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中医協薬価専門部会 23年度薬価改定の骨子案了承 ドラッグ・ラグや物価高騰など臨時特例的な色彩強く

公開日時 2022/12/16 17:03
厚労省は12月16日の中医協薬価専門部会に、23年度薬価改定の骨子案を提示し、診療・支払各側が了承した。改定の対象範囲は「平均乖離率の0.625倍超(乖離率4.375%)」。医薬品の供給不安が顕在化するなかで、原材料費高騰を踏まえ、不採算品再算定を該当品目すべてに臨時・特例的に適用する。また、イノベーションに配慮し、新薬創出等加算について臨時的・特例的に従前の薬価と遜色ない水準とする。特に新薬創出等加算をめぐっては、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)が「極めて例外的な対応を行う以上、薬価上の問題を理由としたドラッグ・ラグやドラッグ・ロスが今後確実に解消されるよう先発医薬品メーカーには当事者としての対応を明らかにし、説明責任が果たされることを強く求めたい」と述べるなど、診療・支払各側から製薬業界の姿勢を問う意見が相次いだ。

同日午前に、松野内閣官房長官、鈴木財務相、加藤厚労相が23年度薬価改定について、「国民負担軽減の観点から、平均乖離率7.0%の0.625倍(乖離率4.375%)を超える品目」とすることなどに3大臣合意したことを踏まえ、急遽中医協を開催した。

◎改定対象は0.625倍(乖離率4.375%)超で全品目の69%

改定の対象範囲については、3大臣合意を踏まえ、平均乖離率7.0%の0.625倍(乖離率4.375%)に該当する全品目の69%に当たる1万3400品目を対象とする。前回の21年度改定で適用された「新型コロナウイルス感染症特例(0.8%)」のような、薬価の一律の削減幅の緩和は行わない。改定ルールは前回と同様に、基礎的医薬品、最低薬価、新薬創出・適応外薬解消等促進加算(加算のみ)、後発品等の価格帯集約を実施。あわせて、不採算品再算定の実施に加え、新薬創出等加算で、現行薬価との価格差の相当程度を特例的に加算し、「従前の薬価と遜色ない水準とする」特例的な適用を実施する。これにより、薬価が引きあがる品目は全体の6%程度、薬価が維持される品目は48%(約9300品目)となる。新薬創出等加算が適用されている600品目のうち改定対象とならず、価格が維持される品目が450品目、従前の薬価と変わらない水準となるのが150品目となる。

◎不採算品再算定 1100品目に特例的に適用 「成分規格同一の類似薬すべてが該当」の制限設けず

具体的には、不採算品再算定については、物価高騰や為替変動の影響で不採算となっている医薬品1100品目(115社)を対象に、不採算品再算定を実施し、薬価の引き上げを行う。不採算品再算定は、「成分規格が同一の類似薬の全てが該当する場合に限る」との制限を設けているが、特例的に制限を課さない。一方で、不採算品再算定の特例を実施した医薬品について、安定供給を製薬企業に求めるとともに、そのフォローアップを実施する。

◎新薬創出等加算 特例的な加算で「従前の薬価と遜色ない水準」に

新薬創出等加算については、新薬創出等加算の企業要件は、革新的新薬の開発やドラッグ・ラグ解消の実績などをポイント制で評価。合計ポイントの上位25%(区分Ⅰ)が薬価を維持できる企業指標が導入されている。逆に言えば、それ以外の場合は薬価を維持できない。このため、今回は新薬創出等加算の適用後、現行薬価との価格差の相当程度を特例的に加算し、従前の薬価と遜色ない水準とすることとした。特例的な加算については、通常の加算と同様に取り扱い、その累積額を後発品の収載後等の薬価改定の際には控除する。

◎収載後の外国平均価格調整は実施へ

あわせて、前回実施されなかった収載後の外国平均価格調整については、今回の改定においても実施するとした。厚労省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官は、「参照することとしている外国価格、これは外国における実勢価と一定程度で連動するものでありますし、新薬に関しましては、為替変動の影響等を踏まえまして、先ほど新薬創出等加算の特例的対応を実施するという観点もございますので、今回の改定において実施可能として判断した」と説明した。

◎診療側・長島委員 ドラッグ・ロス解消で先発医薬品メーカーに「説明責任」求める

新薬創出等加算の特例的な適用をめぐっては、診療側の長島委員は、「本来中間年改定で対応すべきものではないと考えている。ただ、ドラッグ・ラグへの懸念や物価高騰等により影響による懸念の声も鑑みた上での極めて例外的な対応であると受け止めている」と述べた。そのうえで、「極めて例外的な対応を行う以上、薬価上の問題を理由としたドラッグ・ラグやドラッグ・ロスが今後確実に解消されるよう先発医薬品メーカーには当事者としての対応を明らかにし、説明責任が果たされることを強く求めたい」と強調した。

◎支払側・松本委員 実勢価格が猶予された部分「適切かつ公平なタイミングで返還を」

一方、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、特例的なルールの実施について、「(毎年改定のルール導入を求めた)健保連への主張とはかけ離れた内容であり、残念」とした。そのうえで、「今回限りの措置」として了承した。「研究開発の妥当性について研究開発の努力に応じて評価するという企業要件の趣旨を踏まえ、少なくとも3つの区分、階段は必要だと考えている」と表明。「今回の措置により引き上げも含めて、実勢価格が猶予された部分につきましては、適切かつ公平なタイミングで返還をぜひお願いしたい」と述べた。

◎不採算品再算定の特例「やむを得ない部分も」 同時にビジネスモデル再構築を 長島委員 

不採算品再算定の特例的な実施をめぐっては、診療側の長島委員が特例的対応は医療現場での厳しい状況を踏まえ、「やむを得ない部分があるのではないか」と認めたうえで、「今回の問題は企業の不適切な対応をきっかけとすれば、安定供給が可能となる産業構造やビジネスモデルに再構築していく作業を並行して実施していくことが必須の前提になると考えている」と指摘した。また、「今回講じる薬価上の対応により、どのように問題が改善されるのか。現場に説明できるよう、状況の監視が行えて、確実に患者さんへの不利益にならないような方策を明確にすることが必要だ」と述べた。「薬価の引き上げがなされたからといって、安定供給に責任を持てない企業が参入してくるようなことがあっては本末転倒でありますので、そのあたりは国および製薬業界としても、供給の安定化に向けて責任ある対応をしていただくよう強く求めたい」と続けた。

支払側の松本委員は、「同一成分、同一規格の全てが不採算というルールを外すことはやむを得ないが、原価の妥当性については厳しく精査すべき」と指摘した。

◎診療・支払各側とも「医薬品産業の構造改革」前提の評価のあり方で次期24年度改定に早くも照準 

事務局案は、骨子案に「近年の革新的新薬にかかわる日本への導入の状況や後発医薬品を中心とした安定供給上の課題を踏まえ、これまでの薬価制度改革の検証も行いつつ、イノベーションの適切な評価の在り方、医薬品産業の構造改革を前提とした医療上の必要性が高い医薬品の安定供給を維持するための評価のあり方」を24年度改定に向けて検討することも盛り込むことを提案した。

診療側の長島委員は、「今回の臨時的、特例的措置によって、安定供給やイノベーション推進の課題が解決するものではない」と指摘した。

支払側の松本委員は、イノベーション評価や安定供給の重要性を認めたうえで、「薬価制度で対応する部分はどこなのかを慎重に見極める必要がある。特に安定供給については、多くが後発品メーカーの法令違反を発端としており、業界の体質や産業構造そのものを改善する必要があるということは強く指摘させていただく」と述べた。支払側の安藤伸樹委員(全国健康保険協会理事長)は、「後発医薬品企業のビジネスビジネスモデル上の課題や、新薬と後発品など取引条件や商品特性が異なる製品を全て同じ薬価改定ルールで扱うことの是非など、本質的な問題を議論し、医薬品の安定供給を巡る問題の根本的な解決に向けた議論を進めていければ」と述べた。

◎診療側委員 物価高騰や安定供給上の課題「日常診療に大変大きな負担を与えている」

改定の対象範囲については、診療側の長島委員は、「医療現場では物価高騰や医薬品の安定供給上の課題が日常診療に大変大きな負担を与えている。このような状況下において、前回の中間年薬価改定と同様の改定対象の範囲とされたことは非常に厳しい結果であると受け止めており、現在の安定供給に支障がある中で、医療現場に与える影響がさらに大きくなることを強く懸念している」と述べた。診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会理事)は、「改定の対象範囲が0.625倍を超える範囲となり、大変大きくなってしまったということは大変に残念」、」「改定前に購入した備蓄医薬品の資産価値が薬価改定を境に減少してしまい、経営面に関する影響は甚大だ」などと述べた。

一方、支払側の松本委員は、「以前から申し上げている0.625倍というベースは守られたので、健保連としては、国民負担の抑制という最大の目的は果たされるものと考えている」と述べた。

なお、同日の中医協で薬価専門委員の発言はなかった。
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