22年度診療報酬改定めぐり医療団体の動き活発化 三師会会長が後藤厚労相に「プラス改定」要請 自民議連も気勢
公開日時 2021/12/08 04:53
2022年度診療報酬改定の「改定率」をめぐる動きが12月7日、活発化した。日本医師会、歯科医師会、薬剤師会の三師会会長は同日午後、後藤茂之厚労相と会談し、「絶対プラス改定」を要望した。同日朝には、自民党の「国民医療を守る議員の会(加藤勝信会長)」が議員会館で開かれ、「国民の生命と健康を守るための財源を確保」するよう、政府に要望する提言を決議した。看護師の処遇改善や不妊治療の保険適用の財源確保も求められるなかで、改定財源とは別途確保を求める医療界と財務省の間では隔たりがある。診療報酬本体のマイナス改定を強く求める財務省と綱引きが続いており、年末に向けて詰めの調整が進む。
◎加藤会長「プラス改定を是が非でも守っていかなければならない」
「新型コロナ関連の補助金を除くと、医療機関経営は大変厳しい現状だ。足元の賃金物価は上昇基調にある。医療を守っていくためには報酬改定でプラス改定を是が非でも守っていかなければならない」-。国民医療を守る議員の会の加藤会長はこう強調した。
◎「もっと強い書きぶりにするべき。プラス改定という意図が明確に伝わらない」との声も
国民医療を守る議員の会には、自民党議員190人、代理44人の計234人が出席した。決議された提言案には、22年度改定について、「国民の生命と健康を守るための財源を確保するべき」とした。ただ、肝心の「プラス改定」を要求する文言は盛り込まれていない。これに出席議員や医師会関係者からは、「もっと強い書きぶりにするべきだ。プラス改定という意図が(官邸や財務省に)明確に伝わらないのではないか」という懸念の声があがったという。文言修正は執行部一任とされ、提言を取りまとめ、きょう8日にも岸田文雄首相に手渡す。厚労相にも直接働きかける方針だ。
◎医療従事者の処遇改善も焦点に 財源確保で一致団結を
看護師の処遇改善も焦点となるなかで、加藤会長は「経済対策に看護職員等の賃上げ、不妊治療の保険適用が進められているが、別途財源を確保しながら進めていくという性格のものだと認識している」との考えを表明。「看護師のみならず、医療従事者の処遇改善をしっかり図っていく、こうした課題に取り組むためには診療報酬改定、財源をしっかり確保していく。皆さん一致団結して頑張っていこうではありませんか」と呼びかけた。
なお、提言には、「医療現場で働くすべての医療従事者の処遇改善と働き方改革が重要であり、国はこれらをしっかりと支援する必要がある」ことも盛り込んだ。処遇改善の対象も今後の焦点となりそうだ。
◎日医・中川会長「補助金頼みの経営は到底できない」 後藤厚労相「厚生労働大臣の役割果たす」
同日午後に、後藤厚労相と会談した中川会長は終了後に記者団に対し、「診療報酬改定をプラス改定に絶対してほしいと要望した。補助金で何とか、首の皮一枚という状態だ。次期診療報酬改定で、しっかり手当てができなければ、ポストコロナへの医療提供体制の筋道は付けられず、ガタガタのまま補助金頼みの経営は到底できない」と話した。後藤厚労相は、「厚生労働大臣としての役割を果たす」と応じたといい、「前向きに頑張っていただけるという返事だった」としている。マイナス改定を求める財務省との隔たりは依然大きいが、「現状について丁寧な説明を繰り返す」姿勢を強調した。
◎日薬・山本会長 「このまま放置では薬局がなくなり、地域の医薬品提供体制が壊れる」
日本薬剤師会の山本信夫会長は、「医療経済実態調査の数字だけ捉えられてしまうと難しいが、地域の医療提供体制を守っている薬局が疲弊している」と説明。政府がベースアップ(賃上げ)を求めるなかで薬剤師の人件費(給与費)が減少していることに触れ、「このまま放置されると、薬局がなくなり、地域の医薬品提供体制が壊れてしまうという認識を持っている。医療を守るという意味で、私どもも医薬品を提供する立場で医療を守っていることを伝えた」と説明した。なお、日本薬剤師会の説明資料では、医療経済実態調査について「同一グループの規模別でみると、特に地域の医薬品提供体制の中核を担っている小規模の保険薬局の損益差額の減少が目立つ。小規模薬局の経営基盤は極めて脆弱であり、このままの状況が続くことになれば、今後の医薬品供給に支障をきたすことになる」と明記されている。
山本会長は、「これまでも三師会で過去何回も過ごした。皆で医療全体のチームを組めるようなプラス改定をぜひお願いしたいと申し上げた」と述べた。