季節性インフルエンザの流行なし 患者数、21年2月も直近5年平均の約1070分の1
公開日時 2021/03/11 04:50
新型コロナウイルスとインフルエンザのダブルパンデミックが懸念されていたが、2021年2月もインフルエンザの流行は確認されなかった。調剤レセプトベースで実際の処方動向を把握・分析する医療情報総合研究所(通称:JMIRI、読み:ジェイミリ)のデータによると、2月のインフルエンザ患者数は16年~20年の直近5年間の2月平均と比較して約1070分の1だった。1月も直近5年間の1月平均の1000分の1にとどまった。インフルエンザ患者数は例年、1月に急増し、2月にピークを迎えるが、今シーズンは患者がほとんど見られないうえ、2月に減少局面に入った。JMIRIは、「今シーズンは季節性インフルエンザの流行なく終焉を迎えそう」としている。
JMIRIは、「今シーズンほどインフルエンザの患者数が少ない年は直近10年で例がなく、特異的な年だった」と指摘した。手洗い、うがい、マスク着用、ソーシャルディスタンスといった基本的な感染症対策の徹底もあり、「新型コロナとインフルエンザの同時流行という最悪の事態は回避できたようだ」としている。
同社データによると、16年以降の2月のインフルエンザ患者数は、16年10万3451人、17年6万7950人、18年10万3451人、19年4万6500人、20年1万7147人、21年61人――で、21年のインフルエンザ患者は極端に少ない。今シーズンの患者数を月次でみると、20年12月141人、21年1月87人、2月61人――で、12月をピークに減少の一途にあることがわかる。なお、今回の分析に用いた「インフルエンザ患者数」は、院外調剤薬局で調剤可能なオセルタミビル、ザナミビル、ラニナミビル、バロキサビルを処方された患者のこと。
■受診行動「戻りつつある」
2回目の緊急事態宣言の影響で、1月の処方患者数は前年同月比13%減に落ち込んだが、2月は同10%減と回復傾向がみられた。1回あたりの平均処方日数は、1月は前年同月比15%増だったが、2月は同11%増となった。JMIRIは、「新型コロナの新規感染者数が減少傾向となったこともあり、受診行動も元に戻りつつあるようだ」としている。
ただ、新型コロナの新規感染者数の減少スピードの鈍化や首都圏1都3県の緊急事態宣言延長など、再度受診控えが起こる要素もあることから、「引き続き動きを見ていく必要がある」としている。
このほか、20年12月、21年1月と受診者数が前年同月比で大きく減少していた救命救急科も、2月に入って受診者数が回復傾向にあることが確認された。12月は前年同月比40%減、1月は同52%減だったが、2月は同23%減だった。1月から29ポイント増えたことになる。JMIRIは、「新型コロナの重症者も減少し、医療現場のひっ迫具合が緩和された結果と考えられる」と分析している。