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ギリアド・ブライスティング社長 オンコロジーが成長の柱 トリプルネガティブ乳がんでTrodelvyに注力

公開日時 2024/02/20 04:53
ギリアド・サイエンシズのケネット・ブライスティング代表取締役社長は2月19日に開いたメディアラウンドテーブルで、「オンコロジー領域は2030年末までに売上の1/3を占める」と述べ、オンコロジーを成長の柱とする姿勢を強調した。期待を寄せるのが、今年1月に国内申請した抗体薬物複合体(ADC)・sacituzumab govitecan(海外製品名:Trodelvy)で、「今年注力する」製品にあげた。同候補化合物は、予後不良でアンメットニーズの高いトリプルネガティブ乳がんを対象にしており、同社としては国内で初となる固形がんの適応取得を目指す。ブライスティング社長は、「革新性の高いアセットなので、日本人の患者さんにも早くお届けしたい」と意欲をみせた。

同社は、新型コロナやB型・C型肝炎に代表されるウイルス(感染症)、炎症領域で存在感を発揮してきたが、オンコロジーを新たな柱に位置付ける。2030年までに“Top10オンコロジーカンパニー”への成長を掲げる中で、パイプラインの拡充を進める。実際、グローバルではCAR-T療法・イエスカルタ、Tecartusに加え、ADCのTrodelvyの3製品が売上を牽引。総売上げの12%に迫る30億ドル超となり、前年比でも40%増の成長を遂げた。

ブライスティング社長は同社がオンコロジー領域に参入した背景として、アンメットニーズの大きさに加え、同社の有する科学的な専門性を活かすことで革新的な治療法を創出することへの自信をみせる。「オンコロジーで(他社との)違いを出せると思っている。キュア(治癒)の可能性もある。多くの方の生活を変えられると思っている」と話した。一方、企業の視点として、「ビジネスを多角化できるチャンスだと捉えている。オンコロジーは新たな成長の柱として、ギリアドの成長を支えてくれる」と強調した。

◎ADCのTrodelvy アンメットニーズ高いトリプルネガティブ乳がんでの貢献に期待

日本でも同様に、「オンコロジーが今後の成長の柱、基盤となる」と話す。「30年までにウイルス領域も売上は伸ばす予定だ。売上の1/3がオンコロジーが占めるのは、他の領域を犠牲にしているのではない」と述べ、オンコロジーのポートフォリオの有するパワーを強調する。成長に貢献すると見込むのが、CAR-T細胞療法のイエスカルタとTecartus(brexu-cel)、ADCのTrodelvyの3ブランドだ。

「今年、注力する」とブライスティング社長が明言したTrodelvyは「全身療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性かつ HER2 陰性(HR-/HER2-)乳がん治療薬」として今年1月30日に申請した。いわゆる“トリプルネガティブ”に対する効能取得を目指す。転移性トリプルネガティブ乳がんは、若年女性に多く、5年生存率が12%と予後が不良であることが知られており、大きなアンメットニーズがある。このため、臨床的な意義が大きいとの考えを示した。トリプルネガティブ乳がんのファーストラインでの治験を進めていることも紹介し、「できるだけ早い治療ラインに入っていきたい」と述べた。ビジネスの側面からは、CAR-T細胞療法により参入した血液がんに加え、Trodelvyの上市で固形がんにも乗り出す意義も強調した。

なお、化学療法およびチェックポイント阻害剤後の進行性・転移性非小細胞肺がん(NSCLC)を対象とした第3相臨床試験では主要評価項目の全生存期間(OS)について、延長傾向はあったものの、対照群のドセタキセルに対して有意差が認められなかったことも紹介された。

CAR-T療法に注力する姿勢も強調した。23年には、“CAR-T細胞療法でのリーダーシップ”を掲げる中で、イエスカルタの国内製造販売承認を第一三共から承継。25年には、Trodelvyの肺がん、尿路上皮がんの適応拡大を目指すほか、CAR-T細胞療法のTecartusについて、急性リンパ性白血病(ALL)とマントル細胞リンパ腫(MCL)の適応取得を目指す計画だ。「全体としては非常にエキサイティング。まだやることは残っているし、革新性の高いアセットなので日本人の患者さんにもできるだけ早く届けたい」と意欲をみせた。

◎トリプルネガティブ承認見据えMR増員へ

ポートフォリオの変化に伴って、MR体制の拡充も進める。ブライスティング社長は、「Trodelvyのトリプルネガティブの承認に向けた増員をかけている。ある程度のサイズのMR部隊になると思う」と述べた。肺がんや尿路上皮がんの適応拡大も視野に入れるが、「適応を考えながら、その時に増員していく予定」との考えを示した。

◎表臨床開発本部長 ドラッグ・ロスに「基本戦略として国際共同第3相臨床試験に入ることで対応」

ドラッグ・ロス/ラグを懸念する声もあがっているが、Trodelvyも国際共同第3相臨床試験に日本が組み込まれず、海外では唯一承認されたTrop2を標的とするADCとして上市から3年が経過、3種類の適応を取得している状況にある。表雅之常務執行役員臨床開発本部長は、Trodelvyは同社が20年に買収したバイオベンチャー・イミュノメディクスの開発品であったことの影響を指摘。「我々としてはできる限り、基本戦略として、第3相臨床試験、国際共同治験に入ることで対応していきたい。ベンチャーの開発したアンメットメディカルニーズの高い製品はPMDAとも交渉し、できるだけ早く患者さんに届けたい」と話した。

◎ブライスティング社長 バイオテック企業、政府、学会とのパートナーシップに意欲

産官学でのパートナーシップも重要になるが、ブライスティング社長は、「バイオテック企業、政府、学会と連携を図りたい。新型コロナのパンデミックの中で、世界に先駆けてベクルリーは日本で初めて承認が取得できたが、PMDAや厚労省との緊密な連携があってのこと。今後もこうしたパートナーシップを続けていきたい」と述べた。またグローバルの研究開発部門のトップが日本を訪れ、パートナーシップの機会を模索することも紹介し、「日本はポテンシャルの高い、革新性の生まれる環境だと思っている。さらにコラボレーションの幅を広げていきたい」と話した。


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