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厚労省 「製造・品質の悪質な違法行為」課徴金導入で利益優先を抑止へ 責任役員変更命令、品責規定も

公開日時 2024/07/08 06:00
厚労省は、7月5日の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会に、次期薬機法改正に向けて課徴金制度の対象範囲を「製造管理・品質管理上の悪質な行為」に拡大することを提案した。厚労省の佐藤大作審議官(医薬担当)は、「製造・品質管理よりも製品の利益を優先するがために違法行為を犯してしまうという事例が複数挙がっている」と説明。課徴金は虚偽・誇大広告を対象に19年薬機法改正で導入されたが、「抑止」の効果があがっているとして、対象範囲拡大を提案した。後発品を中心とした薬機法違反などが報告される中で、責任役員の変更命令や、品質保証責任者の薬機法上で規定することなども提案し、法令遵守や品質確保の取組みを強化する姿勢を打ち出した。

厚労省は、2019年の薬機法改正で、医薬品関連事業者のガバナンス強化が図られているにもかかわらず、21年2月の小林化工の行政処分など、後発品を中心とした不正事案が続いていることに問題意識を表明。法令遵守や品質確保、違反行為の抑止に向けた取組みを強化する観点から、課徴金の対象範囲拡大のほか、責任役員の変更命令、品質保証責任者の薬機法上の規定などを提案した。

◎責任役員変更命令 総責の変更命令や不正事案で責任役員の関与認められた事例も

責任役員の変更命令は19年の法改正でも検討がなされたが、一部与党議員の反対などもあり、衆・参議院の附帯決議で「改正法の施行状況も踏まえて制度化を検討する」とされた。佐藤審議官は、「昨今の製造・品質管理上の行政処分の事案においては、総括製造販売責任者の変更等を実際に命じたような事例もある。また、不正事案の中で責任役員等の関与が認められた事案というものも複数存在している」と説明。責任役員の責任を明確にする観点から、主として医薬品の製造販売・製造にかかわる許可業者において、責任役員の「変更命令」を改めて提案した。

森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「医療医薬品医療機器等の製造・流通・販売に関わる者の法令順守違反は、国民の生命・健康に直結する、そして脅かすことになると考えている。責任役員の変更命令については、前回からの継続事項で盛り込むことが必要だ」と述べた。三澤日出巳委員(慶應義塾大薬学部教授)も、「異論はない」としたうえで、薬剤師要件のある総責について、薬剤師として行政処分を受けた例がないことを説明。悪質だった場合には、「薬剤師にも行政処分をすることが必要ではないか。それがガバナンスを強めるということになるのではないか」との考えを示した。

◎品責を薬機法で規定を提案 製造業者の情報開示・提供規定で管理監督機能発揮を

厚労省は、現在省令で規定されている品質保証責任者について、薬機法に規定することで法的責任を強化することも提案した。医薬品製造業者の製造・品質管理上の不正事案も起きているが、「製造販売業者による製造業者に対する管理・監督が不十分であった事案というものが相当存在している」と指摘。品質保証責任者の責任を強化するとともに、製造業者から製造販売業者に対する製造管理情報の開示・提供などを薬機法上に規定することなども提案。これにより、製造販売業者の管理監督責任を果たせる体制とすることを提案した。製薬業界からは、「立場が同等になって責任が分散する」ことに対する懸念の声があがり、佐藤審議官は、役割を明確化するよう、製薬業界の意見も踏まえて今後詰めていく姿勢を示した。

◎後発品新規品目などのGMP調査の主体、PMDAに変更を提案 9割の都道府県が反対との声

このほか、厚労省は、後発品の承認申請時の新規品目についてのGMP適合性調査と区分適応性調査のGMP調査の主体を都道府県からPMDAに見直すことを提案した。都道府県間で人的リソースなどに差があり、GMP調査や経験にバラつきがあることも指摘されており、全国的に均てん化した体制構築が一つの課題として指摘されている。

東京都と大阪府は、調査経験が豊富な都道府県が他の都道府県をフォローすることで、全体の調査体制のレベルアップを図ることを提案しているが、佐藤審議官は「県境を越えるということもある。例えば、東京都が他の自治体で調査権限を発揮することはできずに、オブザーバーという形での参加になるといった限度もある」と指摘。後発品の承認申請時の新規品目についてのGMP適合性調査については、「比較的難易度が高い」ことも説明し、実施主体をPMDAに変更することを提案した。

中島真弓委員(東京都保健医療局健康安全部薬務課長)は、厚労省の提案に「反対」との姿勢を鮮明にした。全都道府県に調査をしたところ、9割以上が反対していると紹介。「この提案通り進めた場合、都道府県の適合性調査の件数が大幅に減少する恐れがある。現在十分な調査体制を有している自治体においても、リーダー調査員の育成、確保が困難となり、GMP調査体制が弱体化してしまうということが懸念される。またGMPに詳しい職員が減ってしまえば、GMPに関する違反措置ですとかまた製造販売業のGQP調査の実施にも支障が生じてしまう」と懸念を示した。「GMP調査員の育成には非常に時間と労力を要している。これまで自治体の方で培ってきた調査リソースをぜひ有効活用していただきたい」とも述べた。

また、後発品の不正の背景に新規品目の十分な技術移転を行わないまま、発売を優先する「拙速な技術開発・検討」など、いわゆる“上流問題”が指摘されていることに対しては、「現在のGMP省令には製剤設計を見る規定というのがない状況。上流問題を解決するためには調査主体の見直しよりも、製剤設計を確認する規定や仕組みを整備することが必要かと思う」とも述べた。

茂松茂人委員(日本医師会副会長)は、大阪府からも同様の話を聞いているといい、人材の重要性を強調。「PMDAとしっかりした都道府県間で柔軟に、協力し合ってやっていくということが非常に重要ではないか」と述べた。森委員(日薬副会長)は、「都道府県のGMPの調査の維持は非常に重要で、弱体化するようなことがあってはいけない」と述べた。

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