エーザイ・内藤CEO DXで国内事業構造改革を加速 デジタルソリューション軸に情報提供活動を強化
公開日時 2020/11/06 04:52
エーザイの内藤晴夫代表執行役CEOは11月5日の2020年度第2四半期決算会見(電話会議)に臨み、DXを企図した国内の事業構造改革を加速する考えを表明した。10月には社内に「HX本部」、「ADF推進本部」、「CX本部」を立ちあげて準備活動を行ってきた。内藤CEOは、「デジタルを駆使しながら医療の専門家に対する情報提供の質的向上を図る」と述べ、新たなCRM構築やデジタル情報を一定のポピュレーションに伝達する仕組みの構築、実診療データ(RWD)の利活用により、新たな便益を見いだす取り組みなどに挑戦する考えを示した。
◎新たなCRM構築 MR活動のトラッキングにも役立て
同社は、10月1日付でチーフデジタルオフィサー兼、コンシューマーエクスペリエンストランスフォーメーション本部長兼、エーザイ・ジャパンデピュティプレジデント(執行役)に内藤景介氏が就任した。デジタル化社会の実現を睨み、国内事業の構造改革に向けて一歩を踏み出したところだ。内藤CEOはこの日の会見で、この目的に触れた。
内藤景介氏がプレジデントを務める「HX本部」はデジタルを駆使しながら医療専門家への情報提供の質的向上を図ることを目的とする。内藤CEOはHX本部に設置した「デジタルソリューション部」について、「患者のデータから日常生活を改善できるモデルを構築する」と説明。同社の主要ブランド製品に関係するデジタルソリューションやP3(Participation, Prediction, Prevention)の実現に資する疾患領域アプリの導入、企画、推進などを行いたい」と意欲を示した。また、「フィールドフォースサポート部」について内藤CEOは、「CRM(カスタマーリレーションマネージメント)を実行・支援するツールやプログラムについて、その充実を図り、デジタルによる情報伝達力の充実を図りたい」と述べた。新型コロナで訪問制限を受けているMR活動のキー・パフォーマンス・インデックスのトラッキングにも役立てたい考えだ。
「デジタルマーケティング部」について内藤CEOは、「デジタルツールを使ってインパーソンでなく、デジタルで情報を一定の専門家(ポピュレーション)に伝達することを担当する」と強調した。このほか「RWDマーケティング部」については、「医療機関が持っているそれぞれのRWDを我々も一緒に入って解析し、利活用させて頂き、様々な新しい便益を見出していく試みだ」と強調。転倒防止システムなどがこれに含まれていると指摘した。
◎抗がん剤レンビマのグローバル売上が業績牽引
同社の20年度第2四半期決算は、売上収益は3170億円(前年同期比5.4%増)、営業利益は341億円(6.4%増)となった。抗がん剤レンビマのグローバル売上高が前同比36%増の685億円となり、業績を牽引した。地域別の売上は、米国が前同比48%増の419億円、中国が28%増の91億円、欧州が28%増の75億円、日本は1%増の70億円となった。通期予想について内藤CEOは、「子宮内膜がん適応の承認国拡大とBCLC-Bの肝細胞がん患者への貢献によって1580億円達成をめざす」と強調した。また、「レンビマ+キイトルーダ」による臨床第3相試験(LEAP Study:11本の承認申請用比較対照試験)が進行しており、その一部の試験成績がESMO2020で発表されるなど、2025年の売上目標5000億円に強い期待感を表明した。
◎アルツハイマー病治療薬アデュカヌマブ 11月6日開催のFDA諮問委員会で議論
会見で内藤CEOは、米バイオジェンとエーザイが共同開発したアルツハイマー病治療薬アデュカヌマブにも触れ、きょう11月6日に開催予定の米FDA諮問委員会で、同剤の有効性と安全性を示した申請データ(EMERGE、ENGAGE、PRIME)が議論されると説明した。また欧州(EMA)への申請も受理されたほか、PMDAとの申請前相談を実施するなど申請に向けた準備が進んでいることを報告。当局の議論に強い期待感を表明した。
【2021年3月期第2四半期(前年同期比) 21年3月期予想(前年同期比)】
売上高 3170億4400万円(5.9%増) 7190億円(3.4%増)
営業利益 340億7900万円(6.4%増) 880億円(29.9%減)
親会社帰属の純利益 257億9700万円(4.4%減) 670億円(45.0%減)
【21年3月期第2四半期グローバル製品全世界売上高 (前年同期実績) 21年3月期予想、億円】
レンビマ 685(505)1580
ハラヴェン 186(206)420
フィコンパ/Fycompa 131(118)340
アリセプト 141(192)350
パリエット/アシフェックス 113(135)240
【21年3月期第2四半期の国内主要製品売上高 (前年同期実績) 21年3月予想、億円】
ヒュミラ 256(253)520
レンビマ 70(69)150
ルネスタ 69(63)135
メチコバール 63(74)120
アリセプト 52(74)100
フィコンパ 26(19)100
ハラヴェン 43(50)95
ケアラム 38(32)85
パリエット 42(58)75
グーフィス 23(15)65