MRのDTLインパクト 病院はコロナ前の約60%、開業医は約85%でほぼ固定
公開日時 2023/01/23 04:52
医薬品情報のチャネル別ディテール数(DTL数)は、新型コロナの感染対策と社会経済活動の両立に取り組んだ「第7波」(2022年7~9月)において、コロナ前と同水準にまで回復したことがわかった。最も新規感染者数が発生した8月のDTL数はコロナ前の102%。第7波終了の翌月となる10月は101%だった。ただ、チャネル別にみると、「MR」のDTL数は病院市場でコロナ前の約60%、開業医市場は約85%で数ポイント内の変動にとどまり、「インターネット」や「Web講演会」のDTL数の伸長が全体のDTL数を押し上げていた。コロナ禍を3年経験したことで、医師の医薬情報の収集方法や行動は新たな形で固定化しつつあるといえそうだ。
文末の「関連ファイル」に、全市場、病院(HP)市場、開業医(GP)市場について、情報チャネル別の印象に残ったDTL数(拡大推計)の月次推移の資料を掲載しました(会員のみダウンロードできます。無料トライアルはこちら)。
ミクス編集部は、ウィズコロナ時代の情報活動とそのインパクトを探るため、“医師の印象に残ったチャネル別の企業活動”を把握するインテージヘルスケアの調査データ「Impact Track」を用いて分析した。
同データは、医師約4000人(HP〈20床以上〉約2500人、GP〈19床以下〉約1500人)を対象に、印象に残った製品とその情報源(MR、講演会、Web講演会、インターネット)を集計し、拡大推計したもの。例えばMRからの情報が印象に残った場合、MRチャネルで1DTLとして積み上げ、拡大推計する。MRチャネルはオンライン面談も含む。ネットは自社サイトや外部の医師向けサイトなどとなる。
◎チャネル別DTLインパクト 「MR」はコロナ前の70%程度、「ネット」は約160~180%
コロナ前の20年1月(以下、「コロナ前」)の合計DTL数を100%として、各月のDTL数の増減率を見てみる。これまでは感染流行期を示す“波”の期間に全チャネル合計DTL数はコロナ前と比較して90%台前半まで落ち込み、“波”を過ぎた翌月から数%回復する動きを見せていた。それが、オミクロン株BA.5が猛威をふるった「第7波」の際は様相が異なっていた。
第7波の全チャネル合計のDTL数は、7月94%、8月102%、9月97%――だった。8月は、1日新規陽性者数が26万人を超えるなど第7波のピークを迎えた月だったが、それでも合計DTL数はコロナ前の水準を超えたことになる。第7波が過ぎた10月は101%で、同じくコロナ前の水準を超えていた。
チャネル別にDTLインパクトをみると、「MR」はコロナ前の水準の70%程度で毎月推移する一方、22年度に入ってから「ネット」は約160~180%、「Web講演会」はコロナ前の2倍が当たり前となっていた。「ネット」と「Web講演会」のDTLインパクトがそろって高水準のときに合計DTL数がコロナ前の水準を超える傾向も見てとれた。デジタルチャネルを使った医師への情報インプットと並行してMRがきめ細かく顧客ニーズに応えていくことが、処方機会の損失を最小化する点でより重要になりそうだ。
◎訪問件数大幅減 より質の高い情報活動でカバー
「MR」のDTLインパクトをHP(病院)/GP(開業医)市場別に見てみると、HP市場は60%前後、GP市場は85%前後で毎月推移し、ほぼ固定化してきた。22年1月からの「MR」のDTLインパクトを見てみると、HP市場は1月59%、2月56%、3月64%、4月57%、5月59%、6月63%、7月59%、8月62%、9月61%、10月62%――、GP市場は1月85%、2月80%、3月96%、4月85%、5月83%、6月93%、7月84%、8月86%、9月84%、10月85%――だった。
コロナ禍になって訪問規制が強化され、顧客とのエンゲージメントが思うようにいかないとの声はよく聞くところだ。しかし、あるエリア担当の外資系MRは本誌に、1日平均の訪問件数はコロナ前の半分ほどになってしまったものの、「大事な先生にはしっかりお会いして情報収集・情報提供できており、先生一人ひとりに対するインパクトは上がっている感触はある」と明かしてくれた。今回用いている分析ツールは“インパクトのあったDTL数”を測るもの。訪問件数の大幅減を、より質の高い情報活動でカバーしているMRの姿が今回の調査結果に反映されているともいえそうだ。