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【FOCUS 変革のスピードにこそ勝機あり!】 2022年は次世代のビジネススタイルを先取りしよう

公開日時 2022/01/07 04:53
2022年が始動した。新型コロナウイルス感染症はオミクロン株の登場により、新たなフェーズに入る。我々もコロナ禍で経験したテレワークやオンライン面談などを個々人の働き方に活かし、応用させ、最適化することが求められる。製薬企業の収益構造も10年前と比べて大きく変化してきた。抗体医薬、組換えタンパク・ペプチド医薬、核酸医薬、遺伝子治療――など、モダリティの多様化によりアンメッドメディカルニーズを満たす新薬も数多く開発され、医薬品市場の勢力分布が塗り替えられると予想する。さらにAIやビッグデータを活用した次世代創薬や医療・健康分野のプラットフォーム化が進み、医療者と患者がオンライン上でつながる。治療アプリ、VR(バーチャル・リアリティ)が市場を席巻し、デジタルを使った患者向け“ペイシェント・サポート・プログラム”がビジネスの主役に上り詰める時代がやってくる。(編集長 沼田佳之)

◎ファーストインクラスのMRを目指せ

日本の高齢化のピークが2025年というのは、この業界では常識だ。では、2030年はどんな世界が待っているの?と質問されると、答えに困ることがある。高齢化はまだまだ続いているが、一方で人口減少社会となり、東京や首都圏を除くすべての地域で労働生産人口が減り、地域の経済力は放っておくと衰退する。ここは、なんとなく理解できるが、その時に、自分自身が会社組織のどのポジションにいて、どんな「働き方」をして、何をしているかを想像すると、とたんに分からなくなる。

一昔前は、営業所長や課長、支店長、さらには営業本部長を昇り詰めたいと即答できる社員は大勢いた。ところが、新型コロナの登場で日常生活から仕事のスタイルまで一変し、ヒト同士のコミュニケーションまでオンライン化されると、もう何が何だかわからない!というのが本音ではないだろうか。

朝起きて会社に出社し、夜遅くまで働き、新橋などの繁華街で一杯飲んで帰宅するというスタイルは過去のもの。次世代のビジネスマンはリモートで会社の上司、同僚、仲間とテレワークし、オンラインで商談し、仕事の合間を使ってジムで汗を流し、夜は深酒などせず、ネットに流れる米CNNや英BBCの現地LIVEを聞きながら世界市況の動向をウォッチするというスタイルが流行っているという。

◎「規制があるから」を理由にしていませんか


医療の世界でもオンライン診療やオンライン服薬指導などデジタル活用をめぐる議論が交わされている。国もデジタル庁を発足させた。健診データや診療情報の統合、マイナンバーカードを利用したデータヘルス計画の実現、地域医療情報のネットワーク化、医療者同士のSNSを活用したコミュニケーション、ドローンを使った患者宅への医薬品配送など、新たなデジタルツールの活用も実用化のタイミングをうかがっている。

これらは絵に描いた餅でなかなか現実感を持たないと多くの読者が思うだろう。ところがこんな現実に遭遇したらあなたはどう対応するだろうか。高熱でうなされる子供の母親は、スマホのオンライン機能を使って即座に診療所(かかりつけ医)に連絡する。医師はスマホの画面を通じて子供の表情を確認し、同時にバイタルデータのモニタリングを開始する。

別のケースでは、自宅のリビングでTVをみていた高齢者が胸を押さえて苦しみだした。家族はテレビのチャンネルをオンライン診療に切り替え、かかりつけ医と会話する。定期受診先の医師ということで、オンラインを通じ、その場の処置を無事に済ませた。医師は翌日の外来受診を勧めながら電子処方せんを発行し、数分後には薬剤師によるオンライン服薬指導を受ける。まもなくして玄関先にドローンが医薬品を届けてくれた。その間、患者・家族は自宅から一歩も出ず、支払いも電子決済で済ますことができた。

突発的に起こる医療の場合、「必要か、必要でないか」の判断は、その場、その瞬間に決まることが多い。いま紹介したケースは若い母親と、高齢者と同居する家族が医療の意思決定者となる。高齢者はデジタルが使えないという声をよく聞くが、その必要性を判断できる家族がスマホやオンラインを使うことが出来れば何ら問題ない。私自身もまもなく60歳に手が届くが、これから10年後には、スマホ世代のほぼ全員がオンラインの使い手となるわけだ。

生活者として求めるべきは、利便性や快適性であり、医療という「非日常」を、「日常」にすることは難しいことではない。多分その決め手になるのは、その時、「必要なのか、必要でないのか」ということになる。よくオンラインが普及しない理由の一つに「規制があるから」という話を聞く。結局のところ、差し迫った危機や緊急性を感じない状況下でいくら議論をしても、現実感のある判断はできないということになる。

前段で触れたように、いまの次世代ビジネスマンは新型コロナで経験した日常スタイルを楽しみ、活かし、発展させようとしている。それは、その当事者にとって、快適性や利便性が伴う選択肢を得たからに過ぎない。ネットを使って国境を越え、海外の仲間とリアルタイムに会話し、PCの画面越しで、しかも多言語で酒を酌み交わすことに人生の価値を感じる。こうした世代の台頭は、あきらかに社会の構造や社会システムのあり様に大きな影響を与えるといっても過言ではない。

私のような新橋サラリーマンが何をいってもガラパゴスのたわごとだ。自分への戒めなのかもしれないが、いま考えるべきは、コロナの経験をいかに未来の姿に活かすかにほかならない。コロナ以前に戻ることは無い。逆に、2030年までの自分自身のマイルストーンをきっちり作りながら、自らがイノベーターとしての自覚を持ち、ビジネスにあたる勇気が必要なのではないかと思う。

社員も2極化するし、会社も2極化する。さらに社会も2極化するかも? 願わくば、そうならないで欲しいと思うが…。それだけ時代の変化のスピードは増してくるので、これに耐えられる免疫力と体力を事前に鍛え、備えておかなければいけないという訳だ。

◎ワンランクアップする自己投資を

2022年のMRはどうあるべきか。新型コロナを経験した約2年でMRも大きく様変わりした。Monthlyミクス1月号(ミクスOnline・プレミア会員向け)で現役MRを対象に実施した働き方に関する調査結果を公表するので、是非ご覧頂きたい。

調査に協力いただいたMRさんの回答を見る限り、変化に対する意識は皆さん持っており、テレワークやオンライン面談に挑戦する意欲を感じた。「働き方」も、デジタルコンテンツやオンライン面談の活用やスキルを学ぼうとする姿勢に好感を持った。一方、懸念材料としては、未来の予見性に対する認識に若干の不安を抱いた。例えば、AIやビッグデータの利活用、データヘルス改革の方向性、治療アプリやVRの活用については、現実感を抱くに及ばない。デジタル時代のMRの社会的役割や、多くの製薬企業が掲げる「患者中心の医療の実現」(ペイシェント・セントリシティ)を実現するためには、もう一段階アップグレードする研修プログラムが求められるよう。

デジタル時代になり、製薬各社ともデジタル人財の育成に力を入れている。私もMR教育に関わる機会を頂いているが、2022年は、こうした人財をワンランクアップさせるための研修や教育に力を入れることを薦めたい。このための自己投資も必要だ。その際の視点は、あくまで患者や一般消費者を軸に据え、患者の満足度の向上や治療を克服した後の社会的・労働生産性の維持向上にフォーカスしたプログラムを取り入れてみては如何だろうか。革新的新薬によって健康寿命の延伸が図られ、人口減少に伴う労働生産性を確保するための産業となってこそ製薬産業が目指す次なるビジョンではないかと考える。是非、今年をその第一歩に位置づけ、MRのビジネストランスフォーメーションに活かしていただければ幸いだ。
 
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