厚生労働省は12月27日、9製品の適応追加などを承認した。この中には日本イーライリリーの肥満症治療薬・ゼップバウンド皮下注があり、有効成分のチルゼパチドは2型糖尿病治療薬・マンジャロと同一となる。また、ステラーラで2剤目となるバイオシミラーも承認された。
適応追加などが承認された製品は次の通り(カッコ内は一般名、製造販売元)。
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ウプトラビ錠0.2mg②同錠0.4mg③同錠小児用0.05mg(セレキシパグ、日本新薬):「肺動脈性肺高血圧症」を効能・効果とし、小児用量を追加する①②新用量・その他の医薬品、③新用量・剤形追加に係る医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は6年1日。薬効分類219。
経口のプロスタサイクリン受容体(IP受容体)作動薬。今回追加する肺動脈性肺高血圧症(PAH)の小児適応では、2歳以上の幼児又は小児に対し1日2回食後に経口投与で用いるが、体重に応じた開始用量、増量幅、最高用量が設定されている。
PAHの治療では、プロスタサイクリン系薬剤、エンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ5阻害薬など、作用機序の異なる治療薬の併用が推奨されているが、小児PAHに対して国内で使用可能な薬剤は限られており、特にプロスタサイクリン系薬剤では静脈内持続投与を必要とする注射剤のみであることから、同作用機序の経口剤が求められている。
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ファセンラ皮下注30mgシリンジ、②同皮下注30mgペン(ベンラリズマブ(遺伝子組換え)、アストラゼネカ):「既存治療で効果不十分な好酸球性多発血管炎性肉芽腫症」を効能・効果とする①新効能・新用量医薬品、②新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。再審査期間は4年。薬効分類229。
抗IL-5受容体α抗体。現在、気管支喘息の適応を持っており、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)が、2つ目の適応となる。用法・用量は「通常、成人には1回30mgを4週間隔で皮下に注射する」。抗IL-5抗体のヌーカラ皮下注などがEGPAの適応を持っている。
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オルダミン注射用1g(モノエタノールアミンオレイン酸塩、富士化学工業):「静脈奇形の硬化退縮」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間なし。薬効分類332
硬化療法に用いる硬化剤。現在の適応は「食道静脈瘤出血の止血及び食道静脈瘤の硬化退縮」と「胃静脈瘤の退縮」で、今回、3つ目の承認取得となった。
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ウステキヌマブBS皮下注45mgシリンジ「YD」(ウステキヌマブ(遺伝子組換え)[ウステキヌマブ後続2]、陽進堂):「既存治療で効果不十分な下記疾患:尋常性乾癬、乾癬性関節炎」を効能・効果とするバイオ後続品。薬効分類399。
ステラーラ皮下注のバイオシミラー(BS)。富士製薬のBSに続く2剤目となる。先発品のステラーラ皮下注の効能・効果は▽尋常性乾癬・乾癬性関節炎▽クローン病▽潰瘍性大腸炎―となっているが、BSの2剤は「尋常性乾癬・乾癬性関節炎」のみとなる。
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ゼップバウンド皮下注2.5mgアテオス、同皮下注5mgアテオス、同皮下注7.5mgアテオス、同皮下注10mgアテオス、同皮下注12.5mgアテオス、同皮下注15mgアテオス(チルゼパチド、日本イーライリリー):「肥満症。ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する・BMIが35kg/m2以上」を効能・効果とする新効能・新用量・その他の医薬品。再審査期間は残余(令和12年9月25日まで)。薬効分類249。
持続性GIP/GLP-1受容体作動薬。用法・用量は、「通常、成人には、チルゼパチドとして週1回2.5mgから開始し、4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、週1回10mgを皮下注射する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回5mgまで減量、又は4週間以上の間隔で2.5mgずつ週1回15mgまで増量できる」。
同社では、同一成分のマンジャロ皮下注を23年4月に2型糖尿病の適応で発売している。肥満症治療薬・ゼップバウンドの効能・効果の食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない患者に限るといった内容は、ノボ ノルディスク ファーマの持続性GLP-1受容体作動薬・ウゴービと同様となっている。
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オプジーボ点滴静注20mg、同点滴静注100mg、同点滴静注120mg、同点滴静注240mg(ニボルマブ(遺伝子組換え)、小野薬品):「根治切除不能な尿路上皮がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。薬効分類429。
抗PD-1抗体。尿路上皮がんの1次治療(ゲムシタビン及び白金系抗悪性腫瘍剤と併用)の効能追加となる。現在、尿路上皮がんに係る適応として、「尿路上皮がんにおける術後補助療法」を持っている。
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ランダ注10mg/20mL、同注25mg/50mL、同注50mg/100mL(シスプラチン、日本化薬):「尿路上皮がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。薬効分類429。
オプジーボとの併用での用量に関する変更となる。
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キイトルーダ点滴静注100mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)、MSD):「進行・再発の子宮体がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は残余(2031年12月23日まで)。薬効分類429。
抗PD-1抗体。子宮体がんの1次治療(化学療法と併用)の効能追加となる。国内で現在、子宮体がんに係る効能・効果として「がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の子宮体がん」が承認されている。これはレンビマと併用し、2次治療以降の選択肢となっている。
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ヒフデュラ配合皮下注(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)/ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)、アルジェニクスジャパン):「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。薬効分類639。
抗 FcRn 抗体フラグメント・ヒアルロン酸分解酵素配合製剤。対象疾患の慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)に対する用法・用量は、「通常、成人には本剤1回5.6mL(エフガルチギモドアルファ(遺伝子組換え)として1,008mg及びボルヒアルロニダーゼアルファ(遺伝子組換え)として11,200単位)を週1回皮下投与する」で、既承認の全身型重症筋無力症とは異なる。
CIDPは末梢神経系の希少かつ重度な自己免疫疾患。アルジェニクスでは、CIDP の治療において、国内で最初のグロブリン製剤が承認されてから25 年ぶりのイノベーションになると説明している。
なお、
同日付で承認された新有効成分の記事はこちら