伊藤忠 医薬品情報サイト「ヤクジエン」でリモートMRサービス開始 先発企業3社が利用
公開日時 2021/02/08 04:52
伊藤忠商事は2月から、同社の医薬品情報サイト「ヤクジエン」の新機能として、リモートMRサービスの提供を始めた。MRから直接話を聞きたいとの医療従事者の申し出を同サイト上で受け付けて製薬企業につなぎ、製薬企業MRが情報提供する。まず医師向けサービスとして始め、今後、利用対象を薬剤師に広げることを検討する。現時点では大手の先発品企業3社が同サービスを利用する。伊藤忠は、「ヤクジエンは製薬企業と連携することができる唯一の医薬品情報サイト。医療現場のDX化を支援する」としている。
同サービスを利用する製薬企業3社の社名は開示していない。伊藤忠は2021年度中に同サービスの利用企業を10社まで増やしたい考え。
■リモート面談に至る過程 AIで分析も
医師は、製薬企業からオンラインで薬剤説明を受けたいと思った場合、同サイト上から予約申し込みができる。予約といっても、医師はリモート面談の希望日時を入力する必要はなく、製薬企業に「薬剤説明を受けたい」との希望を伝えることのみのシンプルな設計にした。伊藤忠は、「医師側の“スケジュール確認”という手間を極力下げるため」とそのねらいを説明している。
予約申込みでは、▽製薬企業のオウンドサイト/リモート面談ページに連携する▽製薬企業指定のメールアドレスに通知する――といった方法で、医師と製薬企業をつなぐ。そして、製薬企業MRが医師にメールか電話でアプローチし、リモート面談につなげる。
ヤクジエンには、Zoomなどのオンライン面談システムは導入しなかった。製薬企業が求めるセキュリティレベルや、ヤクジエン経由のリモート面談のユーザビリティの観点から、面談システムは製薬企業に委ねた方が良いと判断したという。実際、多くの製薬企業でセキュアなリモート面談システムを実装している。
また、伊藤忠は今回、データ活用のリーディングカンパニーのブレインパッド社(東京都港区)とともに、医師がヤクジエン経由でリモート面談を申し込んだ過程で閲覧したページや製品などの情報をAIで分析し、製薬企業のマーケティングなどに活かせる新サービスの検討も本格化させた。この医師の行動分析を行うねらいについて伊藤忠は本誌に、「データに基づく顧客行動の『見える化』をすることで、様々な最適化につながると考えている」と説明した。
ヤクジエンは2万以上の医療用医薬品情報を持ち、販売名、一般名、識別コードのいずれかで簡単に薬剤を検索できる。在宅医療の訪問看護師らを想定し、効果や、用法及び安全性に関する注意点の平易な表現を掲載したほか、同成分の薬の比較表をカスタマイズで作成できることが特長のひとつとなる。ユーザー数や閲覧数は非開示。利用職種は薬剤師(26%)、医師(19%)、看護師(17%)、その他(38%)――と薬剤師が最も多い。