卸連・鈴木会長 「卸に価格交渉能力があると思っている」 製薬団体が提案する公定マージンの検討を受けて
公開日時 2022/09/30 05:53
日本医薬品卸売業連合会の鈴木賢会長は9月29日、厚労省の医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会(座長:遠藤久夫・学習院大経済学部教授)で、「私は卸に価格交渉能力があると思っている」と述べた。22日に開かれた有識者検討会で製薬団体が公定マージンを検討する必要性を指摘するなかで、医薬品卸の価格交渉能力が議論となっていた。
◎菅原構成員「セリングパワーとバイイングパワーというバランスがこの間動いてきた」
菅原琢磨構成員(法政大経済学部教授)は、「様々な90年代以降の流通改革があって、卸も様々な努力をする中で、合併・吸収して卸の大規模化が図られて交渉力をあげてきた。一方で購入側も病院側も、共同購買組織や、価格情報の共有などが進んできて、セリングパワーとバイイングパワーというバランスがこの間動いてきたという風に思っている」と現状認識を示した。そのうえで医薬品卸の利益率の低さなどに触れ、「卸の安定的な供給を図るためには一定程度の利益は確保しなくてはならないということで、バイイングパワーとセリングパワーのバランス中で、どうしても難しいという形であれば、公定マージンのようなものが欧州では採用されているので、そういう話に進むのかなと言うことを前回あったかと思う。要は、流通の安定化を図るために、剤型などどのようなものにどれだけのマイナスになっていたり、地域に対しマイナスになっていたり、利益が出ているなどのコスト構造についての情報というのは、ないのだろうか。この辺がよくわからないと、流通の適正化のどこにどう手当てをして良いのかというのが、具体的に話が進んでいかない気がする。いかがだろうか」と投げかけた。
◎卸連・鈴木会長「卸の特性と取引先、価格交渉力において私たちは相当時間をかけている」
これに対し、卸連の鈴木会長は、「卸に価格交渉能力あるのかどうかという話だが、私は卸に価格交渉能力があると思っている。また、一般的に地域と言う意味での卸の特性と、取引先、価格交渉力において、私たちは相当時間をかけている。市場で一定程度の価格形成機能というのは十分に果たしているのではないかと思っている。また、薬価差の問題を考えるときに、流通改善ガイドラインを通して、各会社がいろいろ努力をして交渉に当たっているということが現実だ」と述べた。
卸連の折本健次理事は、「卸36社あるが、いわゆる売上、総利益、粗利を見ても若干ずつ違うということは、エリア、全国であっても価格交渉力の結果によって違いがある。仕入れによっても違いがあると思う。販管費の平均は出るが、やはりパラパラだ。経営努力がどうなのかは私の口からは言えないが、赤字を続けている会社もないわけではない。したがって、それぞれの考え方で、地域だから赤字だと言う。その時極端にコロナ禍で受診抑制が入った時なので、売り上げが低下したということはそのうちやはり、耐久できなかったときにはこの数字だがそのような状況だと認識している」と述べた。
◎卸連・鈴木会長 薬価制度であることで生じる歪み「薬価は平等だが、公平ではない」
鈴木会長は薬価制度があることで生じる歪みの一つとして、薬価が上限価格であることから原価が上昇しても価格転嫁に限界があるということに加え、「地域差や取引条件等で、流通コストにバラつきがあるにもかかわらず、薬価はひとつなので不公平であること」との見解を表明。「私は思うのだが、薬価は平等だが、公平ではないと思う。平等が全員に等しく与えるものとするならば、公平はそれぞれの違いを認め、同じ結果を得られるようにしようというものだと思う。こうした視点を今後の制度設計の中でも取り上げていただければ幸いだ」と続けた。「薬価があろうとなかろうと、取引条件によっては納入価にバラつきがある。当然のことだと思う。その薬価差を得ること自体が目的となって、過度な交渉が行われているところに多大な問題があると認識している」とも述べた。