沢井製薬の澤井健造社長は本誌インタビューに応じ、5月に発表する新中期経営計画に、「生産本部、信頼性保証本部がいまの状況を捉えて、どんな考えで、どう進むのか、変わる部分はどう変わるのか、について本部方針を示すことになると思う」と強調した。行政処分を伴う後発品企業の一連の問題を踏まえたもの。澤井社長は、「世の中にはジェネリック全体の問題と捉える方と、会社の問題だと捉える方の両方がある」と指摘。「ジェネリック全体として捉えられ、ご心配をおかけしていることもある。我々としては心配していただかなくても良いように、沢井製薬の姿勢に理解をいただく活動に努めたい」と強調した。同社は、品質・安定供給への取り組みを紹介するパンフレットを作成し、2019年4月からMRを通じて医療関係者に配付している。こうした活動を今後も継続し、サワイジェネリックへの信頼に理解を求める方針だ。

◎「自社をいま一度見直し、リスクはないのかチェックを行っている」

多くの後発品企業が政府の後発品使用促進策を追い風に成長を遂げてきた。当初掲げた数量シェア80％目標には若干届かなかったものの、次なる政策目標を決める議論への機運も高まっていた。そこに水を差したのが、小林化工と日医工の行政処分を伴う問題だ。「いまは正直、そういった議論ができる状況にない」－。後発品数量シェア80％後を見据えた新たな目標設定に対する政府部内の温度感についての澤井社長の認識だ。「その前にやるべきことがあるだろう」という論調もあると指摘する、こうした状況に澤井社長は、まずは「今回の件を受けて、自社をいま一度見直し、そういうリスクはないのか、その辺のチェックを行っている」と述べた。

◎大切なのは社内の体制や社員のフィロソフィー

一連の問題の背景について澤井社長は、あくまで一般論と断りながら、「急激な市場の拡大に伴い安定供給が求められた。また共同開発として何社か分の製造を委託されることも増えた。それに社内の体制や社員のフィロソフィーが、世の中の動きについていけなくなって、歪みが生じてきたのかなとも思う」と指摘した。

そのうえで、「（沢井製薬は）自らジェネリックの浸透を促進する活動を行ってきた面もあるが、それにあわせて工場の生産体制の拡充などを、余裕をもってやってくることができた。長い年月をかけていまの規模まできた。初期の頃、急激に伸びだした時には組織的についていくのが大変な時期もあった。ただ、それでも落ち着いて、常に余裕をしっかり持った形で先行投資を行ってきたので、（今回の事案とは）少し事情は違うと感じている」との見解を示した。

◎企業理念の重要性を強調

澤井社長はまた、企業理念の重要性を強調した。沢井製薬は企業理念に“なによりも患者さんのために”を掲げ、これに基づく活動に注力している。澤井社長は、「企業理念の策定に際し、社員全員が検討に参画し、部門横断的に議論を行った」と強調。企業理念に基づく行動基準も策定したほか、社員が自主的に行う地域への貢献活動を会社が支援し、表彰するなど、「こうした活動を通じて社員の倫理観やフィロソフィーが育ってきていると思う」と述べた。

◎ＭＲを通じ、医療関係者に品質管理や安定供給に関する情報提供に注力も

澤井社長は、同社の品質確保や安定供給への理解を求める活動に言及した。ＭＲを通じ、医療関係者に対し、品質管理や安定供給に関する情報提供を引き続き行っていく考えだ。こうした活動は2019年4月から実施しており、パンフレットも複数用意してあるという。品質管理体制、安定供給体制それぞれについてイラストを交えて紹介、品質管理のパンフレットには、「工場見学VR動画」を視聴するためのＱＲコードも掲載している。澤井社長は、「（医療従事者や患者に対して）心配していただかなくてもいいように、沢井製薬の取り組みや姿勢について、広くご理解いただく活動を引き続き行っていきたい」と意欲を示した。

◎サワイグループHD　GE事業が基盤　各事業の投資判断をスピーディにできる体制に

沢井製薬は4月1日付で持株会社体制に移行するため、サワイグループホールディングスを設立する。澤井社長は、「中心事業がジェネリック事業であることは変わらない。それ以外の新規事業についてもチャレンジしていこうとする方向性の中で、より多くの企業と提携していくことや、各事業に対して投資判断する際に、スピーディに判断できることなどがある」とサワイグループHD設立の意義を語ってくれた。また5月には新中期経営計画と長期ビジョンを発表することを明らかにした。澤井社長は、「昨今のジェネリック業界の様々な事象もあるが、沢井製薬のシェアは益々高めていけるのではないかと考えており、しっかりやっていかなければいけないと考えている」と力を込めた。