大鵬薬品のFGFR阻害薬・リトゴビ錠など6製品承認へ 薬食審・第二部会で了承
公開日時 2023/05/30 04:50
厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会は5月29日、大鵬薬品のFGFR阻害薬・リトゴビ錠(一般名:フチバチニブ)など6製品を承認することを了承した。リトゴビの効能・効果は「がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がん」。胆道がん適応を持つFGFR阻害薬として、ペマジール錠に続く2剤目となる。6製品は6月中に正式承認されるとみられる。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽オンキャスパー点滴静注用3750(ペグアスパルガーゼ、日本セルヴィエ):「急性リンパ性白血病、悪性リンパ腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議からの開発要請品目。
大腸菌由来L-アスパラギナーゼ(L-ASP)をポリエチレングリコールで化学修飾(PEG化)した抗悪性腫瘍酵素製剤。PEG化によって半減期が延長し、長期間にわたり薬の効果が期待できる血中アスパラギナーゼ活性を維持する。L-ASPは、血中のL-アスパラギンをアスパラギン酸とアンモニアに分解し、L-アスパラギンを枯渇させることにより、増殖においてL-アスパラギンを必須とする急性リンパ性白血病(ALL)などの悪性腫瘍に対して増殖抑制作用を示すと考えられている。
同剤は、他の抗悪性腫瘍剤と併用して、2週間間隔で用いる。なお、21歳以下の患者は体表面積0.6㎡以上の場合は1回2500国際単位/㎡(体表面積)を、体表面積0.6㎡未満の場合は1回82.5国際単位/kg(体重)を投与する。22歳以上の患者は1回2000国際単位/㎡(体表面積)を投与する。
▽リトゴビ錠(フチバチニブ、大鵬薬品):「がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
自社創製のFGFR1、2、3、4を不可逆的かつ選択的に阻害する経口の共有結合型FGFR阻害薬。FGFR1-4のATP結合部位に結合しFGFRを介するシグナル伝達経路を阻害することで、FGFR1-4遺伝子異常を持つ腫瘍細胞の増殖を抑制し、細胞死を誘導する。
用法・用量は、「通常、成人には、フチバチニブとして1日1回20mgを空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する」。大鵬薬品は同剤の22年7月の承認申請時に、FGFR2遺伝子の融合またはその他の再構成を検出するためのコンパニオン診断機能を有する医療機器をシスメックス社と共同開発していることを明らかにしている。
FGFR阻害薬としてはインサイト・バイオサイエンシズ・ジャパンの胆道がんなどを対象疾患とするペマジール錠に続く2剤目となる。
▽キイトルーダ点滴静注100mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)、MSD):「再発又は難治性の原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は10年。希少疾病用医薬品。
抗PD-1抗体。活性化T細胞上のPD-1に結合することにより、がん細胞上のPD-L1及びPD-L2との結合を阻害することで、がん細胞による活性化T細胞の抑制を阻害する。抑制されていたT細胞が再度がん抗原を認識した際に、再活性化され、がん細胞を排除できるようになる。
原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBCL)は、胸腺B細胞由来の進行が速い悪性リンパ腫で、非ホジキンリンパ腫の2~4%、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の最大10%を占める。30代に発生することが多く、診断時の年齢の中央値は35歳。化学療法による一次治療後も治癒しないPMBCL患者の割合は10~20%。再発患者には、自家造血幹細胞移植が有効な場合があるが、再発・難治例の転帰は不良であると報告されている。
▽バクニュバンス水性懸濁性注シリンジ(沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン(無毒性変異ジフテリア毒素結合体)、MSD):「肺炎球菌による疾患に罹患するリスクが高いと考えられる者における肺炎球菌(血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、22F、23F及び33F)による感染症の予防及び小児における肺炎球菌(同)による侵襲性感染症の予防」を効能・効果とする新効能医薬品及び小児用量を追加する新用量医薬品。再審査期間は残余期間(2030年9月25日まで)。
15種類の肺炎球菌血清型に対応したワクチン。今回は小児適応の追加と、肺炎球菌による疾患に罹患するリスクが高いと考えられる18歳未満の者に使用を拡大するものとなる。現在は高齢者又は肺炎球菌による疾患に罹患するリスクが高いと考えられる成人を投与対象としている。
▽デュピクセント皮下注300mgシリンジ、同ペン(デュピルマブ(遺伝子組換え))、サノフィ):「既存治療で効果不十分な結節性痒疹」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は4年。
ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体。IL-4とIL-13は2型炎症において中心的な役割を果たすタンパク質で、2型炎症はアトピー性皮膚炎、気管支喘息、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎と同様に、結節性痒疹にも関与しているとされる。
結節性痒疹に対する用法・用量は、「通常、成人にはデュピルマブとして初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与する」で、アトピ性皮膚炎に対する用法・用量と同じ。
結節性痒疹の患者は、強く持続するそう痒を経験し、肥厚した皮膚病変(結節)を伴う。患者は、焼けるようで、針で刺されるような、あるいはピリピリするような感覚の痛みを伴う皮膚症状を呈する。この疾患がQOLに及ぼす影響は、強いかゆみを伴う炎症性皮膚疾患のなかでもとりわけ大きいことが知られている。現在、治療には高力価のステロイド外用薬を処方されることもあるが、長期的な予後改善についての根拠は乏しいのが実態となっている。
▽リットフーロカプセル50mg(リトレシチニブトシル酸塩、ファイザー):「円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
JAK3/TECファミリーキナーゼ阻害薬。ATP(アデノシン三リン酸)結合部位の遮断により、JAK3および5種類のTECファミリーキナーゼを不可逆的に阻害する共有結合形成型の経口投与可能な低分子製剤。円形脱毛症の病態に関与するIL-15、IL-21の共通γ鎖受容体のシグナル伝達をJAK3阻害により抑制し、CD8陽性T細胞およびNK細胞の細胞溶解能をTECファミリーキナーゼ阻害により抑制することから、治療効果が期待できると考えられている。
用法・用量は、「通常、成人及び12歳以上の小児には、リトレシチニブとして50mgを1日1回経口投与する」。なお、円形脱毛症に対して承認されているJAK阻害薬にはオルミエント錠があり、リットフーロは2剤目となる。
【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽ハイゼントラ20%皮下注1g/5mL、同20%皮下注2g/10mL、同20%皮下注4g/20mL(pH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注射)、CSLベーリング):「無又は低ガンマグロブリン血症」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間なし。
血漿分画製剤。現在は週1回投与で用いているが、今回、2週に1回の投与を追加する。
▽シングリックス筋注用(乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(チャイニーズハムスター卵巣細胞由来):グラクソ・スミスクライン):「帯状疱疹の予防」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間は残余期間(2026年3月22日まで)。
帯状疱疹予防ワクチンとして現在、50歳以上の成人を対象としている。今回、帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上にも使えるようにするもので、用法・用量は「0.5mLを2回、通常、1~2カ月の間隔をおいて、筋肉内に接種する」となる。
▽アディノベイト静注用キット250、同500、同1000、同1500、同2000、同3000(ルリオクトコグ アルファ ペゴル(遺伝子組換え)、武田薬品):「血液凝固第VIII因子欠乏患者における出血傾向の抑制」を効能・効果とする新用量医薬品。再審査期間は残余期間(2024年3月27日まで)。
ペグ化技術により作用時間を延長した半減期延長型の血友病A治療薬。
現在の定期補充療法の用法・用量は、週2回投与で使用し、患者の状態に応じて増量できる内容となっている。これに対し今回、成人及び12歳以上の小児について、週2回投与で用いるものの、「患者の状態に応じて、1回体重1kg当たり40~50国際単位を2日間隔、1回体重1kg当たり40~80国際単位を3~7日間隔で投与できる。ただし投与間隔を4~7日間隔に延長する場合は一定期間出血がみられていないことを確認のうえで、5日間隔投与まで、さらに7日間隔投与まで段階的に延長すること」に変更する。
12歳未満の小児も週2回投与で用いるものの、「患者の状態に応じて、1回体重1kg当たり40~60国際単位を2日間隔、1回体重1kg当たり40~80国際単位を3~4日間隔で投与できる。ただし、投与間隔を4日間隔に延長する場合は、一定期間出血が認められないことを確認のうえで延長すること」に変更する。
【訂正】アディノベイトの用法・用量追加について記載に誤りがありました。下線部を追記しました。(5月31日10時15分)