NBI・青野社長「日本はグローバルに大きく貢献」 生産拠点の「グローバルでの戦略的位置づけ上がる」
公開日時 2022/05/11 04:52
日本ベーリンガーインゲルハイムの青野吉晃代表取締役会長兼社長は5月10日、2021年度業績発表会で、研究開発・生産拠点としても、「日本はグローバルに大きく貢献している」と強調した。同社の日本の医療用医薬品売上高は前年比6.7%増の2082億円と「好調な実績」(青野社長)だった。その背景として、グローバル戦略拠点として研究開拠点と生産拠点の強化を進めていることをあげた。生産拠点である山形工場では国内向け製品の生産が大半だったが、アジア・オセアニア地域へバルクを供給する計画であることを紹介。「以前よりもグローバルでの戦略的な位置づけはあがっていく」と述べた。同社は、大手外資系製薬企業として唯一、研究開発拠点とバルク製造のできる生産拠点を有している。
◎「イノベーションのソースとしての重要性に変わりはない」
同社の国内医療用医薬品売上高は、前年比6.7%増の2082億円。糖尿病治療薬・ジャディアンスファミリー(ジャディアンス、トラディアンス)と、抗線維化剤・オフェブが業績を牽引した。ジャディアンスファミリーは前年比30.8%増の527億円、オフェブは29.8%増の510億円に成長した。青野社長は、「想定以上に厳しい中間年改定があったが、堅調な業績だった」と述べた。日本市場については、「中国をはじめとした新興国のマーケットは拡大しているが、比較的安定した成熟市場だ。イノベーションのソースとしての重要性に変わりはない」と強調した。
業績が好調な背景として青野社長は、「我々はグローバルの研究開発の戦略拠点の一角として早い段階から参画し、後期開発品の開発も加速している。神戸医薬研究所(研究開発拠点)や山形工場(生産拠点)を含む、グローバルの戦略拠点としてファンクションを強化している。長期的な視点に立った人材育成にも取り組んでいる。こうしたことをベースとして、現在の業績がある」と述べた。
研究開発拠点である神戸医薬研究所は、グローバルの戦略拠点として事業開発と創薬研究アライアンス機能を担っていると説明。「神戸医薬研究所は、具体的なグローバルでの役割があり、明確に機能している。グローバルの中でも評価を受けている」と述べた。
生産拠点である山形工場では、これまで日本の医療用医薬品売上の約90%の生産を担ってきた。これまでは日本向けの製品が中心だったが、日本だけでなく、アジア・オセアニア地域に糖尿病治療薬をバルクで供給する計画だと説明。今後も継続的な投資を行い、品質要求に応える製造環境を維持する考えを示した。青野社長は、「ウクライナ情勢もあり、グローバルなサプライチェーンが問題となるなかで、日本の品質、工場の能力、勤勉性を評価し、日本だけでなく一部のリージョンにも供給していく。以前よりもグローバルでの戦略的な位置づけはあがっていく」と述べた。
また、人財の重要性についても強調。「人財こそすべてというところ。強くBIとして認識している」と述べた。
◎ペイシェントエンゲージメント部門を新設 患者の声を反映
シャシャンク・デシュパンデ代表取締役兼医薬事業ユニット統括社長は、21年度業績について、「大きな成功を収めた一年だった」と評価。特に、前年比7.1%増と新興市場(プラス5.9%)を上回る成長率を遂げたことを「非常に誇りを感じている」と述べた。
成長を牽引した2型糖尿病治療薬・ジャディアンス、抗線維化剤・オフェブともに、エビデンスが積み重ねられており、それが好調な業績につながっているとの見方を示した。オフェブについては、「肺線維症領域のマーケットリーダーとして、より早期の診断・治療を支援する責任がある。可能であれば、肺機能を維持するというところにできるだけ早い段階から貢献したい」との考えを表明。デジタルに強みを有する企業とのコラボレーションを通じ、アドヒアランスを向上し、患者をサポートする活動に力を入れる考えも示した。
“ペイシェントエンゲージメント”を部門として新設したことも紹介。「ブランドや製品を代表するのではなく、患者の声を理解する。患者のニーズを理解する」重要性を強調。患者から得た学びやインサイトを医薬品開発や患者サポートプログラムに反映するなど、取り組みを加速する考えを示した。