武見敬三厚労相は１月12日、中医協（小塩隆士会長）に2024年度診療報酬改定を諮問した。同日の中医協総会では、「24年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理」が取りまとめられた。議論の整理では、24年度改定の焦点である医療従事者の賃上げについて、入院基本料や初・再診料、調剤基本料などの「評価を見直す」ことを盛り込んだ。敷地内薬局については、医薬品の備蓄等の効率性、医療経済実態調査に基づく薬局の費用構造や損益率の状況を踏まえ、薬局・医療機関双方の処方について評価を見直すと明記した。医療機関や保険薬局からの取引状況の報告を見直すことも盛り込んだ。

◎夜間・ 休日対応含めた調剤基本料等の評価見直しも

議論の整理では、「現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進」として、「40 歳未満の勤務医師、事務職員等の賃上げを実施すること等の観点から、入院基本料等の評価を見直す」、「外来診療において標準的な感染防止対策を日常的に講じることが必要となっていること、職員の賃上げを実施すること等の観点から、初・再診料等の評価を見直す」ことを明記した。薬局については、「地域の医薬品供給拠点としての役割を担い、地域医療に貢献する薬局の整備を進めていくこと、職員の賃上げを実施すること等の観点から、夜間・ 休日対応を含めた、薬局における体制に係る調剤基本料等の評価を見直す」ことを盛り込んだ。

24年度診療報酬改定については、昨年末の大臣折衝で、診療報酬の改定率を＋0.88％（国費800億円程度）とすることに合意。「看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種について、24年度にベア＋2.5％、令和７年度に ベア＋2.0％を実施していくための特例的な対応」として＋0.61％を措置。さらに改定率の中に「40 歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職 員、歯科技工所等で従事する者の賃上げに資する措置分（＋ 0.28％程度）を含む」とするなど、医療従事者の賃上げを重視した内容となっており、24年度改定の焦点となっている。社会保障審議会医療保険部会・医療部会で取りまとめた2024年度診療報酬改定の基本方針でも、「現下の雇用情勢も踏まえた人材確保・働き方改革等の推進」を重点課題に据えている。

◎リフィル処方箋の推進　特定疾患処方管理加算、地域包括診療料の要件、評価を見直し

リフィル処方箋の推進が課題とされる中で、「特定疾患処方管理加算」や、かかりつけ医機能を評価する点数である「地域包括診療料」の要件、および評価を見直すことも明記した。議論の整理では、「リフィル処方及び長期処方の活用並びに医療 DXの活用による効率的な医薬品情報の管理を適切に推進する観点から、特定疾患処方管理加算について、要件及び評価を見直す」ことを明記。「かかりつけ医機能の評価である地域包括診療料等について、かかりつけ医と介護支援専門員との連携の強化、かかりつけ医の認知症対応力向上、リフィル処方及び長期処方の活用、適切な意思決定支援及び医療 DX を推進する観点から、要件及び評価を見直す」ことも盛り込んだ。

◎敷地内薬局　医薬品の備蓄の効率性、薬局の費用構造や損益率状況踏まえ評価見直しへ

敷地内薬局については、「医薬品の備蓄等の効率性、医療経済実態調査に基づく薬局の費用構造や損益率の状況、同一敷地における医療機関との関係性等を踏まえ、特別調剤基本料を算定する薬局の体制等や、同一敷地に薬局を有する医療機関であって一定の基準に該当するものが行う処方について、評価を見直す」としている。

◎医療機関や薬局からの取引状況の報告見直しへ　流通改善ガイドライン踏まえ

「医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会」で取りまとめられた「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」の改訂を踏まえ、医薬品の適正な流通を確保する観点から、保険医療機関及び保険薬局の医薬品取引状況に係る報告の見直しを行う」ことも盛り込んだ。

支払側の松本真人委員（健康保険組合連合会理事）は、「方向性が決まったわけではないということを前提に、支払い側として事務局案を了承する。今後は短冊に基づいてしっかり協議させていただきたい」と表明。診療側の長島公之委員（日本医師会常任理事）も、「2号側としても、本日のところは今後、短冊のところで議論したいというコメントにとどめたい」と述べた。

１月19日までの間、パブリックコメントを募り、19日には公聴会を開く。その後、個別改定項目の議論に移り、２月に答申する見通し。