JaDHA デジタルヘルスリテラシー向上 「産業振興と社会課題解決の両立」テーマにビジョンペーパー公表
公開日時 2025/03/19 04:49
日本デジタルヘルス・アライアンス(JaDHA)は3月18日、「デジタルヘルスリテラシーへの配慮を通じた産業振興と社会課題解決の両立」と題するビジョンペーパーを公表した。今年1月に始動した産学官協働による健康格差の是正とデジタルヘルスリテラシーの向上にむけたプロジェクトがまとめたもの。遠隔診療や健康管理アプリ、ウェアラブルデバイスなどが実用化されるなかで、国民一人ひとりが分かりやすい情報を基に適切な健康行動を取れるヘルスリテラシーの向上と、企業が利用者視点に立ったサービス開発や提供を進める共通認識と基盤の整備などを目的に策定した。
同プロジェクトは、JaDHAの「デジタル医療サービスの円滑な利活用に向けた基幹プラットフォーム構築検討WG」および「デジタルヘルスアプリの適切な選択と利活用を促す社会システム創造WG」の横断コアチームで取り組んでいるもの。askenとUbieがプロジェクトリーダー企業となり、塩野義製薬、シミック、第一三共、テックドクターが検討体制に入っている。
◎「企業にもデジタルヘルスリテラシーへの配慮が求められる」
プロジェクトを始動の経緯について、「生活者が様々なデジタルを活用したヘルスケアサービスを円滑に利活用するには、サービス供給者である企業にもデジタルヘルスリテラシーへの配慮が求められる」と指摘。「企業は、生活者のデジタルヘルスリテラシーを高めるための活動を推進すると共に、分かりやすい表現やデジタルに不慣れでも容易にサービス利用を開始できる仕組みを整えるなど、誰もが利用できるアクセシビリティに配慮した環境を整備することが不可欠だ」と強調。生活者に寄り添った社会課題解決と産業振興の両立の実現に貢献するためのデジタルヘルスリテラシーの普及啓発プロジェクトを開始したと説明した。
◎ビジョンペーパー 「ヘルスリテラシー不十分だと、デジタルヘルスを十分活用できず」
この日公表したビジョンペーパーでは、「日本人はヘルスリテラシーの自己評価が低いとの指摘がある」と指摘。「具体例として自身の不調等が生じた時に適切なタイミングで適切な医療機関を受診することや医師に自分の症状を正確に伝えることができていないと感じる層が多く、また、デジタルツールを活用することで病気の早期発見・早期治療や自身の健康管理に役立つと期待しながらもなかなか活用できていないという調査結果もある」と強調した。その上で、「デジタルヘルスリテラシーが不十分だと、せっかくのデジタルヘルスサービスを十分に活用できず、一部の人々が利益から取り残される懸念がある」として、デジタルヘルスによる産業振興と社会課題の解決を両立させるためには、「利用者のデジタルヘルスリテラシー向上に配慮することが不可欠」との見解を示した。
◎生活者、医療関係者、保険者、政府・自治体など各ステークホルダーに与える影響に言及
その上で、生活者、医療関係者、保険者、政府・自治体などの各ステークホルダーに与える影響について言及している。生活者に対しては、オンライン診療やオンライン医療相談など医療アクセスの向上や、ウェアラブルデバイスによる日々の活動量や睡眠状態の記録がQOLが有意に改善した事例、さらには、デジタルツールを活用した健康情報の管理・判断などの普及に伴う情報格差解消の是正や支援などの重要性を強調している。
医療関係者に対しては、デジタルツールの活用による業務改善や患者とのコミュニケーションの改善、オンライン診療や遠隔モニタリングによる適時・早期介入、SaMDなどの医療支援ソフトウェアによる治療中の空白期間の適切な健康管理、臨床意思決定支援システム(CDSS)やデジタル技術を用いた診断支援などをあげた。
保険者に対しては、被保険者のデジタルヘルスリテラシー向上は、健康増進や疾病予防を促進し、医療費の適正化につながる可能性があると指摘。たとえば健康管理アプリの活用やオンライン健康相談の利用により、重症化が予防され、医療費が抑制されるとされているとした。
政府・自治体に対しては、政策立案の高度化、社会保障費の適正化、健康格差の是正といった公衆衛生上の重要課題に対する影響も想定される指摘する一方で、サイバーセキュリティ対策等の新たな論点も顕在化しており、多角的な対策が必要との見解を示した。
JaDHAは、「生活者がデジタルヘルスリテラシーを高めつつ、あらゆる層がデジタルヘルスサービスを活用できる環境を整備するため、業界における状況を把握し、多様なステークホルダーとの連携を通じた活動を進めていきたい」との見解を示した。