CSLベーリング・モランジュ社長 在宅患者向けペイシェントSP拡大へ 薬剤のホームデリバリーに意欲
公開日時 2021/08/30 04:52
CSLベーリングのジャン・マルク モランジュ社長は本誌とのインタビューに応じ、患者と医療従事者のエンゲージメントを支援するデジタル活用などに注力する考えを明らかにした。モランジュ社長は、コロナ禍により在宅患者の治療に対する不安感が増しているとの認識を示し、治療薬を継続使用している患者向け「ペイシェント・サポートプログラム」(PSP)を拡げるプロジェクトを始動したことを明らかにした。同社は薬剤のホームデリバリサービスの検討にも着手しているほか、疾患啓発サイトの充実やLINEの公式アカウントを活用したサービスも開始したところだ。
「在宅患者へのサポートや支援を行っていかなければいけないと考えている。コロナの状況をみながら、できるだけ早く患者さんに提供したい」-。とモランジュ社長は意気込む。
同社は、イデルビオン静注用のホームデリバリーについて取引卸のアルフレッサと一緒に計画している。目的は、血友病患者が病院に受診するための訪問回数を減らし、かつ薬剤運搬の負担を減らしたいとのニーズに応えるものだ。モランジュ社長は、「コロナの影響でスタートが遅れている」と述べながらも、「なんとか早く実現にもっていきたい」と強調した。
◎在宅患者へのサポート・支援を強化
一方、同社は、コロナ禍における患者の医療ニーズを探る目的でアンケート調査を実施した。モランジュ社長は、「調査の結果、希少疾患の患者は、疾患に対する心配に加えて、今回の新型コロナウイルス感染症に伴う不安が加わっていることが分かった」と指摘。「在宅で弊社の治療薬を継続使用している患者向けのペイシェント・サポートプログラム(PSP)を拡げるプロジェクトの検討に着手したところ」と明かしてくれた。その上で、「薬剤の患者宅へのデリバリーも我々の使命として実施に向けて検討していくが、これも含めて弊社の薬剤を使用している在宅患者に対するサポートや支援を行っていかなければいけない」と指摘した。
◎患者とのコミュニケーション「デジタルは重要な役割を担っている」
患者とのコミュニケーションについてモランジュ社長は、「デジタルは重要な役割を担っている」と強調する。同社は、CIDP(慢性炎症性脱髄性多発根神経炎)の患者・家族に向けた情報サイト「CIDPマイライフ」(月間15万PV)の LINE公式アカウントをオープンした。公式アカウントは、このWebサイトの掲載情報をより簡単に利活用して頂くことを目的としたものだ。一方でCSLベーリングYouTube公式チャンネルも同時期に開設し、Facebookも昨年から運用しているなど、デジタルツールを活用した患者コミュニケーションに注力している。
モランジュ社長は、「CSLベーリングが何を大切にしているかを知って頂くことに力点を置いている」と述べ、「弊社の長年の歴史や活動についてFecebookやYouTubeを通じて発信している。こうした活動を通じ、希少疾患についての理解を深めて頂いている」と強調した。
◎グローバル本社「日本への投資の重要性に理解」 新薬開発に必ず日本を含める
日本市場への取り組みについてモランジュ社長は、「日本への注力は、ここ7~ 8年くらいから強まっている。さらに血友病やCIDPの領域で弊社の治療薬が市場浸透していることからみても、グローバル的には日本の市場に魅力を感じ、本社も日本への投資の重要性に対し理解を示している」と強調。CSLグローバルの新薬開発に必ず日本を含めるという基本的な体制が敷かれていることに胸を張った。また、コロナ禍で一時止まっていた日本の臨床試験も「いまは再開しており、いくつかの臨床試験が進んでいる。これは非常に大きい。CSLベーリングの将来は明るいと思っている」と強調した。