卸連・鈴木会長 流通上の不採算品目に問題意識 「低薬価品は流通コストを賄えていないのが実態」
公開日時 2022/07/29 04:51
日本医薬品卸売業連合会(卸連)の鈴木賢会長(バイタルネット代表取締役会長)は7月28日、理事会後の会見で、「薬価は全国一律だが、離島、過疎地に配送するコストは、都市部より明らかに高い。低薬価品は、流通コストを賄えていないのが実態だ」と述べ、流通上での不採算品目に問題意識を表明した。8月中にも厚労省の「医薬品の迅速かつ安定的な供給のための流通・薬価制度に関する有識者検討会」が立ち上がることを踏まえたもの。鈴木会長は、「医薬品卸が業務面、経営面でも厳しい状況に置かれていることや、薬価が下がり続ける現在の薬価制度が改革の時期を迎えていることなどに踏み込んで、将来に向けて前向きな議論が行われることに期待する」と強調した。
◎カテゴリーチェンジで不採算品増加も「流通に特化した仕組みはない」
スペシャリティ医薬品の台頭とジェネリックの数量増加によるカテゴリーチェンジが、医薬品流通に大きな影響を及ぼしている。鈴木会長は、「例えば、ジェネリックになっても管理コストは変わらない。ジェネリックになっても配送回数は減るわけではない。薬価が下がってもコストは変わらない。そのために不採算の製品が多くなっている。不採算品目の再算定の基本的な考え方も求めていかなければならないと考えている」との問題意識を示した。
不採算品再算定など薬価を下支えする仕組みはあるが、「製造ではなく、流通で不採算になっている品目に特化されたことはない」と指摘。「薬価は全国一律だが、離島、過疎地に配送するコストは、都市部より明らかに高い。低薬価品は、流通コストを賄えていないのが実態だ」と述べた。卸連のなかでは、地域やカテゴリーを切り口とした意見が多く出ているという。
◎山田専務理事 薬価差偏在をどう考えるかという議論はある
調剤チェーンやボランタリーチェーンの台頭などによる、薬価差偏重も議論のポイントとなっている。山田耕蔵専務理事は、「ボランタリーチェーンがそのままどうこうという話は出ていないが、薬価差が偏在しているのではないか、その辺についてどう考えるか、という議論は卸連のなかで出ている」と話した。
◎くすり未来塾の不採算品に対する提案「卸連としても協力したい」
くすり未来塾が提案した不採算品に対する提案について鈴木会長は、「解消に向けて適切に提案されるのであれば、卸連としても協力していきたいと考えている。連合会としては、受け身、待ちの議論ではなく、産業側の意見を作る必要があると考えている」と述べた。ただ、「医薬流通産業の形を作り得た段階として卸連として薬価を考える。将来は、これから考えていかないといけない」とも説明。山田専務理事も、「薬価制度の将来のあり方については、有識者検討会に先立ってということまではいま考えていない」と説明した。
23年度薬価制度改革に向けた議論も今秋には本格化するが、「卸連はかねてから、毎年薬価改定については反対している。仮に中間年改定を行うのであれば、2016年の薬価制度抜本改革に向けた基本方針の4大臣合意に立ち返り、関係者の経営実態、安定的な流通確保に配慮し、乖離の大きな品目について薬価改定を行うべきと考えている。調整幅については、薬剤流通を安定させるための調整幅は現在も重要な役割を果たしている」と述べた。
◎薬価の議論は「医薬品流通産業としてどうあるべきかを考えないといけない」
このほか、IQVIAデータを引き合いに、中国や欧米はプラス成長だとしたうえで、「日本市場だけマイナス成長だ。それでは世界市場との間で乖離があり、医薬品産業の開発地の低下も生じる。産業として中国に抜かれてしまうことは、国民の健康、安全保障ができなくなる、このような恐れもある」と指摘。「いまはガイドラインを遵守することが大事だと思っているが、薬価の議論は医薬流通産業としてどうあるべきか、考えないといけない」と述べた。