厚労省 有識者検討会に報告書骨子案 後発品企業・品目の統合を推進 産業のあるべき姿で会議体新設
公開日時 2023/04/28 06:32
厚労省は4月27日、「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」は骨子案を提示した。骨子案では、後発品産業・企業のあるべき姿として、「品質が確保された医薬品について、将来に渡って安定的に供給し続けること」と明記。いまなお続く供給不安の要因の一つに、「少量多品目」のビジネスモデルがあると指摘し、「少量多品目構造を解消するために企業や品目の統合を推進する」とした。あわせて、少量生産を行う企業の参入抑制を行うことで、企業や品目数の適正化を進める方向性を示した。共同開発のあり方などにも問題意識を示し、「後発品産業のあるべき姿やその実現のための具体策」を検討するための会議体を新設し、国として積極的に舵取りを行う姿勢を鮮明にした。
報告書の骨子案では、「供給不安」を課題にあげ、「供給不安の発生・長期化は、主に後発品市場で生じており、その背景・原因には、後発品の制度特性やその産業構造が大きく影響」とした。
◎少量多品目「結果的に供給不安が長期化する一因」
特に、少量多品目生産のビジネスモデルは、「結果的に現下の供給不安が長期化する一因」と指摘した。「同一ラインでの少量多品目生産により製造余力がない状況の中で、緊急増産等の柔軟な対応も困難」と説明。さらに、「非効率な少量多品目生産にガバナンス上の問題が重なり、製造工程の管理上の不備や医薬品のコンタミネーションによる品質不良が発生。
これも供給不安の大きな要因」とした。
少量多品目となった原因としては、低収益の品目を上市直後の品目による利益で補填し、それが続く「悪循環」があると指摘。共同開発や医薬品製造の委受託が2005年に可能になったことで、市場参入障壁が低下し、多数の企業が参入し、「過度な競争や流通に関する課題も相まって、少量多品目生産構造が発生」したと指摘した。
◎企業や品目の統合推進で適正化へ 企業情報可視化で薬価上の評価も
こうした課題への対策例として、「企業や品目の適正化・業界再編」の必要性を指摘。「少量多品目構造を解消するために企業や品目の統合を推進する」とした。このため、「品目統合に併せた製造ライン増設等の支援について検討」するほか、「一定の供給量の担保や、企業統合を推進する観点から、企業の製造能力等の企業情報の可視化を実施」を盛り込んだ。一方で、安定供給を担保できない企業の参入を抑制する必要性を指摘。「企業情報を踏まえた新規収載や改定時薬価の在り方を検討」し、安定供給を行う企業を評価する考えも盛り込んだ。また、こうした企業や品目数の適正化、業界再編、企業情報の可視化、共同開発のあり方の検討など具体策を検討するための会議体を新設することも提案した。
このほか、現行の薬価を下支えする仕組みには、最低薬価、不採算品再算定、基礎的医薬品があるが、「医療上の必要性が高い品目について、現行の薬価を下支えする仕組みの改善を検討。中長期的には、現行の薬価改定方式によらない新たな仕組みの構築も検討」とした。
また、後発品の供給不安問題に加え、原材料・原薬の海外からの調達問題など、国の経済安全保障にかかわる構造上の供給リスクへの対処として、「医薬品のサプライチェーンの強靱化が必要」と指摘。課題解決に向けて、供給情報を可視化する必要性を強調。「サプライチェーンの問題は、基本的に情報の不足、情報伝達の遅れ、それに伴うリードタイムが発生するという問題であり、これらを改善するため、行政がイニシアチブを取って、DXを推進すべき」とした。
井上光太郎構成員(東京工業大工学院長)は、「保護産業をある程度、自由競争の中にいきながら、かつ安定供給を確保、担保するという意味では、ビジョンを持った再編の環境整備をする。ただ、ダラダラするのではなく、ハードランディングにならないように、ある程度時限性を持ったものにしていくことだ」との見解を示した。
◎坂巻構成員 少量多品種「なぜ悪いのか」
少量多品種のビジネスモデルをめぐり、坂巻弘之構成員(神奈川県立保健福祉大大学院教授)は、「(少量多品種が)なぜ悪いのか。事務局にお尋ねするが、一つの会社が多品種を製造することは駄目なのか。イエスかノーかでお答えいただきたい」と強調。「製造工程が難しい、あるいは元々売れそうもない、市場規模の小さいジェネリック薬品は今後日本では開発しなくてよいのか、という問題意識につながる。何が問題なのか、(事務局に)説明いただきたい」と迫った。
◎香取構成員「製造の形、企業行動の形が実は安定供給につながっていないことが問題」
香取照幸構成員(兵庫県立大大学院社会科学研究科特任教授)は、「要は、この形(少量多品種)が安定供給につながっていないということが問題」との見解を表明。「後発品の安定供給という観点からすると、こういう製造の形、企業行動の形というのが、実は安定供給につながっていないってことが問題だとわかるように書いた方が良い。一般論として議論しているわけではなくて、我々が抱えている問題からどう考えるかということだ」と述べた。
◎安藤産情課長「少量多品目生産という実態が製造工程で非効率な状況を生み出す」
厚労省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の安藤公一課長は、「こと医薬品産業において、特に後発品の安定供給ということを考えたときに、少量多品目生産という実態が、製造工程において非効率な状況を生み出したり、製造工程自体が複雑になったりする。その管理の段階で様々な課題というものが生じてしまっているということがまさに問題ではないかという認識を持っている」と述べた。
厚労省の城克文医薬産業振興・医療情報審議官は、製品ごとに市場規模やニーズが異なるため、“少量”を定義づける難しさがあるとしたうえで、「ここで問題なのは、余裕もなく品質に影響が出るような製造の仕方をしてしまっていた現状がどうもあったということ」との見解を示した。