アインHD常務ら 札幌地裁で競売妨害罪の初公判 法解釈巡り争う姿勢
公開日時 2023/11/14 04:51
KKR札幌医療センター(札幌市)の敷地内薬局の整備入札を巡って不正を行ったとして公契約関係競売等妨害の罪に問われた、アインホールディングス(HD)常務取締役で、子会社アインファーマシーズ社長の酒井雅人被告ら3人の初公判が11月13日、札幌地裁(井下田英樹裁判長)であった。3人は起訴内容については「事実関係に間違いはありません」と認めた。一方で、酒井被告ら2人の弁護人は「公募型プロポーザル方式の企画競争は罪名上の“入札”に当たらない」として法解釈を巡って争う姿勢を示した。
起訴されたのは、酒井容疑者のほか、アインファーマシーズ取締役の新山典義被告、同センター元事務部長の藤井浩之被告の3人。
起訴内容によると、3人は共謀して、2020年12月、センター敷地内の薬局を運営する事業者選定の公募で、アインHDに優先交渉権を得させようと考え、公正な入札を妨害したとされる。藤井被告が新山被告に他社の提案内容を漏らし、当初の企画提案書では月額400万円としていた土地賃料を750万円に差し替えて再提出させたという。センターは国家公務員共済組合連合会が運営し、藤井容疑者は当時「みなし公務員」だった。新山被告は北海道支店長で、藤井被告とは同じ高校野球部の先輩後輩関係。酒井被告はアインHD開発統括本部長として事業を統括する立場にあった。
◎企画書には病院の要望 他社状況伝え2回差し替え
検察側は、藤井被告が新山被告に対し、公募前から敷地内緑地の移設や、薬局2階部分を病院の福利厚生に活用するなど病院側の要望を伝え、アイン側は選定で有利になるように自由提案として企画書に盛り込んでいたと主張。入札締め切り後は2回にわたり、アイン側に他社の入札状況を伝え、金額を差し替えて再提出させたとした。
◎被告「コロナ禍の赤字解消のため」
被告人質問で藤井被告は「コロナ禍で病院経営が苦しく、赤字解消の一環として敷地内薬局の設置を考えた。資金や実績が豊富なアインHDが最適だと考えた」と説明。アイン側からの見返りは否定し「みなし公務員にもかかわらず公正な入札を妨害し申し訳ない」と謝罪した。新山被告は「ルール違反は明確だったが、当時は認識が薄れていた」と認めた一方、公募要件には「(入札締め切り後も)審査に必要な資料の追加を求める場合がある」との文言があるとして「再提出が認められ、違法には当たらないかもしれないと思った」と話した。
酒井、新山両被告の弁護人は公判後の取材に対し、今回の公募が「法律で定められた一般入札や指名競争入札ではなく、公募型プロポーザル方式の企画競争で随意契約の一種だ」と主張。公契約関係競売等妨害罪に当たるかについて、「過去の判例もなく、明らかではない。法解釈上成立するか否かを問題にせざるを得ない」と訴えた。
◎アインHD 被告2人の取締役辞任を発表
アインHDは11月13日、酒井被告と新山被告の取締役辞任を発表した。いずれも「一身上の都合」としている。後任のアインファーマシーズ社長には、同日付で首藤正一アインHD代表取締役専務が就いた。