有識者検討会・遠藤座長 国主導の製薬・卸販売流通DB構築を提案 IQVIAデータの利用に慎重論も
公開日時 2023/04/05 07:51
厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の遠藤久夫座長(学習院大学経済学部教授)は4月4日の会合で、国が主導して製薬企業や医薬品卸の販売流通データを把握できる仕組みの構築を提案した。遠藤座長は、「これまで(有識者検討会に)提出された資料のほとんどが外資系の情報コンサルタント会社(IQVIA)が個々の製薬メーカーや医薬品卸から収集したデータを使って医療費を出している。マクロの医療費も含めてだ」と指摘。「国民医療費の4分の1近くを占めるものの議論をするときに、外国の民間企業が提供しているデータであることを考えると公平性とか利益相反で何か問題がないだろうか」と述べ、国主導のデータベース構築の必要性を強調した。
◎民間データ活用 信頼性に問題はないが「公平性とか利益相反で何か問題がないだろうか」
遠藤座長は、この日の議論の最後に「情報インフラの問題で一つご発言させていただきたい」と切り出した。「早い話が薬剤費の把握」と述べながら、「(包括化の進展により)実質的に医療保険の中でどのぐらい薬剤にお金が回っているか分からなくなってきているということで、海外のコンサルタントが提供しているデータを使ってやっている。医療費が伸びた、薬剤費が伸びていない、とかいうのもそのデータに基づいてやっているわけです」と指摘。続けて、「その信頼性そのものを問題にするわけではありませんけれども、国民医療費の4分の1近くを占めるものの議論をするときに、外国の民間企業が提供しているデータ、しかもこの企業の最大のクライアントは製薬業界です。ということを考えると公平性とか利益相反の問題で何か問題がないだろうか」との懸念を表明。「それで国家の政策を決めているというのはこの状態なわけです。私はこれを非常に不思議に思う」との認識を示した。
◎在庫状況や安定供給、価格・数量の把握も
また遠藤座長は、「正しいマクロの薬剤費を把握するということだけではなく、この有識者検討会の中で出てきたように、例えば在庫の状況を把握して安定供給の問題を把握するみたいなことも仕組みのやり方によってはできるはず」と述べ、メーカーや卸の販売流通データのデータベース化も視野に知れて価格と数量を把握する仕組みづくりの必要性を訴えた。
◎坂巻構成員「政策的な議論で国が独自のデータ持ってないというのは非常に問題」
これに対し、坂巻弘之構成員(神奈川県立保健福祉大学大学院教授)は、OECD加盟国の担当者へのアンケート調査を実施した経験から、「国によっては先ほどの外資系コンサルティング会社のデータを使っている国もある。あるいは国によっては遠藤座長が発言されたように、独自のデータベースを持っている国もある。ですからなかなかその海外との比較はできないっていうところの課題が残っている」と報告しながらも、「少なくとも日本において政策的に議論するときに国が独自のデータ持ってないっていうのは非常に問題ですので、ぜひとも実現する方向で、この有識者検討会の報告書にも入れていくべきだというふうに考える」と発言した。