【中医協総会(個別事項その5)11月22 日 議事要旨 後発医薬品、バイオ後続品、リフィル処方箋等】
公開日時 2023/11/24 04:51
中医協薬総会は11月22日、「個別事項その5」として、後発医薬品、バイオ後続品、リフィル処方箋等の各論点について事務局から説明を受け、議論を行った。本誌は各側委員による質疑について議事要旨として公開する。
会長:ただいまの説明に質問についてご質問がございましたらお願いします。それでは、長島委員お願いいたします。
長島委員:ありがとうございます。85ページの論点についてコメントします。まず、医薬品の供給状況を踏まえた取り組み状況についてです。後発医薬品の供給不安定が解消されておらず、むしろ悪化しているとも言える現状では、後発医薬品使用体制加算等の基準を変更する議論ができる状況にはなく、現場にこれ以上の混乱を与えるべきではありません。その上、患者さんに安定的に医薬品を供給する取り組みを促していく観点からは、まずは本年12月に終了予定である一般名処方加算等の特例措置を継続していただく必要があると考えます。また、供給が滞っている品目を加算の対象から除外するリストについても、内容をアップデートしながら、当面は継続していただくことが必要です。
次に、バイオ後続品の使用促進に係る取り組みについてです。患者さん側からすれば、現在もバイオシミラー製剤に対する認知度が低いことを踏まえれば、政府目標に向けた取り組みを推進するためには、現場において、バイオ後続品の有効性や安全性等について説明することが求められると思われます。そうした意味でも、今回の論点に示された外来や入院における対応案に賛同いたします。
ただし、現場感覚としては、すでに外来でバイオ医薬品を使用していた患者さんについて、入院時に切り替える場合など、途中から後続品に切り替えることは、51ページから53ページに示されたように、適応症の違いもあることも加わり、実際的には難しく、一般的な後発医薬品の切り替えとは同等に論じられないことに留意していただくことが必要であると考えます。
最後に、リフィル処方箋、長期処方についてです。まず、議論の大前提として、処方権は医師のみにありますので、当然ながら、どのような処方をするのかは医師の判断によります。医師は患者さんのその時々の症状や経過観察の必要性、服用管理等を踏まえながら、長期処方が可能かどうかも含めて検討いたします。したがいまして、論点にあるような更なるリフィル処方箋の導入活用を推進する観点のもとであっても、医師の判断が阻害されるようなことはないはずです。この点に十分留意していただく必要があります。
なお、事務局に一点、質問いたします。リフィル処方箋が交付された場合と、通常の処方の場合とで、医療機関や薬局での患者さんの支払額について、違いをもしわかれば教えてください。私からは以上です。
会長:はい、ありがとうございます。今長島委員から1点ご質問ございましたら、事務局いかがでしょうか?
医療課長:はい、医療課長でございます。この場でお答えしてよろしいでしょうか?1号側の後でもよろしいかと思ったんですが、いまでよろしければ、答えさせていただきます。
会長:いま、ご回答お願いいたします。
医療課長:はい、ありがとうございました。それではいま、長島委員からいただきましたご質問につきまして回答させていただきます。事前にシミュレーションが必要ということでいただいていた部分を準備させていただいてございます。
私どもとして今、リフィル処方箋が交付された場合と通常の処方の場合とで、医療機関や薬局での患者さんの負担額に違いがある、その違いを示すべしということでございました。事務局におきましては、一つの例をシミュレーションいたしました。これは全国全ての平均であるというわけではないですけれども、診療所におきまして、高血圧で通院していて、状態が安定していらっしゃる患者さんと仮定した場合で、3か月間どのぐらいの診療報酬点数になるか、そして3割負担の場合の薬剤費を除く自己負担についてシミュレーション、そして点数を出してございます。
まず三つの場合に分けまして、30日ごとにひと月に1回受診された場合の3か月間の医療費、そしてまたリフィル処方箋をした場合使用した場合の3か月間の医療費と自己負担、そして90日ごと、長期処方の場合ということでございますが、こちらの医療費等自己負担でございます。
まず30日ごと、つまり毎月一度受診する場合ということでございます。こちらは再診料や処方箋料、そしてまた調剤報酬が毎月算定されるということなってございます。3か月間で2200点余りというふうにシミュレーションができてございます。その中で診療所ではこちら大体1400点ぐらい、調剤では760点ぐらいかと思いますけれども、そうしますと自己負担3割ということでございますので、この場合は、診療所では4300円余り、調剤薬局では2200円あまりの自己負担が発生するというふうにシミュレーションできます。
次、リフィル処方箋を使用した場合ですが、この場合は、初月に再診料等が算定され、2月目、3月目は調剤基本料、リフィル処方箋を使用して調剤が行われた場合の診療報酬が算定されます。この場合は、診療所での点数が大体500点弱、調剤薬局での診療報酬点数が800円弱というぐらいと推計されまして、自己負担を計算いたしますとこちら診療所では1500円弱。そして調剤薬局では2300円程度というふうに推計がされるところでございます。
最後90日ごとの処方、いわゆる長期処方の場合ということでございますけれども、これは受診をされた月のみに再診料や処方箋料など、そして調剤報酬がかかるということでございまして、この場合はもちろん最も安いということでございますけれども、診療所で500点弱、そして調剤薬局で250点余り、そして自己負担にもついて申し上げますと、診療所では1400円余り、そして調剤薬局では700円余りといったようなそういったシミュレーションができるところでございます。
こういう一定の前提を置いたシミュレーションでございますので、こちらが全国一律にこれが平均値であるということではない、ということはコメントをさせていただきます。事務局からの回答は以上でございます。
会長:はい、長島委員よろしいでしょうか?
長島委員:はい、具体的なイメージをつかむことができました。ありがとうございました。
会長:はい、ありがとうございます。それでは続きまして森委員、お願いいたします。
森委員:はい、ありがとうございます。論点に沿っていくつかコメントさせていただきます。まず医薬品の供給状況を踏まえた取り組み状況についてです。
32ページ目にある日本薬剤師会での薬局における医薬品供給問題の影響調査でも、供給停止、限定出荷が継続し、前年に比べて約86%の薬局で悪化していると回答しており、供給問題が発生してから3年経ちますが、改善の兆しが見えないばかりか、悪化が止まりません。また、同じ調査で、追加の業務負担も調査しておりますが、1日平均で107分程度となっており、昨年末よりも10分程度、業務時間が増えております。先発・後発を問わず、呼吸器感染症の流行が続いていることもあり、医薬品の入手がますます困難になっており、その対応による追加業務が発生し、現場の負担は大きくなっている状況です。
このような状況の中、医薬品の供給問題への対応は、全ての薬局に影響を及ぼすものであり、薬局の使命である地域の医薬品提供体制の維持と、その前提となる医薬品の安定確保のためには、現在適用されている特例措置の内容も踏まえて、医薬品供給問題の対応に多大な苦労をしている薬局を広く評価していくことが、この長く続く未曾有の危機を乗り越えていくために必要と考えます。
また、先ほど申し上げたように、先発・後発問わず入手は困難なことに加えて、小児用のタミフルドライシロップのように剤形によって入手が困難なものも増加しており、処方変更のための医師への問い合わせが増加し、医師の負担とともに患者待ち時間の増加などにつながっています。
このような現下の医薬品の供給問題によって、薬局の現場では在庫の種類や量に大きな制約がある中で、手元にある医薬品で調剤せざるを得ず、通常の状況ならさほど発生しない、同じ有効成分の中での先発・後発の変更や剤形や規格の変更などが頻繁に発生しており、医療現場や患者の負担を軽減させることを目的に、この状況に対応するため、医師と薬剤師が連携した上で、一定の範囲内での変更調剤等に関して、柔軟な運用を認めるなどの見直しをお願いしたいと考えます。
次にバイオ後続品の使用促進に係る取り組みについてですが、後発品と同様に、患者負担の軽減、薬剤費の軽減のため、使用促進に取り組んでいく必要があると考えます。バイオ後続品はまだあまり医療従事者や患者に認知されていないこと、適応症などが先行品と揃っていない場合が多いこと、注射剤となること、高額なものが多いこと、何よりも化学合成品の後発品とは異なり、品質・有効性・安全性が先行品と同等、同質であるシミラーであるという特徴があります。そのため、患者により丁寧な説明とともに、化学合成品とは異なり、切り替えにも注意が必要であるため、安定供給が不可欠と考えます。薬局においても患者さんへの説明や対応を丁寧に進めていきたいと思います。ただし、バイオ医薬品は高額で、在庫負担の課題などもあります。推進策とともに、評価のあり方についても検討すべきものと考えます。
次にリフィル処方箋、長期処方についてですが、①(例えばかかりつけ医機能にかかる評価等における、患者に対するリフィル処方箋の周知に着目した評価について、どのように考えるか)の周知については薬局においても重要なもので、患者さんへの周知や説明は、医師や医療機関、保険者と連携しながらかかりつけ機能を生かしてしっかりと進めていきたいと考えます。また、リフィル処方箋への対応については、処方する側の医師も調剤を受け持つ側の薬剤師も、かかりつけ機能の強化と連携がより重要になってきますし、フォローアップの重要性も増してきます。また、このような連携の推進とともに、薬局でのリフィル処方箋の対応の状況がわかるよう、リフィル処方箋を取り扱った際に、医師への情報提供した場合には、その実態が把握できるようにするなど、所要の整備をすることも一つ考えます。私からは以上です。
会長:ありがとうございました。他いかがでしょうか?はい、はいそれでは松本委員お願いいたします。
松本委員:はい、ありがとうございます。それでは85ページの論点に沿ってコメントいたします。まず一点目の医薬品の供給状況を踏まえた取り組み状況についてでございますが、限定出荷等の対象になっている成分を、後発品の数量割合を計算から除外する等の対応をきめ細かく行った上で、引き続き後発品の使用促進することは重要だと考えております。後発医薬品の数量割合を指標とする各種加算の下限値を引き上げることは検討する余地があると考えております。また、現行は補足的な使用となっているカットオフ値、すなわち全医薬品に占める後発品と長期収載品の割合にも着目して、患者負担を考慮した医薬品の処方を推進することも検討すべきだと考えます。
続きまして、15ページから18ページに示されております、診療報酬上の特例措置については、時限的に設けられたものであり、そもそもこれについて議論をした際に支払側からは、「供給不安の真の被害者は患者である」ということを主張したにもかかわらず、当面の対応ということで、やむを得ず了解した経緯がございます。先ほど来、延長等のご意見が出ておりますけれども、それに関しては納得できる合理的な理由が示されない限り、単純に賛同できるものはございません。
続きまして2点目の「バイオ後続品の使用促進」に関する取り組みでございますが、資料の58ページ、59ページを見ますと、認知度は低いものの、少しでも安くなるのであれば使用したいと考える患者が一定数いること、医療機関においても積極的にバイオ後続品を処方する理由として、「患者の費用負担が軽減できるから」が最も多いことが示されております。新たに政府目標が設定され、来年度からの医療費適正化計画の記載事項ともなり、保険者としても取り組みを進めることになりますが、患者が安心してバイオ後続品を使用するためには、医師、医療機関からの働きかけが最も効果的だと考えておりますので、バイオ後続品導入初期加算の対象成分を拡大することには賛同いたします。また、入院医療については、DPC等の包括評価が重複しないようにしつつ、事務局案の通り診療報酬で評価することも十分に検討できると考えております。
3点目処方箋と長期処方についてでございますが、これについては以前申し上げました通り、リフィル処方箋による財政効果は68ページを見ましても、前回改定で見込まれたマイナス0.1%に遠く及ばないことは明らかでございます。周知が不足する点については保険者にも課題があることは十分理解しておりますが、医師や薬剤師には患者の希望を踏まえた対応をぜひお願いしたいと考えております。
一方の資料75ページでは、患者がリフィル処方箋の利用に必要だと感じることで「信頼するかかりつけ医」が最も多いことや、資料の69ページから70ページにかけて、リフィル処方箋が発行されている疾患も踏まえ、かかりつけ医に関する診療報酬において、患者の希望に応じてリフィル処方箋を発行することを評価することも考えられるというふうに思っております。また、長期処方とリフィル処方を一体的に推進する観点から、かかりつけ医機能の評価とも関連する82ページに示されております、特定疾患処方管理加算について、より長期の処方を評価することも検討すべきと考えます。私からは以上でございます。
会長:はい、ありがとうございました。それでは鳥潟委員、お願いいたします。
鳥潟委員:ありがとうございます。85ページの論点に沿って意見を申し上げたいと思います。協会としても平成21年度から加入者に軽減額通知を送付するなど、ジェネリック医薬品の使用促進に取り組んでまいりました。後発医薬品の供給不安をめぐる構造的課題の解決は、単に薬価を見直すのではなく、品質が確保された後発品を安定的に供給できる能力および体制を有している企業が見える化などにより市場で評価され、結果的に優位となることで、業界規模の拡大に向けた再編などを促す仕組みの構築が必要と考えております。
またバイオ後続品についてですけれども、「2029年度までにバイオシミラーに80%以上置き換わった成分数が全体の成分数の60%以上」との政府目標が示されたことを受け、協会といたしましても、今後医療機関の皆様への効果的な働きかけに向けた手法を検討していくこととしておりますが、56ページにある通り、置き換えが進んでいるものと置き換えが進んでいないものとの差が歴然としている状況でもあります。報酬上の不均衡については是正を図ることで、置き換えを促進する必要があるのではないかというふうに考えております。
最後にリフィル処方箋ですけども、引き続き制度周知に課題がある状況が続いておりまして、保険者としても広報に取り組んでいる最中でありますけれども、医療機関の皆様方や薬局の皆様方においても、広報物の掲示、患者の皆様の制度認知が進むよう、薬剤師、医師の皆様のご協力をいただければ大変ありがたいというふうに思っております。以上になります。
会長:はい、ありがとうございました。他にいかがでしょうか?はい、長島委員お願いします。
長島委員:はい。先ほど1号側の委員から最初のところで、今年12月に終了予定である特例措置はもうそこで終わりにすべきだというご意見がございました。しかし、状況をよく見てください。後発医薬品の供給不安は解消されておらず、むしろ悪化しております。そして患者さんの視点に立ってください。患者さんにとって最大の不利益、不幸は何でしょうか。必要な医薬品が安定して供給されないことです。したがって、この現状および患者さんの視点に立てば、患者さんにとって利益となる、安定供給に資する特例措置は当然継続すべきと考えます。以上です。
会長:ありがとうございます。次は、森委員お願いいたします。
森委員:はい、ありがとうございます。安定供給のところですが、32ページをご覧いただければと思います。昨年も供給不安で本当に苦労しました。再度日薬で調査をしたが、昨年よりも(供給状況が)「かなり悪化している」が28%、「悪化している」が57%で、現場は本当に疲弊をしています。何とか現場で他のメーカーの後発品や先発品、また他の剤形を入手し、それから近隣の薬局から手配をする、そして医師に相談をして処方変更をお願いして、今の状態を保っているところになります。今長島委員から患者のため、というお話がありました。まさに患者のためにしっかりと業務をしているところですので、ぜひここに関しては継続をしていただきたいというふうに思っております。また後発品の使用促進をこの問題で止めてはいけないというふうにも思っています。以上です。
会長:はい、ありがとうございます。他、追加のコメント等ございますでしょうか?よろしいでしょうか?はい他に特にご質問等ないようですので、本件に係る質疑はこのあたりといたします。今後事務局におかれましては本日いただいたご意見も踏まえて対応していただくようにお願いいたします。