IQVIA 国内の新型コロナワクチン市場 21年度は2250億円 25年度までに5100億円と試算
公開日時 2021/06/25 04:51
IQVIAジャパンは6月24日、国内の新型コロナワクチンの市場規模が2021年度は2250億円、25年度までの5年間に計5100億円とする予測を発表した。21年度に16歳以上の人口の78%がワクチン接種するなど一定条件をおいて試算した。ただ、国内の医療用医薬品市場(薬価ベース)は、コロナワクチンの増分を含めても25年度まで5年間の年平均成長率はマイナス1.1%~マイナス0.1%と予測した。これまではマイナス2%~プラス1%の範囲としていたが
(記事はこちら)、今回の分析では日本はマイナス成長となる見通しを示している。毎年改定による特許切れ市場の縮小影響が大きく、新薬処方(新規、切替、追加)がコロナ以前の水準まで回復するのに23年度頃までかかることも理由としている。
国内のコロナワクチンの市場規模は、21年度2250億円、22年度500億円、23年度1150億円、24年度300億円、25年度900億円――になると予測した。
この市場規模予測は、▽16歳以上人口の78%が21年度にワクチンを接種し、22年度中に100%完了▽22年度半ばから12~15歳へ対象を拡大▽23年度以降は免疫保持のために追加接種し、2年に1回接種▽1接種あたりのワクチン費用は1300円――が前提条件となる。
同社の高山莉理子・ソートリーダーシップマネージャーは、この日のメディアセミナーで、今年3月時点の情報に基づいた試算であることに加え、「ワクチンの効果持続期間もまだ不確か」として、不明点が多いことにも留意が必要だと説明。あくまで一定条件下での試算であることを強調した。
◎25年度までの国内医薬品市場 特許品2.5~2.6兆円増 特許切れ2.9~3.0兆円減
コロナワクチンの増分を含む国内の医療用医薬品市場(薬価ベース)は、20年度は10.6兆円だが、25年度には10.2~10.4兆円に縮小すると分析した。この市場規模には、医薬品卸から医療機関への納入実績に加え、▽一部後発品の直接取引分▽政府管理下のコロナワクチン分――の推計値が含まれる。世界は今後5年間に年平均4.9%伸びる見通しのなか、日本は唯一のマイナス成長国になる可能性がある。
国内市場を詳細に見ると、特許品市場は2.5~2.6兆円伸びる一方で、特許切れ市場は2.9~3.0兆円が減少する。マイナス成長となる理由は、特許品市場と特許切れ市場のバランスが取れていないため。高山氏は、「ワクチン開発では欧米企業の後塵を拝し、国内市場もマイナス成長になる。メリハリのある政策で新薬開発を後押しすることが日本の患者や国民の利益につながると強く考えている」と述べ、薬剤費の削減分を新薬評価に振り向ける政策の必要性を訴えた。
◎特許切れ市場 長期収載品は3.0~3.1兆円減 後発品市場は950~1150億円増も低成長に
特許切れ市場の内訳をみると長期収載品市場が3.0~3.1兆円減となる一方で、後発品市場は950~1150億円増となる。後発品市場は過去5年間で4300億円伸びており、4分の1程度に圧縮されることとなる。
毎年薬価改定で価格が継続的に下がる可能性が高いことや、後発品数量シェアが80%に近づくなかでこれまでほどの数量面の伸びが期待できないことを理由として説明した。高山氏は、「後発品市場は次の5年で転換点を迎える」と指摘し、「安定供給や品質保持にこれまで以上にコストがかかる。ある程度の企業の集約が進むと考えている」と話した。
◎新薬の新規処方「過去12~18か月は非常に低調」
同社は、調剤レセプトベースで20年度の処方動向を分析した結果も公表した。新薬の新規処方や切替処方、追加処方で構成する「ダイナミック(動的)市場」の成長率が前年度比で半減したことを明らかにした。新薬では長期処方解禁前に
14日間の処方制限がある。有効性・安全性が確立されていないことから、きめ細やかなモニタリングやアウトカム評価が必要となる。このため、同社のアラン・トーマス・ソートリーダーシップディレクターは、コロナ禍で患者が受診を控えがおきるなかで、医師側も新薬の処方に踏み切りづらい状況にあったことを指摘。「特に、新薬の新規処方が過去12~18か月は非常に低調だった」と解説した。