外資製薬企業の2022年医療用医薬品売上高を集計し、上位16社をランキングした。コロナ禍にあってワクチンや経口治療薬を開発したファイザーを筆頭に業績を伸ばした企業が少なくないが、感染拡大の鎮静化や重症化率の低下等に伴い関連製品の需要減速が鮮明になってきた。今年は次の新薬獲得にいかに再投資し、さらなる成長につなげていくか、各社の経営のかじ取りから目が離せない1年になる。
■外資製薬企業 2022年医療用医薬品売上高ランキング
1 |
ファイザー(米) |
100,330 |
23 |
2 |
アッヴィ(米) |
58,054 |
3 |
3 |
ジョンソン&ジョンソン(米) |
52,563 |
2 |
4 |
メルク(米) |
52,005 |
22 |
5 |
ロシュ(スイス)* |
51,059 |
1 |
6 |
ノバルティス(スイス) |
50,545 |
-2 |
7 |
ブリストル・マイヤーズ(米) |
46,159 |
0 |
8 |
アストラゼネカ(英) |
44,351 |
19 |
9 |
サノフィ(仏)* |
39,813 |
14 |
10 |
グラクソ・スミスクライン(英)* |
36,362 |
19 |
11 |
イーライリリー(米) |
28,541 |
1 |
12 |
ギリアド・サイエンシズ(米) |
27,281 |
0 |
13 |
アムジェン(米) |
26,323 |
1 |
14 |
ノボ ノルディスク(デンマーク)* |
24,774 |
26 |
15 |
バイエル(独)* |
20,215 |
5 |
16 |
モデルナ(米) |
19,263 |
4 |
・医療用医薬品売上高上位16社を集計。
・1ユーロ=1.05ドル、1ポンド=1.24ドル、1CHF=1.05ドル、1DKK=0.14ドルで計算。
全4回にわたって上位各社の22年決算概況を紹介する。第1回目は、1位~4位のファイザー、アッヴィ、ジョンソン&ジョンソン(J&J)、メルクを取り上げる。
【1位 ファイザー】 売上1003億ドル 新型コロナのワクチンと治療薬で57%占める
ファイザーの総売上高(医療用医薬品売上高)は23%増(為替の影響を除くと30%増)の1003.30億ドルとなり、全体で1位だった。新型コロナワクチンのコミナティ(アライアンス売上含む)と経口新型コロナ治療薬パキロビッドの合計売上が567.39億ドルとなっており、全体の57%を占めている。純利益も43%増の313.72億ドルで1位だった。
コミナティ(アライアンス売上含む)は3%増の378.06億ドル、パキロビッドは249倍の189.33億ドルを売り上げた。これら新型コロナ関連2製品を除く売上高は為替の影響を除き2%増加した。抗凝固薬エリキュース(アライアンス売上含む)は9%増の64.80億ドル、肺炎球菌ワクチンのプレベナーファミリーは20%増の63.37億ドルと堅調だった一方で、乳がん治療薬イブランスは6%減の51.20億ドルだった。
米グローバル・ブラッド社を54億ドル、英バイオヘイブン社を116億ドル、米アリーナ社を67億ドルで買収するなど、積極的なM&Aにより製品ラインナップと開発パイプラインを強化する動きが目立った。
23年見込み コミナティ64%減収、パキロビッド58%減収と予想
23年の総売上高は670 億ドル~710億ドルを見込み、うちコミナティは64%減の135億ドル、パキロビッドは58%減の80億ドルを見込んでいる。新型コロナ関連2製品を除く売上高は、7~9%の増加を予想する。
【2位 アッヴィ】 売上580億ドル、3.3%増収 最主力品ヒュミラのBS影響が23年に本格化
アッヴィの総売上高(医療用医薬品売上高)は3.3%増(為替の影響を除くと5.1%増)の580.54億ドルとなり、全体で2位だった。純利益は2.5%増の118.36億ドルで6位だった。
最主力品の関節リウマチなどの治療薬ヒュミラは2.6%増の212.37億ドルとなり、総売上高の37%を占めている。既に欧州ではバイオ後続品(BS)が参入しており、米国外での売上は22.2%減の26.18億ドルとなったが、米国では7.4%増の186.19億ドルとなった。23年には米国でも複数のBSの参入が見込まれており、1月31日にアムジェン社が最初のBSを発売した。
乾癬やクローン病の治療薬スキリージは75.7%増の51.65億ドルとなり、ヒュミラに次ぐ売上に成長した。JAK阻害剤リンヴォックも52.8%増の25.22億ドルと大幅に伸長した。統合失調症・双極性障害治療薬「Vraylar(カリプラジン)」も17.9%増加し、20億ドル台に乗った。
一方、ヤンセン・バイオテック社とアッヴィ社の傘下にあるファーマサイクリックス社が共同開発・販売する慢性リンパ性白血病(CLL)などの治療薬イムブルビカは、アストラゼネカのカルケンスなどの競合品参入の影響で15.5%減の45.68億ドルとなった。
【3位 J&J】 医療用薬売上525億ドル ステラーラ、ダラザレックス、アーリーダなど好調
ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の総売上高は1.3%増(為替の影響を除くと6.1%増)の949.43億ドルとなり、このうち医療用医薬品の売上高は1.7%増(同6.7%増)の525.63億ドルで3位だった。また、純利益は14.1%減の179.41億ドルで3位だった。
医療用医薬品では、最主力の乾癬やクローン病などの治療薬ステラーラが6.5%増の97.23億ドル、それに続く多発性骨髄腫治療薬ダラザレックスが32.4%増の79.77億ドルと堅調だったほか、前立腺がん治療薬アーリーダが45.7%増、乾癬治療薬トレムフィアも25.4%増と好調だった。また、新型コロナワクチンが21.79億ドル(うち95%が米国外での売上)寄与した。
ザイティガは2ケタ減収 後発品の影響で
一方、CLLなどの治療薬イムブルビカは、競合品参入の影響で13.4%減の37.84億ドルとなった。レミケードとザイティガはBS、後発品の影響でそれぞれ26.6%減、22.9%減となった。
23年の総売上高は969億ドル~979億ドル(新型コロナワクチンを除く)を見込んでいる。
【4位 メルク】 最主力品キイトルーダは209億ドル、22%増収 医療用薬売上の40%占める
メルクの総売上高は22%増(為替の影響を除くと26%増)の592.83億ドルとなり、このうち医療用医薬品の売上高は22%増(同28%増)の520.05億ドルで4位だった。また、純利益は11%増の145.19億ドルで4位だった。
最主力品のがん免疫療法薬キイトルーダは22%増の209.37億ドルとなり、医療用医薬品売上高の40%を占めた。HPVワクチンのガーダシル/ガーダシル9は22%増の68.97億ドルを売り上げた。経口新型コロナ治療薬のラゲブリオは6.0倍の56.84億ドル寄与した。中国や欧州で後発品が参入したジャヌビア/ジャヌメットは15%減となった。
23年の総売上高は572億ドル~587億ドルを見込み、うちラゲブリオは10億ドルを見込んでいる。
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