小林化工への行政処分 イトラコナゾール錠など製造実態 承認外手順書や二重帳簿、試験結果のねつ造も
公開日時 2021/02/09 15:45
福井県は2月9日、小林化工に対し睡眠導入剤混入事案の行政処分を行ったが、この中で問題の発端となった経口抗真菌剤イトラコナゾール錠50「MEEK」(ロット番号:T0EG08)の製造実態も明らかにした。同社への立入検査などを踏まえたもので、小林化工は立入検査用に「虚偽の記録(二重帳簿)」を作成していたことが分かった。また、承認していない工程に関する作業教育は「口伝のみ」で、教育記録も残していなかった。さらに、イトラコナゾール錠以外の製造品の製造工程においても、二重帳簿の存在や製品試験を実施せず結果のねつ造を行っていたことも発覚した。行政側は、こうした承認事項から、「逸脱した製造や二重帳簿について経営陣や製造管理者が黙認していた」と指摘。問題の深さが浮かび上がった。
小林化工への行政処分は、業務停止期間116日という過去最長となった。福井県、厚労省、PMDAはこの間、同社への立入検査を実施し、問題の事案の解明を行った。問題となったイトラコナゾール錠については、①原薬(睡眠導入剤の混入)の取り違え、②取り違えた原薬を工程の途中で継ぎ足し、③品質試験で異常がみられたが検証せず出荷―の各段階での問題やミスを明らかにした。
◎承認していない工程に関する作業教育は口伝えのみ
本来使用する原薬と睡眠導入剤の原薬との取り違えについては、本来2人体制で作業を実施するところを、「人員不足により1人で作業した」と報告した。製造工程における原薬の継ぎ足しについては、「途中の継ぎ足しが厚労省の承認外の工程」だったにも関わらず、承認外手順書が存在していたことも明らかにした。さらに、福井県など行政側の立入検査用に虚偽の記録(二重帳簿)を作成していたことや、「承認していない工程に関する作業教育は口伝えのみ」で教育記録も残していなかったことも分かった。
一方、品質試験において異常が見られたものの、検証せずに出荷したことについては、一部試験の未実施や試験結果のねつ造、さらに異常データの検出に際し、原因究明が未実施だったことが発覚した。
◎イトラコナゾール錠以外の製造実態 品質確認の試験を実施せず「結果をねつ造」
同社への立入検査では、イトラコナゾール錠以外の製品の製造実態についても調査を行った。その結果、「原料管理」の段階において、品質確認の試験を実施せずに「結果をねつ造」していたほか、人員不足から原薬を取り出す際の確認を1人で実施していたことが分かった。また「製造」工程においては、承認された製造方法を「必要な検証や、行政への手続きを行わずに変更、承認外手順の存在」が明らかになった。また、立入検査用に虚偽の記録(二重帳簿)を作成していたほか、承認外の工程に関する作業教育も「口伝え」で行われ、教育が行われたかどうか不明確な状態だったと報告している。
「品質試験」については、一部項目について「製品試験を実施せずに結果をねつ造」したほか、承認書や手順に従わない方法で試験を実施していた。また、合格するまで試験を繰り返し実施していたことも分かった。「出荷」については、原料管理、製造、品質試験の各段階での実態を考慮せずに製品を出荷していたことも明らかになっている。また、こうした工程において、「承認から逸脱した製造や二重帳簿について、経営陣、製造管理者は黙認していた」とも断じた。