厚生労働省の「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会（流改懇）」は９月28日、総価取引の是正に向けて、「医療上の必要性の高い品目」を新たなカテゴリーとして位置づけ、従来の取引とは「別枠」として取引することに大筋で合意した。基礎的医薬品、安定確保医薬品A、不採算品再算定品を「医療上必要性の高い品目」として、流通改善ガイドラインに明記する方針。全品目で単品単価を目指すスタンスに変更はないが、優先的に単品単価を推進するカテゴリーを明確化することで、流通透明化に向けた一つのステップとしたい考え。12月頃に開く流改懇に改訂ガイドライン案を提示して議論を行い、合意が得られれば、パブリックコメントを経て、施行する考え。2024年度の取引に反映してもらい、総価取引の早期是正を目指す。

◎“除外”取引ではなく「別枠」として提案　単品単価取引推進へ

これまでは特に流通コストがかかる品目や、流通上で特別な条件のある品目については、“除外”する形で流通取引が行われていた。ただ、企業によって基準や考え方が異なっている実態があることが指摘されていた。三村優美子座長（青山学院大名誉教授）は、「今回、“除外”という言葉ではなく、別枠として扱うということ。ルールとして流通当事者の共通ルールとしてはどうか」と提案の意図を話した。

◎医療上必要性の高い品目は基礎的医薬品、安定確保医薬品A、不採算品再算定品　背景に供給不安

医療上の必要性の高い品目としては、基礎的医薬品、安定確保医薬品A、不採算品再算定品をあげる。三村座長は、「基本的に医薬品はすべて必要性が高いが、セファゾリンの欠品問題、安定確保医薬品をめぐる問題、この３年間に起こった後発薬を中心とする非常に大きな供給不足、欠品問題があった。少しずつやっぱり事態の収拾を迅速にしていくために必要なことは何かということ」と説明。「流通段階をもう少し見える化しておく、動きがわかるようにしておく必要がある」と述べ、情報の精査・分析、共有のためにも、新たなカテゴリーの必要性を強調した。

三村座長は薬価制度の観点からも、「単品単価を（全品目で）目指していただくというスタンスは崩さない」との考えを示したうえで、医療上必要性の高い品目について“優先的に”単品単価取引を推進する必要性を指摘。「（単品単価を推進する）方法論として、全体の取引数や価格設定を透明化するための一つ一つのステップ」に位置付けることを提案した。

◎卸連・折本理事「装荷取引是正の第一ステップ」　総価取引に慣れた「大反省」も

森昌平構成員（日本薬剤師会副会長）は、単品単価推進を主張する立場から、「別枠をいいとは言いづらい」と断ったうえで、「医薬品の価値に見合ったものを把握するという意味では、単品単価を進める。ただ、一足飛びにいかないので、別枠を設けるというのであれば、それを確認したうえで議論をすべきだと思っている」と述べた。

折本健次構成員（日本医薬品卸売業連合会理事）は、「まさに我々卸側が総価取引交渉に慣れ親しんでいる中で、“除外”という言葉を使っていたんだという大反省をしている」と述べた。そのうえで、別枠とする品目について、「診療側の先生方のご意見が一番だろうと思うが、分類をお決めいただき、ガイドラインに載せることはまずもって第一ステップではないか」と述べた。

眞鍋雅信構成員（日本医薬品卸売業連合会理事）は、「今後医薬品の総価取引の中で、価格競争が過度に行われた場合、医療上不可欠と言われているような安定確保医薬品や、保険上医療上必要性の高い基礎的医薬品、法律上安定供給が求められている血液製剤の欠品問題が起きることに憂慮している」と述べた。そのうえで、「医療上必要性の高いものだけでも、別枠にして総価交渉と切り離して単品単価交渉していく」ことを流通当事者全員の合意として、まずはガイドラインに記載することを求めた。

◎不採算品再算定　購入側も「何が不採算かわかるように」　NPhA・原構成員

医療上必要性の高い品目に不採算品再算定品も含まれるが、原靖明構成員（日本保険薬局協会医薬品流通・ＯＴＣ検討委員会副委員長）は、「不採算品再算定品については、何が不採算品かわからない現状もある。ある程度分かるようにしていただけると、不採算品だけは別の見え方をしてしまう」と指摘した。

◎製薬協・森構成員「革新的新薬や新創品の単品単価推進も」

森英寿構成員（日本製薬工業協会流通適正化委員会委員長）は、「有識者検討会の中で、安定供給の問題と合わせてドラッグ・ロスの話があった。この場は、ドラッグ・ロスの話を議論する場ではないということは十分理解しているが、やはり製薬協としては、革新的新薬、新薬創出（等加算品目）のところは、別枠が単品単価を意味するのであれば、１個１個の価値が反映された交渉をお願いしたいと強く申し上げたい」と述べた。また、「新創品と特許品については除外交渉、単品単価交渉が進められている。この歩みをさらに進めるというところも踏まえて検討いただけないか」などと主張した。

このほか、“別枠”という言葉をめぐっては、「従来の総価交渉はそのままで、これだけ別枠だという誤解を生む可能性もある。表現は気を付けた方がいいのでは」（原構成員）などの指摘も上がっており、文言を含めて検討が進められる方針。