富士製薬の岩井孝之社長は11月18日、2021年９月期（20年10月～21年９月）の決算説明会で、エムスリーのe-プロモーションサービスを用いた営業支援を女性医療領域で開始することを明らかにした。まずは今月25日に薬価収載され、年内の発売を予定している経口天然型黄体ホルモン製剤・エフメノカプセル（一般名：プロゲステロン）から開始する。岩井社長は、「ＭＲの生産性向上のため、e-プロモーションを取り入れることを決めた」と述べた。

富士製薬は20年11月に、エムスリーとの間で月経困難症治療薬「FSN-013」（開発コード、一般名：エステトロール/ドロスピレノン配合剤）を共同開発・共同販売することで合意したと発表した。FSN-013は現在、国内第３相試験段階にあるが、承認取得後はエムスリーのe-プロモーションサービスを利用することになっている。

岩井社長は決算説明会で、「エムスリーとは、『FSN-013』の開発をしっかり進めると同時に、承認された製品の販売に関して、当社の営業をより効率化するための話をしている」と明らかにした。今年９月に承認されたエフメノが、エムスリーのe-プロモーションサービスを利用する第１号となる。

エフメノは国内初の更年期関連の適応を持つ黄体ホルモン製剤で、効能・効果は「更年期障害及び卵巣欠落症状に対する卵胞ホルモン剤投与時の子宮内膜増殖症の発症抑制」――。同社によると、早くも産婦人科医から「エフメノの登場でホルモン補充療法の普及が進み、更年期世代女性のQOLが改善していくことを期待する」との声が寄せられているという。

「FSN-013」は、月経困難症治療薬市場を作ったルナベル配合錠の後継品と位置づけて開発しており、８月から第３相試験を始めた。23年９月期の申請を目指す。承認取得・上市後は、エムスリーが提供する「ＭＲ君」による営業支援や、m3.com医師会員のインサイトやビッグデータを活用したマーケティング支援を行うことになっている。

◎連結業績は増収増益　女性医療製品が好調

富士製薬の21年９月期連結業績は、売上339億9000万円（前年同期比0.6％増）、営業利益33億4900万円（6.7％増）、親会社帰属純利益24億3200万円――の増収増益だった。

長引くコロナ禍で主力の造影剤は苦戦し、21年４月の薬価改定で6.2％の影響を受けた。しかし、子宮内膜症治療薬ジエノゲスト錠の売上は17億3400万円（32.3％増）、経口避妊薬ファボワール錠は13億3100万円（30.6％増）、経口避妊薬ラベルフィーユ錠は10億200万円（16.2％増）、緊急避妊薬レボノルゲストレル錠は８億4700万円（28.2％増）――など女性医療領域の製品が２ケタ成長し、改定影響などを吸収した。

◎女性医療の売上構成比　経口避妊薬が初めてトップに

女性医療領域の売上をみると、経口避妊薬は計31億8000万円（25.1％増）、不妊症治療薬は計30億2200万円（6.1％増）となった。同社の女性医療の売上構成比はこれまで不妊症治療薬がトップだったが、経口避妊薬が今期に初めてトップに立った。経口避妊薬は５年間で３倍以上伸びたという。

女性医療製品の今後の需要増に応えるため、富山工場に新錠剤棟を建設中で、22年11月の稼働を目指す。これにより生産能力は現在の1.5億錠が4.5億錠になる。

◎22年９月期も増収増益へ　エフメノ、既存女性医療製品、プロウペスでけん引

22年９月期も増収増益を目指す。売上は360億円（10.2％増）、営業利益は35億円（4.2％増）と設定した。特にエフメノ、既存の女性医療製品、フェリング・ファーマから導入した子宮頸管熟化剤・プロウペス腟用剤、受託製造事業――の伸長を見込む。

このうちプロウペスは、妊娠37週以降の子宮頸管熟化不全における熟化の促進に用いるもの。世界70以上の国・地域で承認され、海外では標準薬として使われている。富士製薬はこのほどフェリングと事業提携し、同剤を12月１日から販売・流通することになった。富士製薬は国内約2000の周産期施設を中心に情報提供活動し、世界の標準薬の日本での普及を進める。