市場拡大再算定 “共連れ”ルール見直しに賛成意見も「再算定類似品以外は引下げ強化」も 中医協
公開日時 2023/11/24 04:56
中医協薬価専門部会は11月22日、製薬業界が廃止を主張する市場拡大再算定の“共連れ”ルールについて議論を行った。「PD-1/PD-L1阻害薬」を例に、「効能が一つでも重複する」場合が俎上に上った。厚労省は、「薬剤分類等であらかじめ特定することは可能」としたため、賛同する意見があがった。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「競合性が複雑な領域をあらかじめ特定することは、予見性を高める観点から検討の余地がある。一方で、再算定類似品以外は引き下げを強化すべき」と述べた。
◎効能が一つでも類似薬に該当「薬剤分類等であらかじめ特定可能」
市場拡大再算定は2008年度改定で、、市場拡大再算定対象医薬品の「全ての薬理作用類似薬」について、類似品として価格調整を行うこととされた。「PD-1/PD-L1阻害薬」を例に、抗がん剤などの革新的新薬で適応拡大が進むことで類似品としての再算定を受けやすくなっているほか、予見性低下を指摘される要因になっていることを説明した。
日本における適応拡大に影響を与える可能性があるとしたうえで、「効能が一つでも重複すれば類似薬として再算定の対象となる状況」について議論にあげた。「このような課題を有する領域については、薬剤分類等であらかじめ特定することは可能」とした。なお、適応拡大しながら市場規模が拡大しているのであれば、「個々の薬剤ごとの市場拡大に伴って市場拡大再算定の対象となる」ことも説明した。
◎診療側・長島委員「重複している効能一つでも主効能であれば類似薬とすべき」
診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「PD-1/PD-L1阻害薬のような課題を有する領域については、あらかじめ特定が可能であることから、類似品の考え方を見直し、あらかじめ特定された領域について対象から除外するのも一つの考え方」と理解を示した。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)も、「競合性が複雑な領域をあらかじめ特定することは、予見性を高める観点から検討の余地がある」と述べた。
一方で、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「重複している効能がたとえ一つであっても、それが主たる効能であれば、当然類似薬として対象とするべき。状況は様々であることが想定される。明文化することは難しく、これまで通り薬価算定組織で検討された結果を中医協に提案いただき、市場拡大再算定の趣旨である公的保険制度における薬剤費の適切な配分を踏まえつつ、中医協で判断するのが適当」と指摘した。
◎引下げ率の下げ止め 市場規模拡大率大で緩和 診療・支払各側から「見直し」の声
再算定類似品以外の品目についての市場拡大再算定の引下げ率の下げ止めについても議論となった。引下げ率の上限値となったものは、66成分のうち13成分あった。市場規模拡大率が大きくなると引下げ率の増加が緩やかになることなどを示し、見直しについての意見を聞いた。
診療側の長島委員は、「国民皆保険の持続性を確保するということからすれば、引き下げ率の上限値については、上限値が適用された品目の状況なども分析した上で、見直しを検討しても良いのではないか」と述べた。診療側の森委員も、「現状、上限値が適用されている品目が一定数あり激変緩和の機能を果たしているものと考えますが、現行のままで進めていくべきかは、検討の余地がある」と述べた。支払側の松本委員は、「「再算定類似品以外は引き下げを強化すべき」との考えを示した。
◎有用性系加算取得品目は市場拡大再算定の緩和 「引き続き検討」の声
このほか、有用性系加算に該当する効能が追加された品目であって、それが理由で市場拡大した場合に市場拡大再算定における補正加算(引下げ率の緩和)の対象とすることを提案した。ただ、個別に薬価算定組織の評価が必要であり時間を要するとして、24年度薬価改定では適用せず、適用する場合でも以降の改定から適用するとした。
診療側の長島委員は、「今回改定で対応しないということを踏まえ、引き続き薬価専門部会で過去の例などを参考に評価のあり方について検討できれば」と表明。診療側の森委員も「改定時の加算との関係性も踏まえてしっかりとシミュレーションしつつ、判断すべき。引き続きの課題」と述べた。支払側の松本委員は、「補正加算による緩和については臨床上の有用性を薬価算定組織で個別に評価する方向であれば異論はない」と述べた。
◎石牟禮専門委員 下げ止め見直しで「ラグ/ロスの対応について足を引っ張らないか心配」
業界代表の石牟禮武志専門委員(塩野義製薬渉外部長)は、「再算定自体もグローバル企業から見ますと、日本の市場の魅力度を低下させるルールの一つというふうになっている」と述べた。下止めの見直しについては、「この見直しを拡大することが、ドラッグ・ラグ/ロスの対応について足を引っ張るようにならないか心配している。ぜひ、現行のままで引き続き検証を進めていただきたい」と訴えた。