サンバイオ・森社長 再生細胞薬「SB623」の承認後を見据え国内販売体制を準備 CRMシステム構築へ
公開日時 2022/03/14 04:51
サンバイオの森敬太代表取締役社長は3月11日に記者会見し、厚労省に承認申請した再生細胞薬「SB623」について、承認後を見据えて国内販売体制の準備に着手したことを明らかにした。申請資料に基づく医療者向け適正使用推進資材の作成や、動画、患者向け資材、Webコンテンツの作成を進めている。また、適正使用推進の人員や施設要件の策定、ICTを活用した症例適格性判定システムの構築も視野に入れている。3月7日に承認申請した「SB623」は、先駆け審査指定制度の枠組み中で審査されるため、順調にいけば9月前後の承認が見込まれる。
◎森社長「TBIの患者に新しい治療選択肢を提供できる」
「私たちは、(外傷性脳損傷後の運動機能障害の)患者に新しい治療選択肢を提供できる可能性ができてきた。患者が自立して生活でき、仕事に戻り、社会復帰できる。また、介助者の負担が軽減できるかもしれない。ここまでたどり着いたことをうれしく思う、しっかり進めていきたい」-。2001年の創業から20年以上の歳月を経て、同社として初の承認申請となった「SB623」に、森社長はこう想いを込めた。
◎情報提供資材も準備 動画やWebの活用も、患者向け製品関係資材も用意
「SB623」の国内製造販売承認後を見据えた準備状況について束原直樹事業部長(日本・アジア)から報告があった。束原事業部長は、①薬価、②診療報酬、③販売体制の構築、④流通体制の構築、⑤情報提供資材の作成、⑥適正使用推進体制の構築-の6領域で作業を進めていると説明。このうち情報提供資材については、「CTDに基づいて鋭意前進して進める」と強調したほか、「それ以外のものに関しても、社内・社外のパートナーと申請のマイルストーンをクリアしたことで勢力的に話を進めている」と語った。なお、資材関係は、医療従事者向け資材、動画など各種コンテンツ、SB623投与患者向けの疾患ならびに製品関連資材、Webコンテンツ-などを作成することにしている。
また、薬価については、適正な薬価収載のための詳細情報収集ならびに資料作成中であるほか、診療報酬については、SB623投与に伴う細胞調製手技や手術w手技に対する、適切な診療報酬設定の為の課題抽出と対応策の検討を行っている。
◎流通体制 R-SATシステムの活用に向けて実装準備へ
流通体制については、2019年8月にスズケンと再生細胞薬の流通(商流)に関する基本契約締結及び患者サポートシステムの共同開発で基本業務契約を提携している。サンバイオ側はこの日の会見で、「R-SATシステム活用に向けての発売後の実装準備」と「地域ごとの実情を考慮した流通スキーム確立」に取り組む方針を示した。また、販売体制については、外傷性脳損傷後の運動機能障害(TBI)の患者の治療実態と、術後リハビリ等、各地域の実情に即した患者さんのフォロー体制を軸とした適正使用推進体制の戦略策定を行うほか、「承認後の適正な情報提供活動を推進確保するためのCRMシステムの構築」するとした。
束原事業部長は、「もちろん最終的な承認時の内容に基づいて決めなくてはならないことだ」と前置きした上で、「例えば薬価などもあるが、シナリオに基づいてどのような体制になろうとも、きちんとタイムラインに基づいてできる体制で進めている」と強調した。
◎ネジャドニクCMO「規制当局が求めたのは臨床的に意義のあるエンドポイント」
会見ではビジャン・ネジャドニクCMOが「SB623」における慢性期外傷性脳損傷患者の評価指標について解説した。慢性期における外傷性脳損傷の臨床試験の成功を定義する指標とその変化量は確立されていないという。ネジャドニクCMOは「規制当局が求めたのは臨床的に意義のあるエンドポイントだ」と明かした。
これまでは、Fugl-Meyer Motor Scale(FMMS・運動機能障害)が指標として用いられていたが、「関節や上肢、下肢の動きをみるだけのもので、患者の日常生活に与えるインパクトを測定できるものではないという側面があった」とネジャドニクCMOは指摘。そこで臨床的に意義のある最小の変化値(MCID)を新たな評価指標として構築し、外傷性脳損傷による機能的転帰(DRS)およびFMMSの臨床的に意義のある変化量を科学的に評価することを可能とした。この結果、DRS,FMMS合計スコア、上肢スコア、下肢スコアともにベースラインからの改善を「SB623」で確認することができ、規制当局が求める、患者の日常生活に与えるインパクトという臨床的意義を見出すことができたと報告した。