厚生労働省は3月27日、新有効成分含有医薬品7製品を承認した。この中には、ヤンセンファーマのEGFR/MET二重特異性抗体・ライブリバント点滴静注と併用してEGFR変異陽性非小細胞肺がん1次治療に使用する経口EGFR阻害薬・ラズクルーズ錠がある。
また、ジェンマブの組織因子(TF)を標的とした国内初のADCであるテブダック点滴静注用が、子宮頸がん2次治療以降の使用で承認された。ブリストル・マイヤーズ スクイブの心筋ミオシン阻害剤・カムザイオスカプセルは国内初の閉塞性肥大型心筋症治療薬となる。
承認された製品は次の通り(カッコ内は一般名、製造販売元)。
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ビヨントラ錠400mg(アコラミジス塩酸塩、アレクシオンファーマ):「トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型及び変異型)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。薬効分類219。
トランスサイレチン(TTR)安定化薬。承認取得を受け、アレクシオン本社のMarc Dunoyer最高経営責任者(CEO)は「ビヨントラはTTRの90%超の安定化を達成し、トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)患者さんの心血管死および入院を低減し、治療成績の改善の臨床的ニーズを満たすことが示された」と話している。
ビヨントラの用法・用量は「通常、成人には1回800mgを1日2回経口投与する」。国内で承認を取得しているATTR-CM治療薬には、ビンダケルカプセル/ビンマックカプセル(タファミジス)があり、用法・用量は1日1回経口投与となっている。
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カムザイオスカプセル5mg、同カプセル2.5mg、同カプセル1mg(マバカムテン、ブリストル・マイヤーズスクイブ):「閉塞性肥大型心筋症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類219。
心筋ミオシン阻害剤。肥大型心筋症(HCM)は、高血圧等の心疾患や全身性疾患などの原因がないにもかかわらず、心室(左室)肥大をきたす慢性の進行性疾患であり、左室流出路の閉塞有無により閉塞性HCMと非閉塞性HCMに大別される。カムザイオスの効能・効果は「閉塞性HCM(HOCM)」。国内では、これまでHCMの適応を持つ治療薬はなかった。
BMS日本法人のアンジェラ・デイビス研究開発本部長は、「慢性かつ進行性の疾患であるHOCMの患者さんとそのご家族は、長い間、新たな治療選択肢を待ち望んでいた。私たちは、今回の承認が患者さんとご家族にとってどれほど重要なマイルストーンであるかを理解している」と話している。
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リブマーリ内用液10mg/mL(マラリキシバット塩化物、武田薬品):「アラジール症候群及び進行性家族性肝内胆汁うっ滞症における胆汁うっ滞に伴うそう痒」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類391。
胆汁酸の再吸収を抑制する回腸胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害薬。武田薬品は21年9月に米Mirum社から導入した。
アラジール症候群(ALGS)は、小葉間胆管減少症を伴うまれな遺伝性疾患であり、胆汁うっ滞により、最終的には進行性の肝機能障害を引き起こす。国内患者数は200~300人程度と推測されている。
一方、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)は、肝細胞の胆汁を分泌する能力が低下し、肝細胞内に胆汁の蓄積が起こることにより、進行性の肝疾患に至るまれな遺伝性疾患。国内では、小児慢性特定疾病の対象疾患となっているが、小児慢性特定疾患治療研究事業への新規登録症例数は年間2~8例程度のみとなっている。
これまで国内でALGS・PFICに関連する効能・効果を有する治療薬はなかった。武田薬品の梶井靖R&Dジャパンリージョンヘッドは、「ALGSおよびPFICは、乳幼児期に診断されることが多い疾患で、胆汁うっ滞に伴う激しいそう痒は患者さんおよびその介護者の夜間の不眠やQOLの低下につながる。リブマーリが、胆汁うっ滞に伴うそう痒に対する日本における新たな治療選択肢となることを期待している」と述べている。
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テビムブラ点滴静注100mg(チスレリズマブ(遺伝子組換え)、BeiGene Japan):「根治切除不能な進行・再発の食道がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。薬効分類429。
抗PD-1抗体。承認申請は、1次治療(化学療法併用)と2次治療(単剤療法)の試験成績に基づいて行われ、用法・用量は「フルオロウラシル及びシスプラチンとの併用において、通常、成人には、1回200mgを3週間間隔で60分かけて点滴静注する。がん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行・再発の食道がんに対しては、本剤を単独投与することもできる。なお、初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分まで短縮できる」となった。
同じ抗PD-1抗体のキイトルーダとオプジーボも「根治切除不能な進行・再発の食道がん」の効能・効果を持っている。
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ラズクルーズ錠80mg、同錠240mg(ラゼルチニブメシル酸塩水和物、ヤンセンファーマ):「EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。薬効分類429。
第3世代の経口EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)。同社のEGFRおよびMETを標的とする完全ヒト型二重特異性抗体・ライブリバントと併用して、EGFR変異陽性NSCLCの1次治療での使用が承認された。
承認申請は、EGFR変異陽性NSCLCに対する1次治療において、ライブリバントとラズクルーズの併用療法と、第3世代の経口EGFR-TKIであるタグリッソ単剤療法を比較評価した第3相MARIPOSA試験の結果に基づく。同試験の主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)で有意差を示した。
なお、ヤンセンは25年1月に、第3相MARIPOSA試験の副次評価項目である全生存期間(OS)においても、タグリッソと比較して有意差を示したとのトップライン結果を発表している。OS中央値において、1年以上の改善が見込まれているとした。これらの結果は2025年欧州肺がん学会(ELCC、3月26日~29日)でポスター発表された。
承認取得を受け、J&J Innovative Medicine Japanの關口修平社長は、「現在、EGFR遺伝子変異を有するNSCLCの5年生存率は20%未満であり、日本においてはEGFR遺伝子変異NSCLCのうち、1次治療で十分な効果が得られなくなった際、3分の1は2次治療に進むことができない。この状況は、依然として高いアンメットニーズがあり、1次治療において新たな治療選択肢が求められていることを示している」と指摘している。
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テブダック点滴静注用40mg(チソツマブベドチン(遺伝子組換え)、ジェンマブ):「がん化学療法後に増悪した進行又は再発の子宮頸がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。薬効分類429。
ジェンマブの組織因子(TF)を標的とするヒトモノクローナル抗体に、プロテアーゼ切断可能なリンカーを用いて微小管阻害薬・モノメチルアウリスタチンE(MMAE)を共有結合させるというシージェン社(現ファイザー)の技術を応用して開発された抗体薬物複合体(ADC)。
承認申請は、2次又は3次治療の再発又は転移性子宮頸がん患者を対象とした国際共同第3相innovaTV301試験などの成績に基づいて行われ、2次治療以降での使用が想定されている。
ジェンマブ日本法人のクリストファー・ダール社長は「新しい治療選択肢を必要としている患者さんに対し、組織因子を標的とした本邦初のADCであるテブダックを提供するための重要な一歩を踏み出せたことを大変嬉しく思う」とコメントしている。
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ティブソボ錠250mg(イボシデニブ、日本セルヴィエ):「IDH1遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類429。
IDH1阻害薬。IDH1遺伝子変異陽性AMLの患者数は約1045人と推定されている。強力な化学療法の適応とならない未治療の急性骨髄性白血病(AML)患者に対しては、IDH1遺伝子変異の有無にかかわらず、ベネクレクスタとアザシチジン又は低用量シタラビンとの併用投与が推奨されているが、長期生存率は低く、依然として予後は不良であること等から、新たな治療薬の開発が望まれている。
ティブソボとアザシチジンとの併用投与の有効性及び安全性をプラセボとアザシチヂンとの併用投与と比較した国際共同第3相試験では、主要評価項目の治験責任医師判定による無イベント生存期間(EFS)について統計学的に有意な延長が認められた。
承認取得を受け、日本セルヴィエのアントニー・マレ代表取締役は、「IDH1遺伝子変異陽性のAMLは、特に高齢者や強力な寛解導入療法が適応とならない患者さまに対して治療選択肢が限られており、高いアンメット・メディカル・ニーズがある」と述べている。
3月27日付で承認された適応追加等15製品の
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