中医協薬価専門部会 市場拡大再算定の類似品の除外に「制限」求める声 業界要望は「ルール化困難」との声も
公開日時 2021/12/02 05:00
厚生労働省は12月1日の中医協薬価専門部会に、2022年度薬価制度改革に向けた論点整理案を提示した。米国研究製薬工業協会(PhRMA)らが見直しを強く要望していた市場拡大再算定については、特例拡大再算定もしくは再算定の類似品目として引き下げられた後、「一定期間内(3年間)」は他品目の市場拡大再算定の類似品として対象外とすることを提案した。診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、「連座的に再算定が適応されることに一定の不合理があることは理解しているが、一定期間で一度など制限に工夫が必要ではないか」と指摘。除外品目をルール化することの難しさを指摘する声も出た。
◎市場拡大再算定 3年間の除外も診療・支払で意見分かれる
市場拡大再算定については、欧米製薬団体が見直しを強く主張してきた。MSDの抗がん剤・キイトルーダが特例拡大再算定に加え、市場拡大再算定品目の類似品目となり、短期間で再三にわたる引き下げを受けた経緯がある。中医協の場でも、「市場で競合関係にある類似品であっても、効能効果の重なりが小さい場合や、過去の再算定の影響により対象品よりも薬価が低い場合、短期間に繰り返し再算定の対象となる場合等、連座的に再算定を適用することが不合理と考えられる場合には対象から除外できるよう要件を見直すべき」と主張していた。厚労省はこの日の中医協に、「市場拡大再算定の特例の対象品又は類似品として引き下げられた後、一定期間内(3年間)は、他品目の市場拡大再算定の類似品としての対象外」とすることを提案した。
これに対し、診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、「効能追加の内容を踏まえた除外の検討は、判断の難しさや検討するタイミングによって市場における競合の状況が異なるように思われることから、実際に運用するのは難しいのではないか」と指摘。再算定品目より一日薬価が低い品目についての対象除外は、「両者の価格が拮抗することで市場競争が働くということを期待できるのであれば検討してもよいかなと思う」と述べた。
診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は、「3年間が妥当かはわからないが、類似品としての対象外とする期間については制限が必要と考える。1回だけの免除という条件を付けて対象外とする期間をもう少し伸ばすことも一案ではないか」と述べた。一方で、除外品目については、「1日薬価については、効能によって異なる場合があることや収載時の加算の有無などで1日薬価がずれている場合にどう考えればいいかなど、難しい課題がある。効能効果の重なりについてもどのようなデータに基づいて判断するのか。どの程度の重なりまでを対象にするかなど、技術的な課題があり、ルール化は困難だと考えている」と述べた。
一方、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「3年間対象除外とするのは少し長いのではないか。除外の判断に再算定品と類似品の価格水準を考慮するなど、一定の条件を付けることも必要ではないか」と述べた。
専門委員の赤名正臣氏(エーザイ常務執行役)は、「3年間という期間は通常の改定であれば1回分の猶予と考えられる。通常の特例拡大再算定は最大50%の薬価引き下げ率、通常の施行拡大再算定よりも下げ幅は大きい。再算定の対象となる薬価の改定率が数%ということを考えると、通常改定1回分の猶予ではもしかすると不十分ではないか」と理解を求めた。
◎原価計算方式 開示度50%未満の加算係数は「ゼロ」に 支払側・松本委員「妥当」
薬価制度の透明性が求められるなかで、原価計算方式における製造原価の開示度向上に向けて、見直すことも提案された。特に海外からの移転価格がブラックボックスであることも指摘されるなかで、合理的な理由がある場合を除き、他の国の移転価格を上限とする運用を明確化することを提案。開示度が50%未満の場合の加算係数を現在の「0.2」から「ゼロ」に引下げることとした。あわせて、移転価格として日本に導入される品目の企業に対しては、必要な営業利益率のデータ提出の協力を求めることも示した。
支払側の松本委員は、「これまでの議論を踏まえれば、妥当な対応」と述べた。一方で、支払側の眞田享委員(日本経済団体連合会社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理)は、「イノベーション評価推進から若干厳しすぎるのではないか」と指摘。「透明性の視点は重要で開示度の向上を図ることには全く異論はないが、企業側にはやむを得ない事情があることも想定される」との見方を示した。
専門委員の赤名氏は、「開示度50%未満すべてを計数ゼロにすると、企業が開示度を高めようとする意欲を阻害することもあるのではないかと危惧している。企業の開示度向上への取り組み、イノベーション促進への意欲をそぐことのない検討が必要ではないか」との意見を述べた。
◎新薬創出等加算 区分Ⅲをゼロから2ポイントに引上げも
新薬創出等加算の企業区分については、3区分にわかれる企業区分(企業区分Ⅰ:上位25%、区分Ⅱ:Ⅰ、Ⅲ以外、区分Ⅲ:最低点数)のうち、区分Ⅲを「2ポイント以下」に引き上げることを提案した。支払側の松本委員は、「企業側も予見性を高めながら全体としてメリハリがつく」と賛同した。なお、2020年度改定時点では、区分Ⅲに該当(ゼロポイント)は8社、2ポイントに引き上げると14社、16%程度が該当することになるという。このほか、AMRや小児用医薬品など、特定用途医薬品についての有用性加算などは、「特定用途医薬品の開発」として新たに補正加算を設けることを提案。「5~20%」の加算をつけることなども提案した。
専門委員の赤名氏は、「薬価収載後に得られたエビデンス等で評価される場合、新規の収載と同様に新薬創出等加算の対象とするという見方が必要ではないか。企業区分についてはイノベーション推進の観点から新薬開発に特に貢献している企業の薬価が確実に維持される仕組みが必要ではないか」と述べた。
◎年間1500億円超の高額医薬品 薬価算定に先立ち、中医協で算定方式の議論も
また、年間1500億円の市場規模を超える高額医薬品については通常の薬価算定の手続きに先立ち、直ちに中医協に報告し、承認内容や試験成績などに留意しつつ、薬価算定方式の議論を行うことも提案された。診療側の城守委員は、「特に異論はないが、医薬品の価値について議論するときは、様々な角度からの議論が必要であるということを認識したうえで議論の展開をしていただきたい」と要望。支払側の松本委員は、「市場規模の大きい品目に限って類似薬を柔軟に選定し、類似薬効比較方式で算定し、原価計算方式と比較しながらどちらを採用するかを検討することも一つのアイデアだと思う」と述べた。