省は、個人情報保護法違反などの可能性があるとして、調査を進める。
問題となっているのは、ライフサイエンス社の「Progress in Medicine」に掲載された▽抗凝固療法中の心房細動患者に対するアドヒアランスに関するアンケート調査成績、▽抗凝固療法中の心房細動患者における服用方法の嗜好性とアドヒアランスへの影響─アンケート調査からの考察――の2論文。同剤の発売前後に当たる2012年、13年にわたり、宮崎県内の診療所1施設で実施された。
同社がコンプライアンス調査を行う中で、社員のカルテの不適切な閲覧、調査の実施主体がバイエル薬品であることが明記されていないことなどが発覚。コンプライアンスに違反していることがわかった。カルテを不適切に閲覧した可能性があるのは、営業社員3人という。なお、同社では、営業部門に属すのは主にMRで、学術担当やメディカル・アフェアーズ部門のMSLなどは営業に属していない。論文は、著者からの申し出により、2016年1月に論文は取り下げられている。
バイエル薬品は、「本調査は嗜好に関するアンケート調査であり、臨床研究ではない」とコメント。「本件を真摯に受けとめ、その後、調査・研究への関与等に関するトレーニングおよび社内周知の徹底を図る。今後、このような事態を二度と繰り返さぬよう、外部の専門家を交えて本件に関する事実関係および問題の原因・背景等を徹底的に検証した上で、結果を開示するとともに、社内審査の体制をより徹底し、社員への教育を一層強化していく」とのコメントを発表した。