中外製薬・奥田社長 ロナプリーブの政府購入とアクテムラ輸出の増加見通しが上振れ要因 第2四半期決算
公開日時 2021/07/27 04:51
中外製薬の奥田修代表取締役社長CEOは7月26日、2021年第2四半期決算説明会に臨み、新型コロナに対する抗体カクテル療法「ロナプリーブ」の政府購入とアクテムラ輸出の増加見通しが期初予想の上振れ要因になったと強調した。ロナプリーブの今後の需要について奥田社長は、「感染状況は不確実の要素が多く想定が困難」としながらも、22年の国内感染者数について、「当社は20~160万人の幅で想定している」と説明。政府と供給について引き続き協議するとした。
同社の第2四半期決算(21年1~6月)は、売上収益3902億円(前年同期比6.0%増)、営業利益1658億円(同15.4%増)の増収増益となった。売上伸長の要因について奥田社長は、海外でのロイヤルティ等収入及びその他の営業収入の増加によるものと指摘。このほか7月に特例承認された抗体カクテル療法「ロナプリーブ」について、「政府が一括購入して病院に無償提携する販売スキームとなっている。このため21年のロナプリーブの売上は政府調達分と言うことになる」と述べ、これらは期初予想から上振れ要因になったことを説明した。
◎ロナプリーブの投与対象患者数の見込みに言及
ロナプリーブの投与対象患者数の見込みについて奥田社長は、「当社の予測によると21年の後半の国内全体の予想感染者数は約40万人から70万人くらいと見込んでおり、このうち重症化リスクを保持している患者はだいたい20~40%くらいと想定している。さらにこの中から無症状の患者10~20%くらいと、“中等症2”以上の重症者を除いた入院患者が対象となる」と述べた。
一方、欧州におけるロナプリーブの売上実績にも触れた。奥田社長は、スイスのロシュ本社が発表した第2四半期決算から、ドイツ、イタリア、フランスの政府購入による売上実績は第1四半期166millionスイスフラン(CHF)、第2四半期は317millionCHFとなり、上半期の売上実績は483millionCHFという発表があったことも紹介した。
◎市場ポテンシャルの高い開発品の申請 次年度以降の売上成長に貢献
R&D Overviewでは、今年中に2製品の発売を控えていると説明。血液検体を用いた固形がんに対する包括的ゲノムプロファイリング(FoundationOne Liquid CDx)と、難病である脊髄性筋萎縮症の治療薬エブリスディをあげた。エブリスディについては、経口投与が可能となる薬剤で患者の利便性の高い薬剤として期待している。このほか重症COVID-19患者の予後改善に期待されるアクテムラ、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の一次治療薬ポライビー、さらにはHER2陽性乳がんに対するHER/PER配合剤の申請も控えているとし、「市場ポテンシャルの高い開発品の申請により、次年度以降の売上成長に貢献する」と強い期待を寄せた。
◎低・中分子原薬製造棟(FJ3)に過去最高額555億円を投資
同社が経営計画に明記した「自社グローバル品の毎年上市実現」に向け、静岡県藤枝市の低・中分子原薬製造棟(FJ3)に過去最高額となる555億円を投資する。低・中分子の後期臨床試験用原薬の製造と上市後の初期生産への対応を目的とするもの。一方、神奈川県横浜市に建設する「中外ライフサイエンスパーク横浜」については、1288 億円を投じ、2022年10月竣工、2023年4月の稼働を目指す方針を示した。