14年の国内医療用薬市場 抗がん剤アバスチンが売上1000億円突破 IMSまとめ
公開日時 2015/02/13 03:52
IMSジャパンは2月12日、日本の2014年(14年1月~12月)の医療用医薬品市場が薬価ベースで9兆9834億2600万円、前年比1.4%増だったと発表した。前回薬価改定があった12年は前年比0.7%増だったが、14年は4月の消費税率引き上げ相当分が薬価に加わったこともあり、前回改定時よりも伸び率が大きく出たものとみられる。製品別売上をみると、抗がん剤アバスチンが売上1000億円を突破し、国内製品売上ランキングで第2位となった。第1位は前年と同様、抗血栓症薬プラビックスだった。
文末の「関連ファイル」に医薬品市場全体、上位10薬効、売上上位10製品などの資料を掲載しました。どなたでも資料をダウンロードできます。
13年4月~14年3月の13年会計年度では、国内医療用医薬品の市場規模が初めて10兆円の大台を超えた(14年5月9日付け配信)。この背景には14年4月の消費税率引き上げに伴う14年1~3月の駆け込み需要(=いわゆる「仮需」)が一部の大型品に見られたことがある。今回の14年の市場規模が10兆円を下回った理由として、14年4月以降の仮需の反動や、4月の薬価改定影響がある。14年の四半期ごとの伸び率を見てみると、14年1~3月が前年同期比7.4%増、4~6月が2.5%減、7~9月が横ばい(伸び率ゼロ)、10~12月が1.1%増――だった。
14年の医療用薬市場を詳細に見てみる。市場規模別では100床以上の病院市場が3兆9271億7100万円(前年比1.4%増)、100床未満の開業医市場が2兆1762億4500万円(1.9%減)、主に調剤薬局で構成する「薬局その他」市場(以下、薬局市場)が3兆8800億1000万円(3.3%増)――。このうち開業医市場は3年連続のマイナス成長、薬局市場は前年の6.1%増を下回るものの他の2市場に比べて高い伸び率を維持している。
■特許切れのARBブロプレス 10~12月に4割減収 ディオバンは6割減
売上上位製品を見てみる。売上トップ3は第1位がプラビックスで売上1287億8700万円(10.3%増、前年1位)、第2位がアバスチンで売上1016億8700万円(12.8%増、前年6位)、第3位はARBオルメテック(第一三共分)で売上905億7900万円(0.9%増、前年7位)――だった。プラビックスとアバスチンはともに4月の薬価改定で新薬創出加算が適用され、薬価(汎用規格)はそれぞれプラス2.8%、プラス2.9%となり、これも薬価改定年での2ケタ成長の要因のひとつだろう。第4位は抗リウマチ薬レミケードで売上866億8600万円(6.9%減、前年4位)。レミケードは薬価改定での市場拡大再算定の影響が大きい。
14年は売上上位10製品中3製品が新たにランクインした。具体的には第7位の抗潰瘍薬ネキシウム(売上798億7100万円、43.4%増)、第9位の疼痛用薬リリカ(売上767億5000万円、32.8%増)、第10位のARBミカルディス(売上718億7100万円、1.0%増)――。これに伴い今回10位圏外となったのはARBディオバン、認知症用薬アリセプト、抗がん剤リュープリンだった。
一方、売上トップ3の常連で前年1000億円超の売上げがあったARBブロプレスは今回、売上836億1000万円(20.7%減)で第5位に後退した。ブロプレスは14年9月に先発品と原薬、添加物、製造方法が全く同じオーソライズド・ジェネリック(以下、AG)が、同年12月には通常のジェネリック(以下、GE)が登場している。IMSがこの日公表した14年第4四半期(10~12月)の資料を含めて見てみると、ブロプレスは14年4~6月が前年同期比14.5%減、7~9月が同16.0%減だったものが、10~12月が同39.6%減。そしてブロプレスは10~12月の売上上位10製品からも姿を消した。薬価改定影響に加え、ジェネリックの影響が大きく出ていることが推察される。
なお、ディオバンも6月にAG、GEともに登場しているが、4~6月は同33.6%減、7~9月は同55.9%減、10~12月は同60.5%減となっており、ジェネリックの影響が拡大している。
■売上トップ製品 3薬効領域で交代
上位10薬効をみると、市場が拡大したのは抗腫瘍薬、糖尿病治療薬、抗血栓症薬、免疫抑制薬――の4薬効で、残り6薬効は規模が縮小した。前年から新たにランクインした薬効領域はない。
抗腫瘍薬ではアバスチンなどの分子標的薬が引き続き市場をけん引し、例えばベルケイド武田薬品分は同13.1%増、スプリセルは同23.0%増となった。糖尿病治療薬はDPP-4阻害薬に約10%の薬価引き下げとなる市場拡大再算定が適用されたものの、使用数量が伸びて市場全体ではプラス成長した。例えばDPP-4阻害薬のエクアや同トラゼンタ、BG系薬メトグルコが2ケタ成長した。抗血栓症薬市場はプラビックスのほか、経口ファクターXa阻害薬が好調で、薬効別ランキングで前年6位から今回4位に2ランクアップした。免疫抑制薬市場でも、レミケードなど一部の抗リウマチ薬に市場拡大再算定が適用されたが、多発性骨髄腫治療薬レブラミドなどの伸長により、市場規模は拡大し、前回8位から今回7位に順位をひとつ上げた。
3薬効で売上トップ製品の入れ替わりもみられた。レニン・アンジオテンシン系作用薬ではこれまでのブロプレスにかわってオルメテック(第一三共分)が、脂質調整剤及び動脈硬化用剤ではこれまでのリピトールからクレストール(塩野義分)に、制酸剤、鼓腸及び潰瘍治療薬ではこれまでのタケプロンからネキシウムに、それぞれ売上トップ製品が交代した。
■企業別売上 ヤンセン、中外、ファイザーが2ケタ成長
企業別の売上ランキングを見てみる。医薬品卸に製品を販売し、その代金を回収する機能を持つ「販売会社」ベースでは、売上トップ3社が武田薬品、アステラス、第一三共の順で、これは前年と変わらない。上位20社の顔触れも前年と変わらない。成長率は高い順に、ヤンセンファーマ(第19位、売上1737億6900万円、前年比21.5%増)、中外製薬(第4位、4396億500万円、10.4%増)、ファイザー(第5位、4252億8600万円、10.3%増)――となる。これら3社のみ2ケタ成長し、ヤンセンはC型慢性肝炎治療薬ソブリアードなどが好調のようだ。中外は前述の通りアバスチンが、ファイザーはリリカが主なけん引役となる。なお、前年より売上げを伸ばした企業は8社、売上げを減らした企業は12社。
販促会社が2社以上の場合、製造承認を持っているなどオリジネーターにより近い企業に売上を計上する「販促会社」ベースで企業ランキングを見てみる。こちらも上位20社に新たにランクインした企業はなく、トップ3社はファイザー、武田薬品、第一三共と順位変動もなかった。