【速報】薬価改定告示 特例再算定のC肝薬ハーボニーは31.7%引下げ 1錠2万5000円超安く
公開日時 2016/03/04 12:30
厚労省は3月4日、2016年度薬価基準の全面改定を官報告示した。薬価ベースで6.47%の引き下げを4月1日に実施するが、これには特例拡大再算定(=巨額再算定)による薬価引き下げ分が含まれていないため、引き下げ率はより大きくなる。今回初めて実施される特例拡大再算定では、新規の経口C型肝炎用薬のソバルディ(ギリアド・サイエンシズ)とハーボニー(同)の薬価をそれぞれ31.7%引き下げる。これによりハーボニーの薬価は16年4月から、1錠あたり2万5000円以上安くなる。薬価を実質的に維持する新薬創出加算は416成分823品目に適用され、前回14年度改定より19成分65品目増えた。この中にはSGLT2阻害薬全6成分7製品や降圧薬アジルバ(武田薬品)も含まれる。
以下の「関連ファイル」に、厚労省が3月4日午前に発表した2016年度薬価改定の概要と別添資料のほか、市場拡大再算定関係の対象品目の改定率一覧の資料をダウンロードできます(7日まで無料公開、その後はプレミア会員限定コンテンツになります)。
特例拡大再算定は、年間販売額が1000億~1500億円、かつ予想販売額の1.5倍以上と見込まれる製品は薬価を最大25%引き下げ、年間販売額が1500億円超かつ予想販売額の1.3倍以上となる製品は最大50%引き下げる新制度。ソバルディは1500億円超になるとされ、ソバルディの類似品であるハーボニーも同様の適用を受ける。4日に明らかになったソバルディの新薬価は4万2239.60円(現行6万1799.30円)、ハーボニーは5万4796.90円(同8万171.30円)で、いずれも31.7%の引き下げとなる。
なお、ハーボニーの競合品で、新規の経口C型肝炎用薬であるダクルインザ(BMS)、スンベプラ(BMS)、ヴィキラックス(アッヴィ)は通常の市場拡大再算定が適用され、ダクルインザとヴィキラックスは14.0%引き下げ、ダクルインザと併用するスンベプラは13.2%引き下げとなる。
このほか特例拡大再算定は抗がん剤アバスチン(中外製薬)と抗血小板薬プラビックス(サノフィ)にも適用される。アバスチンは臨床的有用性の評価による補正加算もついて10.9%の引き下げにとどまった。プラビックスは過去に適用されていた新薬創出加算の返還分も含め、汎用規格の75mg錠で28.8%引き下げとなる。
■イクスタンジ、サムスカ、レミッチ/ノピコールは25%引き下げ
通常の市場拡大再算定は20成分44品目に適用される。薬価収載時に原価計算方式で算定された医薬品は最大25%、類似薬効比較方式で算定された医薬品は最大15%の引き下げを受ける。原価計算方式で算定された品目で最大25%の引き下げとなるのは前立腺がん治療薬イクスタンジ(アステラス製薬)、心不全における体液貯留用薬サムスカ(大塚製薬)、そう痒症の改善用薬レミッチ/ノピコール(東レ/東レ・メディカル)――3成分6品目。
また、骨粗しょう症治療薬フォルテオ(日本イーライリリー)とその類似品テリボン(旭化成ファーマ)はそろって18.8%引き下げ、加齢黄斑変性症用薬アイリーア(バイエル薬品)とその類似品のマクジェン(ボシュロム・ジャパン)及びルセンティス(ノバルティス)もそろって13.0%引き下げとなる。
統合失調症治療薬エビリファイ(大塚製薬)、抗てんかん薬ラミクタール(GSK)、抗てんかん薬イーケプラ(UCB)、高リン血症改善薬ホスレノール(バイエル薬品)とその類似薬のリオナ(JT)及びピートル(キッセイ薬品)は、それぞれ15%引下げ。これらはいずれも類似薬効比較方式で算定された薬剤で、ルール上の最大の下げ幅となる。日本市場で売上ランキングトップ10に入り、12年度にも市場拡大再算定を受けている疼痛用薬リリカ(ファイザー)は11.9%引き下げとなる。
主たる効能効果に変更があった際に適用される「効能変化再算定」では抗凝固薬リクシアナ(第一三共)が対象となり、薬価を28.0%引き下げる。当初の効能効果は「下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制」だが、14年9月に「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」「静脈血栓塞栓症の治療及び再発抑制」の効能追加が行われた。ちなみにリクシアナと同じクラスの競合薬イグザレルト(バイエル薬品)とエリキュース(BMS)は今回、新薬創出加算の適用を受ける。
■新薬創出加算 品目数上位10社に内資系はアステラスのみ
新薬創出加算の適用品目数はファイザーの52品目をトップに、ノバルティス、ヤンセン、GSKと続き、ようやく5位タイに内資系企業のアステラスがランクインした。上位10社中で内資系はアステラスのみ。14年度改定では第一三共もトップ10入りしていたが、今回は10成分21品目で12位に順位を落とした。国内売上トップの武田薬品は8成分13品目で21位だった。上位10社は次の通り。
1 ファイザー(28成分52品目)
2 ノバルティス(24成分48品目)
3 ヤンセン(21成分46品目)
4 GSK(20成分42品目)
5 MSD(17成分30品目)
5 アステラス(13成分30品目)
5 日本イーライリリー(9成分30品目)
8 中外(15成分28品目)
9 アストラゼネカ(8成分23品目)
10 サノフィ(17成分22品目)
10 ノボ ノルディスク(6成分22品目)
なお、内資系企業にフォーカスすると、アステラス、第一三共に次いで14位に小野薬品(7成分17品目)、15位に協和発酵キリン(9成分16品目)と大塚製薬(8成分16品目)、17位に塩野義製薬(7成分15品目)と大日本住友製薬(8成分15品目)――で、これらが上位20位内にランクインした内資系企業となる。
新薬創出加算を獲得した製品を見ると、アジルバが前回に引き続き適用となったほか、参入企業が多く市場競争が激しいSGLT2阻害薬でもスーグラ(アステラス)、フォシーガ(AZ)、ルセフィ(大正製薬)、デベルザ(興和)、アプルウェイ(サノフィ)、カナグル(田辺三菱製薬)、ジャディアンス(NBI)――の全製品で同加算が適用された。ほかにも認知症治療薬、気管支喘息・COPD治療薬、経口抗凝固薬、骨粗しょう症治療薬、過活動膀胱治療薬、インスリンアナログ製剤など競合企業の多い領域でも、その領域内の特許期間中の製品の多くで加算を得ている傾向がみられた。
これまで新薬創出加算が適用されていたものの、▽薬価収載から15年超▽後発品が登場する――などして加算要件から外れ、ルールに基づき加算相当額を返還する措置がとられたのは69成分112品目あった。規格によっては新薬創出加算の対象品目もあるが、例えば、プラビックスや抗がん剤フェマーラ(ノバルティス)、抗インフルエンザ薬タミフル(カプセル剤、中外)、抗インフルエンザ薬リレンザ(GSK)、抗リウマチ薬レミケード(田辺三菱)、糖尿病薬ランタス(サノフィ)、抗がん剤エルプラット(ヤクルト本社)、注射用抗生物質製剤ゾシン(大鵬薬品)――などとなる。
■ジャディアンス 真の有用性の加算も適用 薬価は1.4%引上げ
今回、真に臨床的有用性の検証に係る加算がSGLT2阻害薬ジャディアンスに適用された。心血管イベントの発症リスクの減少が評価された。同剤は新薬創出加算も適用されており、薬価は25mg錠で現行351.20円が356.00円に1.4%引き上げる。
このほか、小児適応の効能追加等に係る加算として8成分18品目が、希少疾病の効能追加等に係る加算として13成分31品目が対象となった。