大日本住友・野村社長 ナパブカシン開発中止に伴う中期経営計画2022の改定 北米製品を当面収益基盤に
公開日時 2021/05/13 04:51
大日本住友製薬の野村博社長は5月12日、2020年度決算・中期経営計画2022改定に関する記者説明会に臨み、ポスト・ラツーダとして期待したナパブカシンの開発中止に伴う中期経営計画の改定について説明した。22年度経営目標のうち売上収益については、19年4月公表時の6000億円を維持するものの、コア営業利益については、当初の1200億円から600億円に減額した。ナパブカシンで見込んでいた部分を、Roivant社との戦略的提携で獲得したレルゴリクス、ビベグロンを当面の収益基盤に充て、その間に、中⻑期的成⻑に向けた研究開発の推進や体質強化に向けた基盤強化策に取り組む方向を示した。
同社は中期経営計画策定の段階でポスト・ラツーダの筆頭に膵がんや結腸・直腸がんの治療薬・ナパブカシンに強い期待を寄せていた。ただ、19年7月に膵がんの臨床第3相試験が中止に、21年2月には結腸直腸がんの臨床第3相試験で主要評価項⽬が未達となり、翌3月に開発を中止した。これに伴い中⻑期的な事業⾒通しに⼤幅な変化が生じる。21年3月期業績においては、同剤の仕掛研究開発を全額減損し、減損損失を269億円(2億5400万米ドル)計上していた。
今回発表した中期経営計画2022の改定によると、同時期に進めていたRoivant社との戦略的提携を踏まえ、2023年以降の早期に収益貢献が期待できるレルゴリクス(マイオバント社)とビベグロン(ユーロバント社)を充てる判断をした。北米で前立腺がんの適応をもつレルゴリクスについては、ファイザーとのコ・プロモーションにより速やかな市場浸透と製品価値の最大化を図る。子宮筋腫、子宮内膜症は、米欧とも申請中。一方、北米で過活動膀胱の適応をもつビベグロンについては、ユーロバント社、サノビオン社のグループ連携により、泌尿器科専⾨医、⻑期療養施設、処⽅頻度の高いプライマリケア医を対象とした営業体制を構築し、早期の製品価値最⼤化を実現する。
このほかに、成長エンジンの確立として、大型化やグローバル展開が期待できる開発品への投資や精神神経領域での製品創出、モダリティ展開による新たな治療法への挑戦、フロンティア事業の展開加速などに取り組む方針を明示した。そのほか、独占販売期間終了品や研究開発アセットの売却による収益性の改善などにも取り組む。
◎野村社長「大日本の商号が消えるのは寂しい」が「ヘルスケアの会社を全面に出す時」
この日の会見では、社名を「住友ファーマ」に22年4月1日から変更する方針が野村社長より示された(
関連記事)。野村社長は、「大日本という商号が消えてしまうのは寂しい」と強調。1897年に日本初の製薬を主体とする株式会社として発足した経緯がある。社章を表す「マルピー」という愛称で親しまれてきた。「社員の中にも大日本製薬出身の方もいることから、寂しく思われる方もいる。しかしながら、会社も合併時から変わっているので、新しいステージになるということで社名を変えた」との経緯を説明した。一方で、住友グループとしての意義にも触れ、「グループの中でファーマという言い方の中に、単に医薬品だけでなく、再生・細胞医療やフロンティア事業など、ヘルスケアに関する様々なことをやっている会社ということを全面に出していこう」という意味を込めたものであるとも述べた。
【20年度連結業績(前年同期比) 21年度予想(前年同期比)】
売上高 5159億5200万円(6.9%増) 5780億円(12.0%増)
営業利益 712億2400万円(14.4%減) 610億円(14.4%減)
親会社帰属純利益 562億1900万円(
38.0%増) 410億円(27.1%減)
【国内主要製品売上高(前年同期実績) 21年度予想、億円】
エクア・エクメット*1 401(171)374
トルリシティ*2 339(300)382
トレリーフ 162(162)179
リプレガル 138(133)138
メトグルコ 91(96)69
ラツーダ 24(-)67
ロナセンテープ 13(5)25
アムロジン 65(76)50
AG品 80(74)101
仕切価ベース
*1はプロモーションのフィー収入は除く
*2は薬価ベースの数値
(訂正)下線部の表記に誤りがりました。訂正します。(修正済 5月13日9時40分)