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IQVIA・21年度国内医療薬市場 規模はコロナ前の水準にまで回復 新薬で病院市場成長、開業医市場縮小

公開日時 2022/05/25 04:53
IQVIAが5月24日に公表した2021年度(21年4月~22年3月)の国内医療用医薬品市場データによると、21年度の市場規模は10兆6887億円(薬価ベース、1億円未満切捨て)で、コロナ禍以前の19年度(19年4月~20年3月)の水準をわずかに超えたことがわかった。19年度は10兆6294億円だったため、21年度は19年度比0.6%増となった。コロナ禍から2年目に市場全体ではコロナ前の水準まで回復したが、市場構造は激変。病院市場は19年度比3.7%伸びた一方で、開業医市場は同5.3%縮小したことも確認された。がん領域などの新薬群の成長が病院市場の伸びにつながったが、開業医市場では▽受診控え▽長期収載品・後発品を中心に薬価を引下げた21年度中間年改定――の影響が色濃く表れたといえそうだ。

文末の「関連ファイル」に21年度の国内医療用医薬品市場の市場規模や製品売上上位10製品などの資料を掲載しました(ミクスOnlineの有料会員のみ閲覧できます。無料トライアルはこちら)。

◎21年度の市場規模 過去2番目の大きさ

IQVIAの公表データを可能な限りさかのぼると、国内医療用医薬品の市場規模はC型肝炎治療薬のハーボニーとソバルディが爆発的に売れた15年度の10兆8377億円が最大で、21年度はこれに次ぐ2番目の市場規模となる。過去5年間では最大規模となる。

21年度の市場規模は前年度比3.3%増だった。市場別にみると、100床以上の病院市場は4兆9675億円(前年度比5.1%増)、100床未満の開業医市場は2兆4億円(同0.4%増)、主に調剤薬局で構成する「薬局その他」市場は3兆7207億円(同2.6%増)だった。薬局その他市場は19年度と比べると0.1%減で、コロナ禍以前と同水準にまで回復した。

◎製品売上ランキング オプジーボが初の首位に

21年度の製品売上ランキングをみると、1位はオプジーボで売上1253億円(前年度比11.1%増、前年度順位2位)となった。実は同剤が売上1位となるのは今回が初めて。非小細胞肺がん(NSCLC)の適応追加を機に16年度に急成長したが、17年2月に緊急的に薬価を50%引き下げられたうえ、16年度はハーボニーが売上首位にいたため、オプジーボは当時2位だった。その後も薬価の引下げや、競合薬キイトルーダにNSCLC1次治療の適応取得で後塵を拝したこともあり、首位の座についたことはなかった。

オプジーボは今回、20年11月に取得したNSCLC1次治療のほか、胃がん1次治療などでも存在感をみせており、これが21年度の2ケタ成長と売上首位にたった主な理由となる。

◎5製品で国内売上1000億円以上

2位はキイトルーダ(売上1195億円、前年度比1.1%増、前年度順位1位)、3位はタケキャブ(同1139億円、13.0%増、3位)、4位はリクシアナ(同1043億円、18.7%増、7位)、5位はタグリッソ(同1037億円、9.1%増、5位)――で、これら上位5製品が売上1000億円以上だった。

6位はアバスチン(同984億円、2.0%減、4位)、7位はネキシウム(同913億円、2.0%減、6位)、8位はサムスカ(同900億円、13.9%増、10位)、9位はアジルバ(同870億円、6.9%増、8位)、10位はアイリーア(同866億円、9.7%増、10位圏外)――だった。なお、新型コロナウイルスワクチンは政府一括購入のため、この市場データには反映されていない。

◎抗腫瘍剤市場 全市場の15.7%占める

売上上位10薬効をみると、1位の「抗腫瘍剤」は1兆6791億円(前年度比10.6%増)で、市場全体の15.7%を占めた。抗腫瘍剤が市場全体に占める割合は毎年約1%拡大させており、17年度10.6%、18年度12%、19年度13.6%、20年度14.7%、21年度15.7%――と推移している。抗腫瘍剤の市場規模や成長トレンドは、他の薬効と大きく異なる。

前述の通り、抗腫瘍剤の薬効内売上トップ製品はオプジーボとなり、前年度1位のキイトルーダと入れ替わった。また、免疫療法薬のテセントリクは42.2%増、イミフィンジは25.8%増と大きく成長した(IQVIAは製品売上トップ10製品以外の製品売上は開示していない)。

薬効別で今回初めてトップ10入りしたのは、7位の「診断用検査試薬」(3092億円、42.2%増)。新型コロナの感染拡大を背景に、関連する検査試薬が相次ぎ発売されたことが理由となる。

◎フォシーガ61.1%増 ジャディアンス25.7%増

薬効別の2位は「糖尿病治療剤」(6439億円、5.5%増)、3位は「免疫抑制剤」(5336億円、11.2%増)、4位は「抗血栓症薬」(4306億円、2.6%増)、5位は「眼科用剤」(3533億円、1.7%減)、6位は「制酸剤、鼓腸及び潰瘍治療剤」(3511億円、1.1%増)、8位は「その他の中枢神経系用剤」(3053億円、5.4%増)、9位は「レニン-アンジオテンシン系作用薬」(2833億円、3.4%減)、10位は「喘息及びCOPD治療剤」(2634億円、0.1%減)――だった。前年度9位の「脂質調整剤及び動脈硬化用剤」が10位圏外となった。

このうち糖尿病治療剤では、薬効内トップ製品はDPP-4阻害薬・ジャヌビアで変更はないが、SGLT2阻害薬・フォシーガが61.1%増と急拡大した。これは慢性心不全と慢性腎臓病(CKD)の適応追加が主な理由とみられる。慢性心不全の適応を追加したSGLT2阻害薬・ジャディアンスも25.7%増と拡大した。

2ケタ成長した免疫抑制剤市場では、薬効内トップ製品はこれまで通りヒュミラだが、アトピー性皮膚炎などの適応を持つ抗体製剤・デュピクセントは62.2%増、JAK阻害薬・オルミエントも45.9%増だった。

◎企業売上ランキング 中外製薬が初の首位に AZはトップ3入り

企業売上ランキングを見てみる。「販促会社ベース」(販促会社が2社以上の場合、製造承認を持っているなどオリジネーターにより近い製薬企業に売上を計上して集計したもの)では、前年度2位の中外製薬が今回、初めて首位にたった。売上5248億円、前年度比10.4%増だった。主力のテセントリク、ヘムライブラ、カドサイラ、エンスプリングなどの堅調な成長に加え、バイオシミラーが参入しているアバスチンも2%減収にとどめたことが首位になった主な理由となる。なお、政府が購入している新型コロナ治療薬・ロナプリーブは、IQVIAがまとめた同社売上に含まれていない。

前年度1位だった武田薬品は今回2位で、売上4884億円、前年度比5.4%減だった。5つのビジネスエリアにリソースの再配分を進めており、ネシーナなど糖尿病薬4製品を21年4月に帝人ファーマに譲渡するなど製品戦略上のインパクトが今回の結果に反映されたとみられる。

3位はアストラゼネカ(AZ)で売上4344億円、前年度比15.5%増だった。AZがトップ3入りするのは初めて。タグリッソ、イミフィンジ、フォシーガなどの成長で、売上上位20社の中で最大の伸び率となった。前年度順位は4位。

上位20社のうち2ケタ成長したのは、中外製薬、AZ、ヤンセンファーマの3社だった。ヤンセンは抗がん剤のザイティガやダラキューロのほか、炎症性腸疾患治療薬・ステラーラ(49.9%増)などが好調。20年7月に合併したアクテリオン社の貢献もあったとみられる。

今回上位20位入りしたのは、11位のブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)と20位の協和キリンの2社。BMSは、統合したセルジーン分も計上されたため、一気に11位に入った。一方で、今回20位圏外となったのはヴィアトリス製薬と日医工だった。
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