薬食審・第二部会 新薬3製品の承認了承 変形性関節症薬ジョイクル、足関節は不可
公開日時 2021/02/01 04:50
厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会は1月29日、新薬3製品の承認の可否を審議し、いずれも承認することを了承した。3製品は変形性関節症薬ジョイクル関節注(一般名:ジクロフェナクエタルヒアルロン酸ナトリウム、申請企業:生化学工業)、T細胞リンパ腫治療薬レミトロ点滴静注用(同デニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え)、エーザイ)、NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発固形がん治療薬ヴァイトラックビカプセル(同ラロトレクチ二ブ硫酸塩、バイエル薬品)――となる。
ジョイクルは前回の部会で継続審議となり、この日が2度目の審議となった。当初、膝関節、股関節、足関節の変形性関節症(OA)を予定適応としていたが、この日の審議で足関節に対する有効性に疑問符が付き、結果、足関節OAを除く膝関節と股関節のOAに対する治療薬として承認することが了承された。
3製品とも新有効成分含有医薬品のため、3月中に正式承認されるとみられる。
PMDAの審査段階で承認して差し支えないとされた報告品目は2品目で、この中にがん免疫療法薬バベンチオ(同アベルマブ(遺伝子組換え)、メルクバイオファーマ)に尿路上皮がんにおける一次化学療法後の維持治療の効能を追加することが含まれる。
今回の追加効能は、プラチナ製剤を含む一次化学療法後に疾患進行が認められない状態でバベンチオを投与できるようにするもので、同様の効能・効果を持つ免疫療法薬はない。なお、疾患進行が認められた場合にはキイトルーダの投与などが行われている。報告品目は2月中に正式承認されるとみられる。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽ジョイクル関節注30mg(ジクロフェナクエタルヒアルロン酸ナトリウム、生化学工業):「変形性関節症(膝関節、股関節)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
生化学独自の薬剤結合技術を用いてヒアルロン酸とNSAIDsのジクロフェナクを化学結合させた薬剤。ヒアルロン酸による関節機能改善効果に加え、徐放されるように設計されたジクロフェナクの鎮痛・抗炎症作用を併せ持つとされる。4週間ごとに関節腔内に投与して用いる。
膝関節の変形性関節症(膝OA)治療に用いる既存のヒアルロン酸の関節内注射剤は、1週間ごとの投与となる。ジョイクルは4週間ごと投与のため、この日の部会では患者負担の軽減につながると判断され、承認が了承された。継続審議とした前回の部会では、既承認のNSAIDsを内服してヒアルロン酸を注射することとジョイクルとで何が違うのかといった臨床的位置づけも議論となったが、ジョイクルの4週間ごと投与というメリットが評価された格好だ。
ただし、関節ごとの有効性評価のデータから、当初申請していた足関節OAに関しては有効性が認められないとして、膝関節と股関節のOAのみ承認が了承された。承認取得後は小野薬品が販売及び情報提供・収集活動を行う。
海外では20年10月現在、承認されている国・地域はない。
▽レミトロ点滴静注用300μg(デニロイキン ジフチトクス(遺伝子組換え)、エーザイ):「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫および再発又は難治性の皮膚T細胞性リンパ腫」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議の評価をふまえた開発要請品目。
ジフテリア毒素の一部のアミノ酸配列と、インターロイキン2(IL-2)の全アミノ酸配列を融合した遺伝子組換え融合タンパク質。腫瘍細胞の細胞膜上に発現するIL-2受容体に結合し、細胞内に取り込まれた後にジフテリア毒素が切断され、遊離したジフテリア毒素がタンパク合成を阻害することなどにより腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられている。
海外では20年10月現在、再発又は難治性の皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)で米国でのみ承認されている。再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)で承認されている国・地域はない。
▽ヴァイトラックビカプセル25mg、同カプセル100mg、同内用液20mg/mL(ラロトレクチニブ硫酸塩、バイエル薬品):「NTRK 融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
トロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)阻害薬。神経栄養因子チロシンキナーゼ(NTRK)遺伝子融合と呼ばれる稀なゲノム変化を有する局所進行性または転移性の成人及び小児固形がんに特化した治療薬として開発された。
TRK融合を有するがんは、NTRK遺伝子が別の無関係の遺伝子と融合し、通常と異なるTRKタンパク質が生じることで起こる。TRK融合タンパク質は恒常的に活性化フォームを取るか、過剰発現し、細胞内の増殖シグナル伝達の活性を誘発する。これらのTRK融合タンパク質は、体内の発生部位にかかわらず、がん患者のがんの広がりや増殖を促進する発がん性ドライバーとして作用する。国内申請に用いた臨床試験では肺がん、甲状腺がん、悪性黒色腫、消化管間質腫瘍、大腸がん、軟部肉腫、胆管がんなど20以上の組織型にわたる固形がんで評価された。
同剤は、中外製薬の遺伝子変異解析プログラム・FoundationOne CDx がんゲノムプロファイルでラロトレクチニブの有効性が期待されるTRK融合がんかどうかを調べた上で使用する。類薬には中外のロズリートレクカプセル(一般名:エヌトレクチニブ)があり、同様の位置づけとなる。
海外では20年10月時点で、42の国・地域で承認済み。
【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽ダウノマイシン静注用20mg(ダウノルビシン塩酸塩、Meiji Seikaファルマ):「急性白血病(慢性骨髄性白血病の急性転化を含む」を効能・効果とする新用量医薬品。公知申請。再審査期間なし。
アントラサイクリン系抗腫瘍性抗生物質。腫瘍細胞のDNAと複合体を形成して、DNA及びRNAの生合成を阻害することで腫瘍の増殖を抑制すると考えられている。
同剤を含む化学療法レジメンは、急性白血病の標準療法として国内外の診療ガイドラインで推奨されているが、用法・用量は同剤が急性白血病の治療薬として承認を取得した1970年時と異なる。このため、標準療法で用いられる用法・用量に合わせるため今回、診療ガイドラインや公表論文などの公知情報に基づき、高用量投与に係る申請が行われた。今回報告された高用量投与は医療現場で実際に使われている。
海外では20年10月時点で、急性白血病に係る効能・効果で20以上の国・地域で承認済み。
▽バベンチオ点滴静注200mg(アベルマブ(遺伝子組換え)、メルクバイオファーマ):「根治切除不能な尿路上皮がんにおける化学療法後の維持療法」を効能・効果とする新効能医薬品。再審査期間は残余(2025年10月19日まで)。最適使用推進GL作成対象医薬品。
がん免疫療法薬の抗PD-L1抗体。メルクバイオファーマとファイザーが共同開発したもの。
プラチナ製剤を含む一次化学療法が実施された局所進行または遠隔転移を有する尿路上皮がん患者に対しては、経過観察が行われ、疾患進行が認められた場合には免疫療法薬キイトルーダ(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え))の投与などが行われる。バベンチオの今回の追加効能は、疾患進行が認められない状態で使用できるもので、同様の効能・効果を持つ免疫療法薬はない。
海外では20年10月時点で、根治切除不能な尿路上皮がんにおける化学療法後の維持療法の効能・効果で米国を含む2か国で承認済み。
【訂正】下線部の表記に誤りがありました。訂正します。(2月1日12時50分)