日本医薬品卸売業連合会の宮田浩美会長は９月20日中医協薬価専門部会で、「薬価20円未満の医薬品と安定確保すべき医薬品の薬価引上げを検討していただきたい」と訴えた。限定出荷品目の９割近くが薬価20円未満に集中しており、必要な薬が患者に届かないリスクの増加に警鐘を鳴らした。これに対し、診療側から理解を示す声はあったものの、「総価交渉など流通上の課題もあると思う」（診療側・森昌平委員日本薬剤師会副会長）、「なぜそのような価格水準で妥結をしているのか」（支払側の松本真人委員・健康保険組合連合会理事）と診療・支払各側から流通上の課題を指摘する声があがった。

◎出荷調整品目の86.2％が薬価20円未満に集中　安定供給へのリスクに懸念

卸連は、医療用医薬品市場において薬価20円未満品の品目数(包装単位別)が49%を占め、金額(薬価ベース)では10%を占めると説明。出荷調整となっている品目の薬価帯を見えると、「10円未満」が59.9％と最も多く、10円以上20円未満も26.3%で、限定出荷の品目の86.2%が薬価20円未満に集中しているとした。宮田会長は、「安定確保すべき医薬品では、納入価格を上回る流通コストは生じており、多くが流通不採算品となっている。このため、今後の供給に支障を生じるリスクを常に抱えているという状況だ」として、薬価20円未満の医薬品の薬価引上げを求めた。

毎年薬価改定の導入で、薬価が加速度的に下落するなかで、「薬価20円未満の薬剤の中で、本当に必要な薬が患者さんに届かなくなってしまう、こんなリスクが大きくなっているのではないかということを前提に、この20円未満の薬剤について薬価の引き上げを検討していただきたい。薬価を上げることによって、メーカーも生産性を改善し、限定出荷の製品についても早期に終息が期待できるものもあるのではないかと考えている」と訴えた。

◎診療側・森委員「総価交渉など流通上の課題も」

これに対し、診療側の森委員は、「流通コストを考えれば理解はさせていただく」と述べたうえで、「ただ、この問題に関しては総価交渉など流通上の課題もあると思う。医薬品卸の重要な機能の一つとして価格形成機能がある。総価交渉などの流通の課題もあり、卸としてしっかりと取り組んでいただきたい」と述べた。

支払側の松本委員は、「なぜ、そのような価格水準で妥結をしているのか。原則は個別製品ごとの価格交渉だと思いますけども、他の品目を含めた全体で損益を見ているから妥結したとか、あるいは取引製品全体でコストの吸収を図ってないかとか、もう少しそういう点を教えていただきたい」と指摘した。

これに対し、卸連の宮田会長は、「まさに厳しい環境の中でバイイングパワーとか、あるいはコンサルの価格代行業者だとか、いろいろ中で、各卸企業が自社の中の様々な経営判断あるいは努力によって全体の収益を確保していこうということで、コスト圧縮も含めて全体で利益を少なからず利益を出しているというのが今の状況であるということで、ぜひその点はご理解いただければと思う」と述べた。23年度薬価改定で約1100品目に不採算品再算定が臨時・特例的に適用されたことにも触れ、「今まさに価格交渉しているところで、経過的にこういった場で議論させていただければありがたい」と応じた。

◎調整幅「川上、川中、川下、全体的なエビデンスを持って議論を」

このほか、調整幅についての質問も出たが、「医薬品の継続的な安定供給によって、調整幅を欠くことはなく、この重要性はさらに増していることをぜひご理解していただいて、データについては川中の卸だけのデータを抜いて調整幅はどうしましょうというような議論ではなく、川上、川中、川下、全体的なエビデンスを持って調整幅の議論をしていただければ」、「流改懇も含めて来年にかけて流通改善ガイドラインの実効性を高めていこうというような取り組み、あるいは薬価差の偏在に対しての議論もこれから進んでいく中で、もう少し具体的に意見を申し上げて皆さんとご議論していただければ」と述べるにとどめた。