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財政審建議 23年度薬価改定は「対象品目を広げ、完全実施を実現」と明記 コロナ補助金等の廃止検討を

公開日時 2022/11/30 04:52
財務省の財政制度等審議会財政制度等分科会は11月29日、「令和5年度予算の編成等に関する建議」を取りまとめ、鈴木俊一財務相に手渡した。2023年度薬価改定については、「物価高における国民の負担軽減の観点から、対象品目を広げ、完全実施を実現すべき」と主張した。コロナ禍で発熱外来やワクチン接種などに対して設けられている補助金や診療報酬の特例的な措置については、「個々の項目ごとに早急に縮小、廃止を検討すべき」とした。このほか、かかりつけ医機能については改めて「かかりつけ医機能を有する医療機関の機能を明確化、法制化し、機能発揮を促す必要がある」とした。

◎米国も物価上昇に伴う国民負担軽減で薬価引下げを決断 日本も薬価改定の完全実施を


薬価改定については、毎年薬価改定の初年度となった21年度改定について、「平均乖離率8%の0.625倍(乖離率5%)を超える、価格乖離の大きな品目に限定して対象とすることとされ、結果として、改定対象品目数が約7割にとどまった」と説明。結果として、「21年度においても、医薬品市場は拡大しているとの指摘もある」と説明。物価高騰が国民生活に影響を及ぼすなかで、「アメリカでも、従来、製薬会社が自由に価格設定可能とされてきたが、物価上昇の中で国民負担を軽減するため、特例的に医療保険(メディケア)の薬価を引き下げる法案を成立させた」ことも引き合いに、算定ルールを含めた薬価改定の完全実施を求めた。

◎「実勢価改定と連動しない算定ルールについても全て適用すべき」


21年度改定では、既収載品目の算定ルールのう、ち、実勢価改定と連動してその影響が補正されるものを適用し、それ以外のものは適用されなかった。財政審は、「毎年薬価改定が行われるなかで、2年に1度しか適用されないルールがあるのは説明が困難」と指摘。「不採算品再算定の適用により不採算品への対応が考えられるほか、新薬創出・適用外薬解消等促進加算の控除などについては、収載のタイミングによる不公平も生じる」として、「実勢価改定と連動しない算定ルールについても全て適用すべき」とした。

このほか、調整幅については、「価格の高低を問わず全医薬品について一律に2%という水
準が約20年間固定されている。水準の合理的な根拠の説明もないままに、薬価改定の効果を目減りさせ、保険料負担・患者負担・公費負担を嵩かさ上げしていることは妥当ではない」と問題意識を表明。「可及的速やかに、廃止を含めて制度の在り方を見直し、少なくとも段階的縮小を実現すべき」と主張した。

◎「薬剤費総額は、経済成長を上回って増加傾向が続いている」と指摘

薬剤費については、薬剤使用量や新規医薬品の保険収載により、「薬剤費総額は、経済成長を上回って増加傾向が続いている」と指摘した。高齢化の進展による薬剤費の増加に加え、「薬剤費には計上されていない部分で、新型コロナのためにワクチンを含む医薬品の購入に対し、多額の予算措置がなされている」と指摘した。なお、新型コロナ治療薬・ワクチンには20年度に8474億円、21年度に1兆円の予算が計上されている。

◎新型コロナワクチンの開発補助金「研究開発能力があるか十分チェックすべき」

新型コロナワクチンについては国産ワクチンの開発支援として、ワクチン生産体制等緊急整備基金5139億円を計上し、5社の支援を行ったが、1社は開発を中止し、4社は開発には至っていないと指摘。「ワクチン開発については、多額の費用と一定の期間が必要なことから国内市場だけで採算をとることは難しい一方、グローバル市場は欧米4~5社の寡占状況となっている」と指摘。内資系企業がグローバル企業と比べて売上で1桁以上の差があるなど企業規模が異なるなかで、「ワクチン開発の支援に当たっては、各企業の人材、規模、海外企業との連携も含め、研究開発能力があるか十分チェックすべき」とした。医療分野の研究会派について一部支援については、支援の内容が重複しているとして、「今後、役割を整理した上で、個々に必要性を判断すべき」とも主張した。

◎「ウィズコロナへの移行と全世代型への制度改革」を副題に

建議は、「“将来世代への責任”を果たす」ことの重要性を強調している。社会保障については、「ウィズコロナへの移行と全世代型への制度改革」の副題を付けた。

◎新型コロナ 主なものだけで17兆円程度の国費で支援 「支出が適切なのか十分検証」

新型コロナの死亡率の低下傾向が示されているなかで、「新型コロナについて、これまで医療提供体制のために主なものだけで17兆円程度の国費による支援が措置されてきた。まずは、新型コロナの性質の変化に照らして、足もとにおいて、これだけの規模の支出が目的に比して必要なのか、適切なのか、十分な検証が必要」と指摘した。コロナ禍で、病床確保料や発熱外来に対する診療報酬上の特例措置、ワクチン接種費用・接種体制確保などの特例をあげた。

医療費がコロナ禍前の水準に回復しているとしたうえで、「一定の仮定を置いて大胆に試算すれば、22年度については、足もとの実績から推計した医療費の見込みに、21年度の実績から推計した補助金収入を足した計数は49 兆円程度と見込まれ、医療機関の経営は近年になく好調となることが窺える」と指摘。「新型コロナの性質が変化しているなかで、すでにコロナ禍前の報酬水準を回復している医療機関に対し、22年度に補助金と診療報酬の特例で年間4兆円程度の莫大な予算を用いて支援することとなる見込み。直近の各月の診療報酬点数の集計を見ても、前年度と比べて堅調な伸び率を確保している」とした。そのうえで、「少なくとも医療機関の経営支援の観点からは、特例的な補助金や診療報酬は継続する理由の説明が困難な状況にあり、個々の項目ごとに早急に縮小、廃止を検討すべき」とした。

新型コロンワクチンの接種については全額国費で対応されてきたが、「まずは、足もとで行われているオミクロン株対応ワクチンの接種について希望するすべての対象者が年内に接種を受けられるよう支援していくことが重要」としたうえで、「新型コロナの性質の変化を適切に評価し、他の感染症とのバランス等もみながら、予防接種法上の位置付けについて検討を行っていくべき」とした。新型コロナワクチンについては、「ワクチンには使用期限もあることから、今後は、新型コロナの性質、国民の接種行動の変化等も見極めつつ、効率的な調達と実効的な使用に努めることが必要」ことも指摘した。治療薬を購入する場合も、「早期の薬価収載を求めるとともに、現場での有効性の検証や、併用禁忌が少ないなどの使いやすさも見極めつつ、一度に大量に購入するのではなく、薬価収載までに必要な数量を段階的に購入するようにすべき」とした。

◎全世代型社会保障構築への取り組み「加速すべき」

少子高齢化が進むなかで、全世代型社会保障の実現の必要性も強調。「今後3年間は後期高齢者が急増して、このままでは給付費の増加に伴い現役世代の大幅な負担の増加が免れない。一方で、コロナ禍で少子化が加速して人口減少が推計より7年程度前倒しされている状況にある」として、少子高齢化が進む構造的課題を指摘。「改めて、給付は高齢者中心、負担は現役世代中心というこれまでの社会保障の構造を見直し、全世代型で持続可能な制度を構築するための取組を加速すべきとき」として、応能負担を実現する必要性を強調している。

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