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皮下投与PNH治療薬・ピアスカイなど新薬7製品承認へ 薬食審・第一部会が了承

公開日時 2024/03/01 04:50
厚生労働省の薬食審・医薬品第一部会は2月29日、皮下投与の発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)治療薬・ピアスカイ注(一般名:クロバリマブ(遺伝子組換え)、中外製薬)など新薬7製品の承認可否を審議し、承認することを了承した。7製品のうち6製品は希少疾病用医薬品。この中には正式承認されれば、「縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーにおける筋力低下の進行抑制」を効能・効果とする世界初の治療薬となるアセノベル徐放錠(アセノイラミン酸、ノーベルファーマ)が含まれる。

報告品目は1製品で、バビースモ硝子体内注射液(ファリシマブ(遺伝子組換え)、中外製薬)の網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫の適応追加となる。審議品目、報告品目とも3月中に正式承認される見込み。

【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
ピアスカイ注340mg(クロバリマブ(遺伝子組換え)、中外製薬):「発作性夜間ヘモグロビン尿症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。承認条件として全例調査や医師要件、施設要件がついた。

皮下投与の抗補体C5リサイクリング抗体。一般的な抗体では、抗原に1回しか結合することができないのに対し、本剤は繰り返し抗原に結合するよう改変することで、低用量で持続的な補体阻害が可能となる。本剤の用法・用量は「通常、クロバリマブ(遺伝子組換え)として、患者の体重を考慮し、1日目に1回1000又は1500mgを点滴静注し、2、8、15及び22日目に1回340mg、29日目以降は4週ごとに1回680又は1020mgを皮下投与する」となり、維持期は4週に1回の投与間隔となる。

海外では23年12月時点で、承認されている国・地域はない。

PNHは国の指定難病で、PIG-A遺伝子に後天的に変異が生じた造血幹細胞がクローン性に拡大することにより、自己補体による血管内溶血を生じる造血幹細胞疾患。ヘモグロビン尿、血栓症などPNH特有の溶血に起因する症状と、再生不良性貧血と同様の造血不全症状の二面性を持つが、症状は患者により異なる。合併症として慢性腎臓病、肺高血圧症などを併発する場合がある。PNHの2021年度末の医療受給者証保持者数は959人。

レズロック錠200mg(ベルモスジルメシル酸塩、Meiji Seika ファルマ):「造血幹細胞移植後の慢性移植片対宿主病(ステロイド剤の投与で効果不十分な場合)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。

選択的ROCK2阻害薬。免疫細胞の分化と組織の線維化に関与するリン酸化酵素であるROCK2を選択的に阻害する。免疫調整作用と抗線維化作用を発揮し、慢性移植片対宿主病(慢性GVHD)に奏効することが期待されている。正式承認されれば、慢性GVHDに対する初のROCK2阻害薬となる。

用法・用量は、「通常、成人及び12歳以上の小児にはベルモスジルとして200mgを1日1回食後に経口投与する。併用薬に応じて、効果不十分な場合に1回200mg1日2回投与に増量できる」。海外では23年11月時点で米国、オーストラリア、カナダ、英国、中国、イスラエルで承認済。

慢性GVHDは、白血病を含む血液がんの治療として行われる造血幹細胞移植後に発症する合併症で、治療選択肢が限られている。慢性GVHDの標準的な一次治療は副腎皮質ステロイドの全身投与であるものの、約半数の患者がステロイド抵抗性となり、二次治療が必要となっている。

フィンテプラ内用液2.2mg/mL(フェンフルラミン塩酸塩、ユーシービージャパン):「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないLennox-Gastaut症候群患者におけるてんかん発作に対する抗てんかん薬との併用」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。承認条件として全例調査がついた。

本剤は、セロトニンの放出作用及びセロトニン受容体作動薬として5-HT1D、5-HT2Aおよび5-HT2C受容体に対し特異的にアゴニスト活性を示す。またシグマ‐1受容体のポジティブモジュレーターとして作用し、発作を抑制する二重活性を有する。

今回追加するLennox-Gastaut(レノックス・ガストー)症候群患者におけるてんかん発作に係る適応の用法・用量は、「通常、成人及び2歳以上の小児には、フェンフルラミンとして1日0.2mg/kgを開始用量として1日2回に分けて経口投与し、患者の状態に応じて、1週間以上の間隔をあけて1日0.7mg/kgまで増量できる。1日用量として26mgを超えないこと」となり、既承認のドラベ症候群患者におけるてんかん発作に係る適応とは異なる。

海外では23年12月時点で、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群の適応で4つの国・地域で承認されている。

レノックス・ガストー症候群は、幼少期に発症する難治性の重篤な発達性およびてんかん性脳症で、国内患者数は推定4300人とされる。多様な薬剤抵抗性のてんかん発作が現れ、神経発達、認知、運動機能の重篤な障害が特徴的な病態となる。

アセノベル除放錠500mg(アセノイラミン酸、ノーベルファーマ):「縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーにおける筋力低下の進行抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。承認条件として全例調査がついた。

有効成分のアセノイラミン酸はシアル酸の一種。縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(GNEミオパチー)で足りなくなったシアル酸を補うため経口投与可能な薬剤として開発された。用法・用量は「通常、成人にはアセノイラミン酸として1回2gを1日3回食後に経口投与する。なお、投与間隔は約8時間とすることが望ましい」。

GNEミオパチーは、多くは10代後半から30代にかけて出現し、体幹から離れた部位から筋肉が萎縮、変性し、次第に体の自由が奪われていく希少疾病。国内患者数は、厚労省の難治性疾患克服研究事業の平成21年度の報告書において、167~345人と推定されている。

海外で承認されている国・地域はなく、日本で正式承認されれば本適応を持つ世界初の治療薬となる。

シスタドロップス点眼液0.38%(システアミン塩酸塩、ヴィアトリス製薬):「シスチン症における角膜シスチン結晶の減少」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用薬品。再審査期間は10年。承認条件として全例調査がついた。

シスチン症は希少な先天代謝異常症。ライソゾーム膜上でシスチン輸送を担うシスチノシンをコードする遺伝子の変異により、腎、眼球、骨髄など全身のライソゾーム内にシスチンが沈着し、結晶となって臓器障害を生じる。国内患者数は10数人とされる。

本剤は点眼投与でライソゾームに蓄積するシスチンと反応し、細胞内シスチン濃度を低下させるもの。用法・用量は「通常、1回1滴、1日4回点眼する。なお、症状により適宜回数を減じる」。

海外では欧米を含む複数の国・地域で承認済み。

なお、日本先天代謝異常学会およびシスチノーシス患者と家族の会から厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬の要望募集」に開発要望が出されたが、ヴィアトリス製薬は既に開発に取り掛かっていたため、厚労省から開発要請はされていない。

アジンマ静注用500(アパダムターゼ アルファ(遺伝子組換え)/シナキサダムダーゼ アルファ(遺伝子組換え)、武田薬品):「先天性血栓性血小板減少性紫斑病」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。承認条件として全例調査がついた。

遺伝子組換えADAMTS13補充療法薬。欠損または欠乏したADAMTS13酵素を補充することによって、標準治療を改善し、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)患者のアンメットメディカルニーズに応える新しい治療選択肢として期待されている。

同剤は緩徐に静脈内注射で用いるが、定期的に投与する場合は「通常、成人及び12歳以上の小児には、1回40国際単位/kgを隔週投与するが、患者の状態に応じて1回40国際単位/kgを週1回投与することができる」――。急性増悪時に投与する場合は、「通常、成人及び12歳以上の小児には、1日目に1回40国際単位/kg、2日目に1回20国際単位/kg、3日目以降は1日1回15国際単位/kgを投与する」――となる。

TTPは、フォン・ヴィレブランド因子(VWF)による血小板の接着および凝集に関連した、致死的かつ稀な血栓性微小血管症の一種。TTPは先天性TTP(cTTP)と後天性TTP(iTTP)に大別される。

アジンマの適応であるcTTPは、急性症状と慢性症状の両方を有し(脳卒中と心血管疾患を含む)、大きな疾病負荷と関連する。ADAMTS13の欠乏状態に起因する進行中の広範な臓器障害などの深刻な併存疾患のため、一般集団と比較した患者QOLは大幅に低下し、生存期間は短縮する。cTTPの治療薬として承認された薬剤はなく、急性症状の治療又は予防には新鮮凍結血漿が汎用されている。

海外ではcTTPの適応で、23年11月に米国で承認されている。

ウィフガート点滴静注400mg(エフガルチギモド アルファ(遺伝子組換え)、アルジェニクスジャパン):「慢性特発性血小板減少性紫斑病」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。承認条件として全例調査がついた。

抗FcRn抗体フラグメント製剤。疾患を引き起こす原因である免疫グロブリンG(IgG)抗体を減らし、IgGのリサイクルを阻害するよう設計されたもの。IgG抗体の分解を妨げる上で中心的な役割を担っている胎児性Fc受容体(FcRn)に結合し、FcRnを遮断することで、IgG抗体値が減少する。

今回追加する慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、既承認の全身型重症筋無力症(gMG)に続く2つ目の適応となる。ITPの用法・用量は「通常、成人にはエフガルチギモドアルファ(遺伝子組換え)として1回10mg/kgを週1回又は2週に1回1時間かけて点滴静注する。週1回投与で開始し、投与開始後4週以降は血小板数及び臨床症状に基づき2週に1回投与に調節することができる」となり、既承認のgMGとは異なる。

海外では、23年10月時点でITPの適応で承認されている国はない。

ITPは、血小板減少を来たす他の明らかな病気や薬剤の服薬がなく血小板数が減少し、出血しやすくなる疾患。血小板に対する自己抗体ができ、この自己抗体により脾臓で血小板が破壊されるために、血小板の数が減ってしまうと推定されているが、なぜ自己抗体ができるのかはわかっていない。6カ月以上血小板減少が持続する「慢性型」は成人に多い傾向。血小板数が10万/μL未満に減少した場合、この病気が疑われる。

【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。

バビースモ硝子体内注射液120mg/mL(ファリシマブ(遺伝子組換え)、中外製薬):「網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は10年。

抗VEGF/抗Ang-2バイスペシフィック抗体。視力低下の原因のひとつのアンジオポエチン-2(Ang-2)と血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)をそれぞれ遮断し、血管を安定化させる。

今回追加する網膜静脈閉塞症(RVO)を伴う黄斑浮腫の用法・用量は、「ファリシマブ(遺伝子組換え)として1回あたり6.0mg(0.05mL)を硝子体内投与する。投与間隔は、4週以上あけること」となり、既承認の▽中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性、▽糖尿病黄斑浮腫――とは異なる。

RVOは、網膜血管疾患による視力喪失において2番目に多い原因とされる。RVOでは静脈が閉塞して網膜の正常な血流が制限され、黄斑浮腫と呼ばれる虚血、出血、体液の漏出、網膜の腫れが生じ、通常、患部の眼に急性の無痛性の視力障害が生じる。通常、RVOに伴う黄斑浮腫の治療は、抗血管内皮増殖因子製剤の硝子体内注射を繰り返し行う。
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