製薬協・畑中会長 国の医療ICTで安全性情報の収集方法変わる MRの役割見直し示唆
公開日時 2017/01/18 03:51
日本製薬工業協会の畑中好彦会長は1月17日、東京都内で開いた定例会見で、政府が2020年度の本格稼働に向けて整備を進めている医療ICT戦略によって、「(製薬企業にとって)一番大きい変化は、医薬品の安全対策のところ」と述べ、市販後の安全性情報の収集方法が変わるとの見方を示した。現在はMRの重要な役割のひとつとして安全性情報の収集が行われているが、畑中会長は医療ICTによって、「マーケットにおいて様々な大きな役割の見直しが、各企業において行われると認識している」と話し、MRの役割の見直しにつながる可能性を示唆した。
畑中会長は、現在のMRの重要な役割として、安全性情報の収集だけではなく、「新製品の上市時の適正な使用方法の伝達など、様々ある」と強調した。副作用の発現を最小化するためのMRによる情報提供活動の重要性を示した格好だ。ただ、医療ICTによって、「様々な大きな役割の見直し」があるとも見通した。
また畑中会長は、「まずは安全性対策のところで利活用され、その次にそれぞれのデータを活用した創薬への利活用が考えられる」とも話した。
国が整備を進めている医療ICTは、健康、医療、介護の個人情報を情報通信技術(ICT)で結んで一元的に収集・分析し、医療の質向上や保険財政の効率化などにつなげる国家プロジェクト。収集・分析されたデータは民間も利活用できる。塩崎恭久厚労相を本部長とする「データヘルス改革推進本部」が1月12日に厚労省内に発足し、本格的な議論が始まった。
■新薬投入は日本経済、患者の社会活動にプラス効果 皆保険持続に一役
畑中会長は会見で、毎年改定を含む薬価制度の抜本改革に対する製薬協の基本的なスタンスを説明した。政府が抜本改革に向けた基本方針を16年末に取りまとめており、詳細な制度設計を17年中に検討し、結論を得ることになっている。
製薬協としては、新薬が適切に評価されることを重要視して議論に参画する。ゼロベースで抜本的に見直すとされた新薬創出等加算は、制度化をめざすとともに、「予見性の高い、長期の研究開発投資を実現可能なものになるよう取り組みたい」(畑中会長)とした。
毎年改定に関しては、「通常改定の間の年(=これまでは薬価改定していない年)の改定では、可能な限り対象薬剤を絞り込む方法を提言していきたい」(同)と話した。対象薬剤の絞り込みを求めていく理由は、薬価の全面改定を毎年実施すると、企業の競争力を弱体化させ、イノベーションの創出や医薬品の安定供給などに重大な支障を及ぼすため。
抜本改革の重要ポイントとして、「イノベーションの推進」と「国民皆保険の持続性」の両立がある。畑中会長は「非常に重要な課題と認識している」と理解を示したうえで、製薬協としては、新薬投入による▽日本経済へのプラス効果▽患者の社会生産活動へのプラス効果――といった数値データを用意し、関係者の理解を得たいとした。製薬協のシンクタンクである医薬産業政策研究所でこの調査研究を進める。