英ABPI 新型コロナウイルス以外の臨床試験の再開・開始に注力を
公開日時 2020/10/14 04:49
英国製薬工業協会(ABPI)は、英国が、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)に対するワクチンや治療薬における臨床試験では世界をリードしているが、今後は、COVID-19以外の医薬品における臨床試験の再開や開始に力点を置く戦略を立てるべきとの提言を含む第2次年次報告書をまとめた。ABPIが、10月7日、発表した。
報告書によると、臨床試験実施数では、英国は他の欧州各国をリードしており、特に抗がん剤分野では、2018年現在では226本実施され、次いで免疫疾患治療剤が94本だという。また、英国で開始された早期フェーズの試験数ならびにフェーズII試験数でも他の欧州各国をリードしている。フェーズIII試験では、多数の登録者が参加、ドイツ、スペインに次いで世界で3番目である。米国は、臨床試験全体では世界ナンバー1となっている。
また、同報告書は、ライフサイエンス企業による活発な臨床試験実施への投入資金がNHS(国民保健サービス)の財政を潤沢にさせると指摘している。2018年から2019年にかけてライフサイエンス産業が実施する臨床試験によりNHSの収入(患者登録経費や研究者・治験担当者の雇用経費など)は3億5500万ポンドに上ると推定された。また、既存の標準治療の代わりに治験薬が使用されることでNHSは2860万ポンドの節減が出来た。2018年にライフサイエンス産業は英国のR&D費として45億ポンドを投資した。ライフサイエンス産業は2018年に24万人を雇用、738億ポンドの売上げを生んだ。
英国ではコロナ禍により、多数の非コロナ関連医薬品の臨床試験が停滞を余儀なくされていたが、英国立衛生研究所(NIHR)臨床研究ネットワーク(CRN)によると、2020年9月9日現在で、非コロナ関連医薬品の臨床試験が再開され、試験の45%が試験登録者募集を開始、そのうち36%は6月1日に登録開始したという。しかし、同報告書は、医療関係者が、再開が進んでいるにも関わらず、COVID-19第2波による障害を懸念していると報告している。
このため、ABPIは、政府に対して、今冬の備えや第2波の可能性を考慮に入れながら、非コロナ関連医薬品の臨床試験が安全かつ持続的に開始できるように戦略を立てることを求めている。