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国際医療福祉大・鈴木学長 アルツハイマー病治療薬の薬価「安物買いの銭失いは避けたい」正当な評価を

公開日時 2023/09/27 04:52
「第6回ヘルスケア・イノベーションフォーラム」(日本イーライリリー、PhRMA共催)が9月26日、東京都内で開催された。国際医療福祉大の鈴木康裕学長(前・厚労省医務技監)は前日25日に薬事承認されたアルツハイマー病治療薬・レケンビ点滴静注(レカネマブ)の薬価算定について、「安物買いの銭失いになることは避けたい。正当な値付けがやっぱり必要だ」と強調した。また、医療だけでなく、介護やインフォーマルケアに要するコストも含めて(薬価を)評価すべきと指摘。フォーラム後の記者会見で、“値付け”の議論に際しては、中医協以外の社会保障審議会や内閣全体で議論する必要性にも言及した。一方、イーライリリー・アンド・カンパニーのデイビッド・A・リックス会長兼最高経営責任者も登壇し、「ファーストウィナー(最初の勝者)が十分に報酬(薬価)を受けられるよう理解を求める」と日本政府に呼び掛けた。

◎第6回はアルツハイマー病の革新的な診断と治療の推進をテーマに開催

今回のフォーラムは、「アルツハイマー病の革新的な診断と治療の推進による認知症と共生する社会の実現に向けた環境整備」をテーマにディスカッションを行った。

◎アルツハイマー病治療薬の薬価 社会保障のサステナビリティを高める可能性もある

「安物買いの銭失いになることは避けたい」-。鈴木学長は、新規アルツハイマー病治療薬の「値付け」に言及した。発言した理由について鈴木学長は、「レート・オブ・リターン(rate of return)がちゃんと保証されないと、民間企業として投資できなくなる」と指摘。続けて、「医療だけでなく、介護やインフォーマルな家庭のケアコストも含めて、新規医薬品を(薬価で)評価して世に出していくことが社会保障のサステナビリティを高めるという可能性もある」と強調した。

一方で、「どんどん生産年齢人口が減って、税金や保険料を払う人が減り、医療や介護の財政がより厳しくなれば社会保障本体の屋台骨が揺らいでしまう。それでは元も子もない」と指摘。「どういう形で投資を呼び込み、かつ健康保険のサステナビリティを保証できるかについてのバランスを最適に保つということが一番大切だ」と述べた。鈴木学長の発言は、「医療モデル」と「生活社会モデル」という両輪からのアプローチを求めるもので、アルツハイマー病を早期に診断し、早期からケアできるシステムを社会全体で整える必要性を説いたものだ。鈴木学長は、「恐らく世界のどの国もまだ成功していないし、解決策を導き出していない。最も高齢化が進み、介護保険制度のあるこの日本で、その解決策の一端を見出すことができればすごく良いと思う」との見解も披露した。

◎「米国で流通している価格より高くなることは多分ない」 鈴木学長

鈴木学長はフォーラム後の記者会見で、新規アルツハイマー治療薬の薬価算定について、「一般的に言えるのは、米国で流通している価格より高くなることは多分ない」と発言。今後の議論の方向性について、「中医協の中だけでやっていると、医療としてのコストセービングの関連でしか論じられない」と述べ、「もうちょっと広い枠で言えば、社会保障審議会などで医療のコストに加えて、介護とか家庭のコストや効果などを論ずる。必要あれば内閣全体でやる必要があると思う」とも述べた。

一方、鈴木学長が提唱している「Value Based」の考え方については、「認知症について言えば、アミロイドの沈着もしくはタンパクの沈着というのが一定の客観性を持って数値的に現れるかどうかっていうところがわかれ目になる。多分、一定程度測定できるようになっているので、不可能ではないと思う」と述べた。ただ、「もうちょっとサイエンティフィックなエビデンスが必要かなという気がする」とも語った。

◎“ファーストウィナー”(最初の勝者)への評価を 新薬が社会的な負担を減少させる

産業側からパネルディスカッションに登壇したイーライリリーのデイビッド・A・リックス会長兼最高経営責任者は、「イノベーションに関して“ファーストウィナー”(最初の勝者)に報酬(薬価)を与えられるということであれば、より多くの参入者が得られる。長期的な利益を考えたときに、超高齢社会の中ではプラス面があるというふうに思っている」と強調した。また、新規アルツハイマー治療薬を市場導入する意義について、「日常生活や仕事の従事など、患者が日常生活を満喫できる。介護側の負担も減るなど、医薬品が活用されることによる社会的な負担が減少する」と見通した。

◎リックス会長 鑑別診断など治療環境「日本がそのようなシステムを実現する第1の国になる」

さらにリックス会長はフォーラム後の記者会見で、鑑別診断などアルツハイマー治療の周辺環境が整うことで、「日本がそのようなシステムを実現する第1の国なる可能性がある」と指摘。「イノベーションと同時に、いずれジェネリック薬が発売されるときにはより安価な治療選択肢になる可能性があるので、“最初の挑戦”に受けて立った企業への報酬をお願いしたいと思っている」と強調した。


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