医療経済実態調査は単月調査を追加実施へ 最終判断は5月頃に 中医協調査実施小委員会
公開日時 2021/02/04 04:50
中医協調査実施小委員会は2月3日、2022年度診療報酬改定の基礎データとなる医療経済実態調査の実施案について大筋で了承した。通常の調査に加えて、項目を簡素化した「単月調査」を実施することも盛り込まれている。新型コロナウイルス感染症の影響が比較的少ない月単位の損益状況を比較することで、20年度改定の医療機関経営への影響を把握したい考えだ。ただ、厚労省側は、単月調査について緊急事態宣言が発令されるなど、新型コロナウイルス感染症が医療現場に大きな影響を与えている場合には実施は難しいとの認識も示した。最終的に実施するかは、5月頃に判断する。
医療経済実態調査は通常、診療報酬改定前後の2年度の医療機関の損益状況を把握するもので、次期診療報酬改定の基礎資料となる。しかし、新型コロナウイルス感染症が医療機関経営に大きな影響を与えているなかで、通常の調査による単純な比較だけでは20年度改定の影響が十分に把握できないと厚労省は判断。比較的新型コロナの影響が少ないと思われる月単位の調査を追加で実施し、損益を比較することを提案していた。
◎調査項目は11項目に簡素化 新型コロナの受け入れ状況なども調査
この日の中医協に厚労省は、単月調査の項目として通常の49項目から、収益や費用などの内訳を省略し、11項目に簡素化することを提案した。
新型コロナ患者の受入状況に関する調査項目については、病院の基本データの項目に「重点医療機関、協力医療機関の指定状況」、「新型コロナ入院患者の受入状況」を追加。一般診療所については、基本データの項目に、「診療・検査医療機関の指定状況」や「新型コロナウイルス感染症疑い患者の受入状況」という項目を追加することを提案した。また、医療機関の決算月によって、新型コロナの影響が異なることを踏まえ、3月決算の施設のみを集計した結果についても公表することを提案した。
保険薬局の項目については、「医薬品等費」の内訳として、「調剤用医薬品費」、「一般用医薬品費」などの項目を追加することを提案した。また、特定の保険医療機関との不動産の賃貸借関係の実態を把握する観点から、「賃貸 借関係がある場合、賃貸借している不動産の種類(土地・建物か、それ以外か)」を問う項目を追加することも提案。診療・支払各側は大筋で了承した。
◎単月調査に診療側・今村委員「医療機関経営の実態をより正確に把握を」 支払側は実施強く求める
診療側からは実施可否について、慎重な判断を求める声があがった。診療側の今村聡委員(日本医師会副会長)は、「単月調査を実施するのであれば、医療機関経営の実態をより正確に把握できるようにしていただきたい」と述べた。特に、労働集約型産業である医療はコロナの影響を問わず、人件費の占める割合が大きいと指摘。「感染予防策の徹底による経費増加や施設運用の変更等による収入減少の傾向は、コロナの影響が少ない月でも継続していると予想される」と述べ、こうした特徴を踏まえた分析を求めた。
支払側は、単月調査の実施を前提とすることを求めた。支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)が「新型コロナの状況の分析を適正に調査して評価するという観点から考えると、単月調査は内容を簡潔にしながらも経営実態がより明確になるような形での工夫もいれて、単月調査は実施すべき」との考えを示した。
厚労省側は、緊急事態宣言の発令などがある場合は実施に難色を示したが、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「限りなく実施する方向で準備していただきたい。1つの地域で出たらやめてしまうという発言があったが見直したほうがいいのではないか」と述べた。