薬食審・第二部会 新薬など8製品審議、全て承認了承 アッヴィの経口C肝薬ヴィキラックスも
公開日時 2015/09/01 03:52
厚労省の薬食審医薬品第二部会は8月31日、新薬など8製品の承認の可否について審議し、全て承認することを了承した。この中でインターフェロンを用いない経口C型肝炎治療薬としてアッヴィが開発したヴィキラックス配合錠がある。日本人患者の7割以上を占めるジェノタイプ1型が適応。
【審議品目】(カッコ内は成分名と申請社名)
▽リュープリンPRO注射用キット22.5mg(リュープロレリン酢酸塩、武田薬品):「前立腺がん、閉経前乳がん」を効能・効果とする新剤型医薬品。再審査期間4年。
24週に1回投与する製剤。なお、既承認のリュープロレリン含有製剤は4週毎、12週毎に投与する。同剤は既承認薬と比較して投与間隔が長いため、患者の利便性の向上が期待される。海外では、15年5月現在、同剤が承認されている国・地域はない。ただ、米国は日本と有効成分の含有量が異なる24週間持続型製剤(45mg含有)が、EUは日本と有効成分含有量は同じで、添加物が異なる24週間持続型製剤が、それぞれ承認されている。
▽ヨンデリス点滴静注用0.25mg、同点滴静注用1mg(トラベクテジン、大鵬薬品):「悪性軟部腫瘍」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間10年。全例調査を行う。
悪性軟部腫瘍の国内患者数は約5000~9200人。同剤はホヤの一種から単離された化合物。DNAに結合することでヌクレオチド除去修復機構を阻害し、細胞死及び細胞周期停止を誘発することなどにより腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。類薬にはヴォトリエント錠200mg(一般名:パゾパニブ塩酸塩)などがあり、同剤は治療選択肢のひとつとなる。海外では、15年5月現在、77の国・地域で承認されている。米国では14年11月に申請され、現在審査中。
▽ロコアテープ(エスフルルビプロフェン/ハッカ油、大正製薬):「変形性関節症における鎮痛・消炎」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品・新医療用配合剤。再審査期間8年。
新有効成分のエスフルルビプロフェンは非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)であるフルルビプロフェンの活性本体。ハッカ油はエスフルルビプロフェンの溶解補助剤で有効性を期待して配合したものではないが、添加量が薬用量に近似するため有効成分として扱われている。同剤は1日1回、患部に貼付して使用するが、1回2枚を超えないようにする。類薬にはモーラステープ20mg(一般名:ケトプロフェン)などがあり、同剤は治療選択肢のひとつとなる。海外では開発されていない。
▽ミティキュアダニ舌下錠3300JAU、同ダニ舌下錠10000JAU(-、鳥居薬品):「ダニ抗原によるアレルギー性鼻炎に対する減感作療法」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。舌下投与による減感作療法に関する十分な知識・経験を持つ医師によってのみ処方・使用するなどの承認条件がついた。
ヤケヒョウヒダニ及びコナヒョウヒダニからそれぞれ抽出・調製した抽出エキスを等しい抗原活性比で含有する錠剤。同社は皮下注製剤(治療用アレルゲンエキス皮下注「トリイ」)を持っているが、アナフィラキシーショックなどの重篤な副作用が発現する可能性があること、注射による疼痛を伴うことなどから、舌下投与の製剤を開発した。類薬にも同様の効能・効果の舌下錠があり、同剤は治療選択肢のひとつとなる。海外では欧州で審査中、米国は開発中。
▽シプロキサン注200mg(シプロフロキサシン、バイエル薬品):「敗血症、肺炎等」を効能・効果とする成人用量の増量、並びに「小児の複雑性膀胱炎、腎盂腎炎、炭疽及び嚢胞性線維症における緑膿菌による呼吸器感染に伴う症状の改善」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。小児用法のみ再審査期間4年。
厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」を経て、厚労省から開発要請されていた。
成人の用法・用量はこれまで1回300mg、1日2回点滴静注だが、これを1回400mg、1日2回または3回点滴静注に増量する。より有効性が期待でき、耐性化を抑制できる。小児の効能追加は、β-ラクタム系薬無効の小児重症感染症に使えるよう開発したもので、同剤が単剤または他剤併用で治療選択肢のひとつとなる。同剤は細菌のDNA複製に関与するDNAジャイレースを阻害することで、グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対して抗菌作用を示す。海外では、15年5月現在、米欧を含む116の国・地域で承認されている。
▽ヴィキラックス配合錠(オムビタスビル水和物/パリタプレビル水和物/リトナビル、アッヴィ合同会社):「セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品・新医療用配合剤。再審査期間8年。
優先審査された。1日1回2錠を経口投与し、12週間続ける。インターフェロンを必要としない経口薬による薬物療法として、▽ダクルインザ錠60mgとスンベプラカプセル100mgの併用▽ハーボニー配合錠――に次ぐ国内3番手の薬剤となり、治療選択肢のひとつとなる。
同剤の有効成分のオムビタスビル及びパリタプレビルは、C型肝炎ウイルスの複製に関わるNS5A及びNS3/4Aプロテアーゼをそれぞれ阻害することでウイルスの増殖を抑える。これら2成分が新有効成分。リトナビルはパリタプレビルの代謝酵素を阻害して暴露量を高める働きをする。海外では、15年6月現在、同剤単剤療法が欧米含む36か国で承認されている。
▽オクトレオスキャン静注用セット(ペンテトレオチド塩化インジウム(111In液)、富士フイルムRIファーマ):「神経内分泌腫瘍の診断におけるソマトスタチン受容体シンチグラフィ」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間8年。
希少がんである神経内分泌腫瘍(NET)に過剰発現しているソマトスタチン受容体に結合し、NET病巣を画像化する。それにより薬剤によるソマトスタチンアナログ治療の適応患者が選択できる。日本には同様の薬剤はないが、海外では標準的診断法で、2015年3月現在欧米など30カ国以上で承認済。日本内分泌学会などからの開発要望を受け、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」が開発の必要性を指摘していた。
▽アレルゲンスクラッチエキス陽性対照液「トリイ」ヒスタミン二塩酸塩(ヒスタミン二塩酸塩、日本たばこ):「アレルゲンスクラッチエキスによる皮膚反応の陽性対照」を効能・効果とする新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。再審査期間4年。
アレルゲンテストが正確に行われたかを確認する薬剤。同剤は、アレルゲンにより産生され、皮膚を赤くするヒスタミンを含有しており、患者の皮膚に滴下することで、アレルゲンテストと同様に赤くなるかどうかを見る。もともと医師が独自に調製し用いていたが、関係学会からの開発要望を受け、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」が開発の必要性を指摘、同省は開発企業を公募した。海外で2014年現在欧州、中国の18カ国で承認済。
【報告品目】(カッコ内は成分名と申請社名)
報告品目は、PMDAの審査の段階で承認が了承され、部会での審議が必要ないと判断された製品。
▽ジャカビ錠5mg(ルキソリチニブリン酸塩、ノバルティスファーマ):「真性多血症(既存治療が効果不十分又は不適当な場合に限る)」を効能・効果に追加する新効能・新用量医薬品。再審査期間なし。
真性多血症は骨髄増殖性腫瘍で、同剤は細胞増殖を抑えると考えられる。
▽クラビット点滴静注バッグ500mg/100mL、同点滴静注500mg/20mL(レボフロキサシン水和物、第一三共):「外傷・熱傷・手術創などの二次感染、膀胱炎、腎盂炎等」を効能・効果に追加する新効能医薬品
。再審査期間なし。
▽タキソール注射液30mg、同注射液100mg(パクリタキセル、ブリストル・マイヤーズ)ほか、同剤の後発品(日本化薬、ホスピーラ、沢井製薬、サンド、ニプロ、マイラン製薬):「胃がん」を効能・効果とする新用量医薬品で、週1回投与を追加する。再審査期間なし。
厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」が広く行われている治療法だとして公知申請が可能と判断し、関係各社から公知申請が行われていたもの。
ヤンセンの慢性リンパ性白血病薬イムブルビカ 審議見送り
31日の部会では、希少疾病用医薬品で「再発・難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)」の新薬として承認の可否が審議される予定だったヤンセンファーマのイムブルビカカプセル(イブルチニブ)が、「審査に関わる新たな情報が確認された」(厚労省医薬食品局担当官)として、審議が見送られた。新たな情報の内容や審議見通しについては明らかにしていない。同剤は既に欧米で承認されている。