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日本新薬・中井社長 ビルテプソの国際共同P3結果速報「残念に思う」 情報整理して当局と話し合いたい

公開日時 2024/05/29 04:51
日本新薬の中井亨代表取締役社長は5月28日、第7次5カ年中期経営計画(2024年度~28年度)説明会に臨み、前日の27日に発表したデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療薬・ビルテプソの国際共同第3相RACER53試験結果速報で、主要評価項目が未達だったことを受け、「残念に思っている。規制当局や医療機関等に情報提供を開始したところであり、今のところ、将来どうなっていくか正確にはよく分からない」と述べた。承認取り消しになる可能性について、「当局との話し合いの中で、そういう方向性が出てくることは決してゼロではないが、我々としては世の中に残していく意義のある薬剤であると考えている」と語った。

ビルテプソを巡っては、国内第1/2相試験と北米第2相試験結果等に基づき、日本では20年3月に条件付き早期承認制度により承認を取得、米国では同年8月に迅速承認を取得した。両試験を通じて、主要評価項目のジストロフィン発現の増加が認められたことから、運動機能に対する有効性が期待できると判断されたもの。このため、規制当局から製造販売後に有効性について引き続き検討する必要性が指摘され、プラセボ群を対照として、床上起き上がり時間を主要評価項目とした第3相RACER53試験の結果が注目されていた

◎DMD治療薬が殆どない状況で「適用患者さんには必要な薬剤であると考えている」

前日5月27日には主要評価項目未達となったことが発表された。中井社長は「北米第2相試験と、その継続投与試験(投与開始4年後)で有効性・安全性が示され、今回の第3相試験では安全性の面で特に大きな問題はないという状況であり、さらにDMD治療薬がほとんどない状況で、ビルテプソが適用される患者さんには必要な薬剤であると考えている」と語った。

また、規制当局との交渉に当たって、「結果を出すのが難しい疾患であるといことは当局も認識しているはずであろうし、他の薬剤の評価もしているので、そういった意味では、(主要評価項目を)達成した、達成していないだけで簡単に判断できるような疾患領域ではないということなので、検証試験の難しさだとか、疾患領域での薬剤の無さ、というような状況なども総合的に判断されると考えており、我々もきちんと情報を整理して当局と話し合いを進めていきたい」と述べた。

なお、24年5月10日の23年度決算で開示された、23年度のビルテプソの売上は、日本で前期比6.5%増の44億700万円、米国で28.6%増の131億2300万円で、24年度予想は日本で46億円、米国で155億円となっている。

日米以外の市場でのビルテプソの展開については、21年6月に中国で承認申請したことを発表していたが、22年5月の21年度決算会見の場で、「当局との相談の中で日米での早期承認のために使った試験の症例数では若干少ないというコメントをいただき、第3相試験の結果をもって再申請することを推奨された」として、取り下げた経緯を説明。また、欧州での状況についても、「当局との話し合いの中で現在進んでいる第3相試験が終了してから、そのデータを用いて申請するということになった」と説明していた。

◎新中計 ビルテプソの追加第3相試験実施 28年度に欧州・中国での承認・上市目指す

新中計は、第3相試験の主要評価項目未達を織り込み、ビルテプソの追加の第3相試験を実施し、従来計画より2年遅れの28年度に欧州・中国での承認・上市を目指すとした。追加の第3相試験について中井社長は「これから試験データをきちんと分析して当局と交渉してから内容が決まっていく。分析の結果、もう一度試験をして、きちんと検証していけると分かったら、それに従って進めていきたいというのが我々の現時点での思いだ」と述べた。

◎新中計の最終28年度の売上目標は2300億円 うち医療用医薬品は2030億円

新中計の最終28年度の売上目標は2300億円(24年度予想1500億円)で、24年度比800億円の増加、うち医療用医薬品は2030億円(同1285億円)で同745億円の増加を計画している。27年度に肺高血圧症治療薬・ウプトラビの特許切れを迎え、現在400億円を超える規模に達しているウプトラビのロイヤリティ収入を含む工業所有権等収益が、28年度に大幅に減少する見通しにもかかわらず、強気の計画となっている。

中井社長は「原則個別品目の売上計画の開示は差し控えている。注力3領域(血液領域、肺高血圧症領域(ウプトラビのロイヤリティ除く)、小児神経内科領域)でグローバル売上1300 億円以上を目指す」と説明した。ウプトラビに替わる成長ドライバーとして、グローバルでDMD治療薬群(細胞治療CAP-1002、核酸医薬)、国内で血液がん新製品群(ビキセオス、ピルトブルチニブ、NS-401)および PLCM 群(ガザイバの腎疾患群、フィンテプラ、ウプトラビ小児・高用量製剤) を挙げた。

国内では血液、肺高血圧症、小児神経内科を最注力領域とし、既存製品の効能追加や新製品発売の際には、早期の立上げを最優先にMRチャネルとデジタルチャネルを活用したオムニチャネルでの活動を推進する。国内人員を増加させることなく、全社DX 推進を担う「変革人財」の育成を進める。

研究開発費は5年間で1900億円(年平均380億円))を投じる。新研究棟の建設など設備投資は総額380億円を計画。核酸創薬と低分子医薬創薬の特長を組み合わせた「核酸・低分子複合体創薬」の開発などに取り組む。M&Aや導入などの成長投資や自己株式の取得を含めた機動的アロケーションは上限1000億円と設定した。
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