厚労省「医薬品産業ビジョン2021案」 革新的創薬、後発品、流通にフォーカス 経済安全保障の視点を
公開日時 2021/07/29 04:52
厚生労働省の「医薬品産業ビジョン2021(案)」が7月28日、明らかになった。「医薬品産業政策等の基本的方向性」として、限りある財源を念頭に「当面、革新的創薬、後発医薬品、医薬品流通の3点に焦点を当てていくべき」とした。医薬品の研究・開発から供給までを安定的に行う「経済安全保障」の視点の重要性を指摘。「医療政策と経済安全保障政策の両面から医薬品産業政策に取り組むことが求められる」と強調した。ビジョンの骨子は、8月4日に予定される自民党社会保障制度調査会「創薬力の強化育成に関するプロジェクトチーム」で議論される。
◎冒頭で医薬品産業の意義に言及 医薬品関連部局の組織体制の見直しも
ビジョン案は、冒頭で「医薬品産業の意義」、「医薬品産業政策の必要性と意義」、「医薬品産業をめぐる環境の変化」について見解を示した。そのうえで、革新的創薬、後発医薬品、医薬品流通、経済安全保障のそれぞれについて基本的な認識と課題を示した。各論では、①研究開発、②薬事承認・保険収載、③製造、④流通、⑤国際展開―などについて具体的な施策の在り方に言及している。このほか、医薬品に関する国民の理解促進や、厚生労働省内の医薬品関連部局の組織体制の見直しにも触れた。
医薬品産業の意義については、「医薬品は医療の根幹を構成する重要な要素」とした。革新的な医薬品の開発と普及は、健康寿命の延伸に加え、日常生活や消費活動、労働投入などへも好影響を与えるとした。特にパンデミックで必要な医薬品については、水や食料と同様に生活必需物資として、「平時からの備えが経済安全保障上も重要」とした。産業政策としては、本社の所在地ではなく、「医薬品の研究・開発・製造・供給での日本への貢献という視点による産業政策の再定義が必要」とした。
◎流通 適切な価格交渉実現に向け流通改善ガイドラインで後押し 地域卸の在り方も
医薬品流通については、「卸売企業の存在意義」について明記する。物流、商流、情報提供、債権管理の4つの機能を基本的機能として果たしており、我が国の医療提供体制の置ける存在意義について改めて認識されるべきとした。物流機能については、全国の医療機関に安定供給することにより、「国民皆保険の下でのフリーアクセスを可能としている」ことの重要性、意義について、関係者を含めて改めて強く認識することが必要とした。
医薬品の価値や安定供給のための費用についての視点を欠いた過度な値引き交渉については薬価制度と相容れないと指摘した。また、本質的な医薬品の価値に基づく価格形成力があったとは言い難いとして、商慣行の見直しを含めた下支えが必要とした。国としても流通改善ガイドラインやモデル契約書の見直しなどを通じて、適切な価格交渉など流通改善の実現に向けた支援を行うとした。このほか、「地域卸の在り方」にも言及する。
◎後発品 安定供給の責任強化
後発医薬品については、品質確保と安定供給の重要性を強調。製造販売業者は品質確保と安定供給について「最終責任を負う主体」とし、GQPに基づき製造業者を的確に指導できることを求めた。製造販売業者の監督の下、GMPを遵守できる企業が製造業者としして製造・品質管理に努めることが望ましいとした。安定供給については、供給予定数量の報告のあり方も含めた法的な位置づけも含め、責任を強化することも盛り込む。
◎薬価制度における透明性・予見可能性の向上 プル型インセンティブも
医薬品の研究開発については、民間企業が行う経済活動であることから、投資に見合った対価の保証と予見可能性を高めることが重要と指摘。薬価制度についても、「透明性・予見可能性の向上」について明記し、その重要性について改めて関係者間で認識される必要性があると指摘した。ワクチンなどの定期接種化プロセスの効率化や、緊急時の国による買い上げ・プル型インセンティブの導入を検討することなども盛り込んだ。
ビジョン案は与党および関係者との調整を経て、成案化する予定。